強い会社の着眼点(第19回)
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公開日:2022.04.25
2021年4月1日より、定年を65歳以上70歳未満に定めている事業主や、65歳までの継続雇用制度を導入している事業主に対し、定年を70歳まで引き上げるなどの措置(高年齢者就業確保措置。以下、就業確保措置といいます)を講じることを努力義務とする改正高年齢者雇用安定法(以下、高年法といいます)が施行されています。
同改正は、少子高齢化が急速に進展し人口が減少する中で、経済社会の活力を維持するため、労働者の70歳までの就業機会を確保しようとするものです。
同改正の下、今後、企業による高年齢者の雇用が進むと想定されますが、就業確保措置の実施に当たっては、事業主と労働者(高年齢者)との間で、無用なトラブルが生じないよう留意する必要があります。
そこで、本稿では、高年法改正の流れについて概観した上で、就業確保措置を講じるに当たって、事業主が留意すべき事項について見ていきます。
高年法は、2004年の改正により、事業主が雇用する労働者の定年を定める場合には、60歳を下回ることはできないとされました(8条)。また、労働者の65歳までの安定した雇用を確保するために、65歳未満の定年の定めをしている事業主は、①定年の引き上げ、②継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入、③定年制の廃止のいずれかの措置を講じなければならないとされました(9条)。
ただし、このときの改正では、②の継続雇用制度については、定年後の継続雇用者を事業場の労使協定の定める基準によって選別できるものとされました(旧9条2項)。つまり、事業者は必ずしも希望者全員について継続雇用を義務付けられているわけではありませんでした。
ところが、その後、老齢厚生年金の支給開始年齢が60歳から65歳へ段階的に引き上げられることに伴い、高年齢労働者の生計維持のため、②の継続雇用制度について、事業主に希望者全員を継続雇用することを義務付ける必要性が生じました。
そのため、2012年の改正により旧9条2項は削除され、事業主は60歳未満の定年制を設けることはできなくなりました(8条)。また、労働者の65歳までの雇用を確保するために、①定年の引き上げ、②希望者全員に対する継続雇用制度の導入、③定年制の廃止のいずれかの措置を講じなければならない(9条)とされました。
このようにして2012年改正以降、事業主は希望する労働者全員に対して、65歳までの雇用を確保する法的義務を負うことになりました。
そして、2021年の改正では、従来の労働者に対する65歳までの雇用確保義務を前提として、さらに、雇用する労働者に70歳までの就業確保措置を講じることが事業主の努力義務として定められました(努力義務とは、法的拘束力のない努力目標という意味です)。
改正法の定める就業確保措置は、次の5つです(10条の2)。
① 70歳までの定年引き上げ
② 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
③ 定年制の廃止
④ 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
⑤ 70歳まで継続的に以下a又はbの事業に従事できる制度の導入
a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業
これらは、1つだけではなく、複数の措置の組み合わせも可能です。その場合、対象者にいずれの措置を適用するかは、本人の希望を聴取し、これを十分に尊重して決定することが望ましいとされます。
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執筆=上野 真裕
中野通り法律事務所 弁護士(東京弁護士会所属)・中小企業診断士。平成15年弁護士登録。小宮法律事務所(平成15年~平成19年)を経て、現在に至る。令和2年中小企業診断士登録。主な著作として、「退職金の減額・廃止をめぐって」「年金の減額・廃止をめぐって」(「判例にみる労務トラブル解決の方法と文例(第2版)」)(中央経済社)などがある。
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