2017年4月の有効求人倍率は1.48倍と、非常に高い数値となりました。「バブル期を超える高水準」と報道されるケースもあり、企業が人材を確保しにくい状況になっているようです。
企業としては、優秀な正社員を獲得したいところでしょうが、そう簡単に良い人材が自社に訪れるとは限りません。また、いくら忙しくても、現在の業務量が続く保証はありません。それを考えると、正社員を雇用するのをためらうケースもあるでしょう。
かといって、最近はアルバイトの時給も上昇し、採用も難しくなっています。そんなときに考えられる雇用形態として「契約社員」があります。優秀なアルバイトを契約社員にして、さらにその後、正社員として採用するというのも、企業の採用ではよくあるパターンです。
今回は、契約社員が正社員やアルバイトと何が違うのか、採用する際に気を付けておきたい点を紹介します。
契約社員と正社員は「雇用期間」と「職務内容の明確さ」が違う
契約社員とは、「企業に直接雇用され/期間の定めのある契約に基づき/フルタイムで働く人」のことをいいます。一方で正社員とは、「企業に直接雇用され/期間の定めのない契約に基づき/フルタイムで働く人」のことをいいます。
つまり、契約社員と正社員の違いは、簡単にいえば「期間の定めの有無」ということができます。「期間の定め」の違いは待遇の違いに結びついています。正社員の場合、長期的に勤務することを前提としているため、人事異動、配置転換、昇進などによって、職務内容や勤務場所の変更の可能性があります。そのため、職務内容は明確に設定されていません。
加えて、長期間の雇用が前提となっていることから、解雇をする際には、「客観的な合理性」、つまり解雇するだけの相応の理由が必要となります。待遇としては、勤続年数によって賃金が上昇する傾向がある点、賞与や退職金、福利厚生などの制度があるといった特徴があります。
契約社員は、これらの条件が正社員とは異なります。まず、勤務場所や業務の内容は、期間を限定して企業に雇用される性質上、基本的には明確に決められています。期間満了後の雇用関係は、自動的に終了します。企業側が続けて採用したい場合には、その契約社員に改めて条件を提示し、新しい契約を結ぶ必要があります。
契約社員に正社員と同じ仕事を任せることはNG?…
こうした条件の違いを理解していないと、トラブルにつながりがちです。
例えば、トラブルの原因になりがちなのが、契約社員なのに、正社員のように職務内容を明確にしないまま業務を行わせているケースです。前述の通り、契約社員は「雇用期間に定めがある」ほかに、「職務内容が明確である」という点において、正社員と異なります。しかし実際には職務内容を明確にしないまま仕事を任せているケースも見られます。それでありながら、契約期間が正社員と違い有限というのは、契約社員側には納得のいかない話です。
また、契約期間満了後に、新しい契約条件を提示しないまま、“なぁなぁ”で契約更新を繰り返しているケースも、トラブルの火種となりがちです。
こうしたトラブルを防ぐために、会社としては契約社員に対し、正社員とは異なる対応をする必要があります。具体的にいえば、契約社員に基幹的・恒常的な業務をさせないこと、契約更新ごとに契約書を作成し、その内容を審査すること、契約更新の条件、判断基準などを明示し、その基準に従った判断をしているか審査すること、契約更新を不用意に繰り返していないか確認することなどが重要です。
正社員を募集する際、アルバイト、契約社員に周知する必要がある?
正社員と契約社員は、正規雇用/非正規雇用という点で異なりますが、それでは契約社員とパートタイム労働者(いわゆるアルバイト)とは何が違うのでしょうか。
パートタイム労働者の場合は、雇用期間を定めても、定めなくても、雇い入れることができます。基本的にフルタイム勤務ではありません。つまり、パートタイム労働者と契約社員との違いは、「期間の定めをしなくても雇用できること」と「働く時間の長短」にあるといえます。
パートタイム労働者には、「パートタイム労働法」(正式名称は「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」)が適用されます。同法によれば、労働基準法で求められる労働契約期間や就業場所、従事すべき業務、就業時間、賃金、解雇などに関する労働条件の明示以外にも、昇給、退職手当、賞与の有無も書面で明示することが義務化されています。
さらに同法では、パートタイム労働者が正社員となれるように、企業が正社員を募集する際に、その募集内容をパートタイム労働者へ周知するなどの措置を取ることが求められています。契約社員については、このような定めはありません。
契約社員は5年たつと正社員にしなければならない?
勘違いされがちですが、契約社員もパートタイム労働者も、雇用保険、健康保険、厚生年金保険、労災の適用については、正社員と変わるところはありません。有給休暇についても同様です。正社員との理由なき差別は、労働法にて禁止されています。
期間の定めのあるパートタイム労働者にもいえることですが、2013(平成25)年4月1日以後に開始した有期労働契約においては、同じ使用者との間で通算5年を超えて契約が更新されると、労働者の申し込みにより、正社員と同様に、期間の定めのない労働契約に移行されることになります。つまり、契約社員もパートタイム労働者でも、有期契約のままで雇用し続けることは、基本的にはできなくなりました。
このように、契約社員には、正社員と同じ部分と違う部分があります。「期間限定だから正社員よりも気軽に採用できる」と考えている企業も多いかもしれませんが、契約社員を募集する際には、担当させたい業務内容を念頭に置き、正社員、アルバイトの雇用とよく比較した上で、判断することをお勧めします。