ビジネスを加速させるワークスタイル(第15回)
似ているようで違う、法人向け光回線の選び方
公開日:2020.02.10
2020年4月1日から改正された民法(以下:「新法」)が施行されます(一部規定は除く)。契約のルールは民法により定められているので、改正の影響で契約書の条項を見直しする必要が出てきます。前編では、見直すべき契約書のポイントの中で、金銭消費貸借契約やそれに付随する保証契約について解説しました。後編では、請負契約に関して、発注者や受注者の立場として、どのような点を見直すべきなのかを解説します。
請負契約は、建物の建設、内装、リフォームなどの建築関係やソフトウエア開発などのさまざまな契約で用いられています(ソフトウエア開発契約は一部準委任契約の要素もあります)。日常の企業活動においてよく使われる契約です。
請負契約においては、発注者を「注文者」、受注者を「請負人」といいます。請負契約では、発注者は請負人の仕事の結果に対して報酬を支払う義務を、請負人は仕事を完成させる義務を負います。請負人が報酬を請求するためには仕事を完成させなければならず、たとえ仕事を途中まで行ったとしても、仕事の完成までは報酬を請求できないのが原則です。
この点について、新法では、請負契約が、(1)注文者の責めに帰すことができない事由によって仕事を完成することができなくなった場合や、(2)仕事の完成前に解除された場合において、請負人の仕事内容が可分であり、それにより注文者が利益を受けているのであれば、仕事の完成前であっても利益部分に応じた報酬を請求できることが明文化されました(新法634条)。これは従来の判例を明文化したものであり、実務もこれに従って動いていたため、実務上の運用に大きな変化はありません。
ただ、新法で仕事の完成前の報酬支払請求権が明文化されたことで、請負人としては円滑に報酬請求権を行使するために、請負契約書にも完成前の報酬請求権を明文化することが考えられます。従来、建設関連の請負契約では、手付金や工事途中での一部報酬の支払いの項目を入れるケースがありましたが、それが標準になることが考えられます。
ここで注意をしなければならないのがソフトウエア開発です。ソフトウエア開発の業務は、仕事が途中まで終わっていても、それはあくまで開発途中のソフトウエアであり、最終的なソフトウエアは完成しておらず、業務上ではまったく使えないケースも少なくありません。従って、注文者であるユーザーの利益を金銭的に評価することは困難を伴います。こうなると新法の規定に従って、注文者が利益を受けていることを報酬請求の要件とすると、請負人であるベンダーとしては途中までの報酬を一切請求できない可能性があります。
そこで、このような場合、請負人としてはあえて新法に従った完成前の報酬支払請求権を契約書に盛り込まずに、請負契約が途中で終了した場合の費用精算の中で、既に完成した部分に応じた報酬を支払う旨を定めておくことが考えられます。なお、一般社団法人電子情報技術産業協会のモデル契約をひな形にソフトウエア開発の契約を結ぶケースが少なくないと思われますが、既に公表されている新法施行後のモデル契約の規定でも、上記の考え方になっています。
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執筆=近藤 亮
近藤綜合法律事務所 弁護士(東京弁護士会所属)
平成27年弁護士登録。主な著作として、『会社法実務Q&A』(ぎょうせい、共著)、『少数株主権等の理論と実務』(勁草書房:2019、共著)、『民事執行法及びハーグ条約実施法等改正のポイントと実務への影響』(日本加除出版:2020、共著)などがある。
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