ビジネスを加速させるワークスタイル(第15回)
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公開日:2020.06.08
2019年12月に事業承継時に焦点を当てた「経営者保証に関するガイドライン(以下「経営者保証ガイドライン」)の特則」が公表され、2020年4月から運用が開始されています。この特則は、事業者が融資を受ける際に経営者が保証人となるいわゆる「経営者保証」について、事業承継の際に金融機関と事業者の双方に求められる取り組みについて定めたガイドラインです。
近年、中小企業経営者の高齢化が進み、その事業承継が日本経済の大きな課題となっています。円滑な事業承継を阻む問題の1つとして、経営者保証が挙げられます。これまで事業承継の際には、金融機関から旧経営者の経営者保証の維持と新経営者(後継者)の経営者保証の提供のいずれか、または双方が要求されるケースが珍しくありませんでした。
これでは、旧経営者は経営を退いた後も経営者保証を解除してもらえず、債務を保証し続けなければならないことになります。また、新経営者は保証人になることをちゅうちょし、後継者が見つかりにくいという事態も生じていたのです。
このような事態を受けて中小企業庁が事業承継時の経営者保証解除に向けた総合的な対策を打ち出し、経営者保証を不要とする信用保証制度の創設や上記の「経営者保証ガイドライン」の特則の策定など、さまざまな取り組みが開始されています。今回は、これら経営者保証の解除に向けた対策について見ていきたいと思います。
従来の経営者保証ガイドラインでは、事業承継に関する規定が不十分であったため、今回の取り組みでは事業承継に関する規定が整備され、新たに特則が制定されました。この特則は2020年4月1日に運用が開始されています。
特則では、旧経営者と新経営者の双方から二重に保証を要求する二重徴求が原則として禁止されました。例外として認められる場合は、前経営者の死亡による相続の発生時に一時的に二重徴求になる場合などの4類型に限定されています。
新経営者に対して経営者保証を求めることは、上記の通り事業承継の阻害要因になり得ます。そこで、上記の特則では、金融機関が新経営者に対して経営者保証を求めるかについては、事業承継が頓挫する可能性など事業承継に与える影響も十分に考慮の上で慎重に判断されることとなりました。
2020年4月に施行された改正民法において、取締役等以外の第三者が、事業のために負担した貸金等債務を主債務として保証契約を締結する場合、保証意思を宣明する公正証書が要求されるようになりました(民法465条の6)。この改正などを受けて、金融機関が、事業承継の際に旧経営者の経営者保証を維持するか見直しを検討することが要求され、特に経営権・支配権を失うことになった旧経営者に対して経営者保証を要求する場合については慎重な判断が求められることになりました。
次にこうしたガイドラインの見直しのほかに、金融機関の姿勢の変化や新たに設けられた制度を解説しましょう。
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執筆=近藤 亮
近藤綜合法律事務所 弁護士(東京弁護士会所属)
平成27年弁護士登録。主な著作として、『会社法実務Q&A』(ぎょうせい、共著)、『少数株主権等の理論と実務』(勁草書房:2019、共著)、『民事執行法及びハーグ条約実施法等改正のポイントと実務への影響』(日本加除出版:2020、共著)などがある。
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