ビジネスシーンでモノを売る場合には、契約書を作成し、双方が署名押印することで、不測の事態が生じたときに備えることができます。しかし、インターネット通販では買い手と直接顔を合わせるわけではありませんし、多くの買い手を相手に逐一契約書を交わすことも現実的ではありません。そこで、インターネット通販において契約書の代わりになるのが利用規約です。
インターネット通販では、多くの顔の見えない買い手に商品を販売します。中にはきちんと代金を支払ってくれない人がいるかもしれません。あるいは、商品に何らかの問題があって、返品や返金を求められることもあるかもしれません。時には、発送した商品が受領されずに戻ってくることも考えられます。
特定商取引に関する法律(以下、特定商取引法)では、ECサイトには、会社名やその所在地など、一定の事項を表示しておかなければならないとされています。特に、返品特約と呼ばれる事項(商品を購入した人からの返品を認めるかどうか)の表示は重要です。これを定めておかないと、返品を認めるつもりがなくても返品が可能になってしまいます。
ECサイトにおいて食品や化粧品といった商材を販売する場合、定期的に継続購入してもらった方が売り上げは安定します。そのため、そうした商材を扱うECサイトにおいては、定期的に商品を発送する定期購入の仕組みを導入するケースがあります。しかし、定期購入であることを分かりにくく表示する
こういったトラブルを背景に、特定商取引法においては、定期購入の場合、申し込み画面において、商品を購入する期間、最終的な支払総額といった契約の主な内容をすべて表示しておくなど、購入者に対し誤解が生じないようにしなければならないとされています。
事業をスタートする前に個人情報の利用目的は決めておく
特定商取法以外にも個人情報保護法により、ECサイトを立ち上げる場合には、消費者から取得する個人情報について、利用目的などを公表しなければならないことになっています。多くのECサイトでは、プライバシーポリシーという、個人情報の保護に関する事業者の方針などを記載したページを設けることによって、法律上の義務を果たしています。
例えば、消費者から取得した個人情報は、事前に同意を得た目的の範囲内でしか利用することができません。事業を行っていく中で個人情報をどのように用いるかを事前に想定し、個人情報の利用目的を特定して同意を取得しておかなければ、いざ必要になった場合に個人情報の利用ができないことになってしまいます。そのような場合に、後から個別に同意を取得することは非常に煩雑です。
誇大広告などにより課徴金を徴収されるケースも
インターネット通販は、参入障壁が低いため、それだけライバルの数も多くなります。その中で消費者の心をつかむため、ECサイト上の広告表現は過激なものになりがちです。
しかし、消費者を誤解させるような広告表現は、トラブルの元にもなりますし、法律でも規制されています。例えば、不当景品類及び不当表示防止法(以下、景品表示法)では、商品の品質・性能について実際よりも著しく優良であると誤解させる表示(優良誤認表示)や、取引条件について実際よりも著しく有利であると誤解させる表示(有利誤認表示)などを禁止しています。
もし、ユーザーが誤認するような表示をしてしまった場合、措置命令という行政処分を受け、法律に違反したことが一般に公表されてしまいます。それだけでも大きなレピュテーション(評判、風評)リスクです。つまり行政処分を受けたと公表されることで、企業の信用が低下し損失を被る可能性が高まるわけです。
さらに、近年の法改正により、措置命令を受けた場合には、優良誤認表示や有利誤認表示をしたことで得られた売り上げの3%相当額を課徴金として納付しなければならなくなり、金銭的なリスクも非常に大きくなっています。
以上のように、ECサイトを立ち上げる際には、注意しておかなければならない法律の規制がいくつもあり、違反内容によっては事業の継続自体が困難になる場合もあり得ます。これらに配慮したECサイトを作り、安定した事業を行えるようにしましょう。
※掲載している情報は、記事執筆時点(2018年1月22日)のものです