ビジネスを加速させるワークスタイル(第15回)
似ているようで違う、法人向け光回線の選び方
公開日:2019.11.18
近年、台風や大雨といった自然災害による被災が相次いでいます。先日は東京の人気住宅地である二子玉川や、高層マンション群で知られる神奈川県の武蔵小杉でも、住宅に浸水被害が発生し、大きな話題になりました。
台風や地震などの自然災害に被災してしまい、賃借している店舗やオフィスが浸水・倒壊して使用できなくなり事業活動に支障が生じてしまった場合、建物の修繕義務、賃料の支払い、営業補償はどうなるのでしょうか。
まず、自然災害によって、借りていた店舗やオフィスの建物自体が滅失してしまった場合には、もはや建物を貸すことは不可能ですから賃貸借契約は当然に終了します。もちろん賃料を支払う必要はありません。
ただし、こうした場合、「大規模な災害の被災地における借地借家に関する特別措置法」により、従前の賃貸人が、建物を再築し賃貸しようとするときは、その旨を従前の借家人に通知することにより、従前の借家人に元の居住していた場所に戻る機会が付与されることになります。従来と同じ場所でビジネスを再開できるチャンスが与えられるということです。
他方で、建物を修繕することが可能である場合、賃貸借契約は存続します。この「建物を修繕することが可能」というのは、物理的に修繕不可能な場合のほか、修繕に莫大な費用がかかり経済的にみて修繕が不合理な場合も除外されます。
賃貸人は、建物を使用収益させるのに必要な修繕を行う義務がありますので(民法606条1項。以下、断りのない限り現行の民法)、賃借人としては賃貸人に対して、被災した建物に関して、賃貸人の費用負担で必要な修繕を行うよう求めることができます。修繕をしている期間中、建物を使用できない場合は、その分の賃料は支払う必要はありません。また、建物の一部が使用できない場合も、その分の賃料の減額を請求することができます。
この修繕義務はいかなる場合でも生じるわけではありません。修繕することが可能であって、修繕しなければ使用収益できない場合に生じます。従って、そもそも修繕が不可能な場合や修繕をしなくても使用できる場合には賃貸人に修繕義務はありません。
賃借人が賃貸人に対して修繕を求めたにもかかわらず、賃貸人が修繕義務を果たさない場合は、賃貸人に対して損害賠償請求をすることに加えて、賃借人が賃貸人に代わって必要な修繕を行った上で、賃貸人に対しその費用を必要費として請求することが可能です(民法608条1項)。賃借人は、この必要費と毎月の賃料とを相殺することもできます。
来年の4月から施行になる改正後の民法では、賃貸人が修繕する必要があることを知ったにもかかわらず相当な期間内に必要な修繕を行わない場合や、急迫の事情がある場合には賃借人自身が修繕を行うことができるようになります(新法607条の2)。この場合、賃貸人が負担すべき費用を支出した場合は、賃貸人に必要費として償還請求できるのは上記と同様です。
店舗やオフィスといった事業用の建物の賃貸借契約においては、修繕費用を賃借人が負担するという特約が盛り込まれていることがあります。このような特約があれば、契約の解釈にもよりますが、原則として賃貸人は修繕をしなくてよいことになります。しかし、こうしたケースでも、契約時に予想していなかった大規模な修繕が必要になる場合は、賃貸人負担で修繕をする義務が生じる可能性があるため、契約書で賃借人が負担するとなっていても、弁護士などの専門家に相談してみましょう。
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執筆=近藤 亮
近藤綜合法律事務所 弁護士(東京弁護士会所属)
平成27年弁護士登録。主な著作として、『会社法実務Q&A』(ぎょうせい、共著)、『少数株主権等の理論と実務』(勁草書房:2019、共著)、『民事執行法及びハーグ条約実施法等改正のポイントと実務への影響』(日本加除出版:2020、共著)などがある。
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