強い会社の着眼点(第19回)
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公開日:2022.12.19
事業承継時に焦点を当てた「経営者保証に関するガイドライン」の特則(以下:経営者保証ガイドラインの特則)が2020年4月に適用開始になり、早くも2年以上が経過しました。その間の経営者保証ガイドラインの特則が活用された事例についても、中小企業庁のホームページなどで公開されています。
また、新たに「廃業時における『経営者保証に関するガイドライン』の基本的考え方(以下:「廃業時ガイドライン」)」が、2022年3月4日に公表されました。今回は、これらについて紹介していきます。
まず、経営者保証ガイドラインの特則について簡単におさらいします。従来、円滑な事業承継を阻む問題の1つとして、経営者保証の問題が指摘されており、事業承継の際に、金融機関が旧経営者と新経営者の双方から二重に保証を要求することが、円滑な事業承継の妨げとなっている実情がありました。
これに対応する形で、中小企業庁は事業承継時の経営者保証の解除に関して、2019年12月に経営者保証ガイドラインの特則を公表し、2020年4月に適用が開始されました。経営者保証ガイドラインの特則の内容については本連載の第69回で解説していますので、参考にしてください。
今回は中小企業庁が公表している経営者保証ガイドラインの特則を利用して、円滑な事業承継ができた事例をいくつか紹介しましょう。
●事例①
引退を機に事業承継を考えていた経営者が、信頼の厚い従業員に事業承継をしてもらおうと考えていましたが、打診にあたり経営者保証を解除してもらいたいという意向を持っていました。そこで、この経営者が、事業承継・引継ぎ支援センターの経営者保証コーディネーターに相談し、決算書などを確認してもらったところ、「経営者保証に関するガイドライン」に定める要件を充足していると確認できたため、最終的に金融機関から長期貸付すべての経営者保証を解除してもらえました(事業承継ガイドライン(第3版)、97ページ参照)。
これは経営者保証ガイドラインの特則制定時に創設された「経営者保証コーディネーター」を活用して経営者保証を解除することができた事例といえます。
●事例②
ある経営者が事業承継を考えていたのですが、会社の金融機関からの借入金の連帯保証をしていたため、保証債務の履行を求められた場合、自宅不動産を手放さざるを得ないおそれがあり、それが事業承継のネックとなっていました。事業承継を進めるにあたり、従業員の設立した新会社に対する承継というスキームで進め、弁護士があらかじめ全金融機関と協議を重ねて、新会社による借入債務の一部承継や経営者による旧会社の資産の換価を条件に、金融機関に対する旧会社の借入債務とオーナー社長の連帯保証債務の免除を受けることができました(事業承継ガイドライン(第3版)97ページ参照)。
こちらは、弁護士などの専門家を積極的に活用し、特定調停という債務整理手続きを利用して経営者保証ガイドラインの適用を受けた事例です。
特則の適用後、このように経営者保証を外した事例がかなり出てきています。中小企業庁が2022年9月に公表した「あなたも経営者保証を外すことができるかもしれない 事例でみる経営者保証の解除~課題解決のポイントとその効果」にも多数、紹介されています。その中には、自社の事業承継と似たケースが見つかるかもしれません。事業承継を考えている経営者はぜひ参考にして、専門家を交えて経営者保証の解除を考えてみてはいかがでしょうか。
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執筆=近藤 亮
近藤綜合法律事務所 弁護士(東京弁護士会所属)
平成27年弁護士登録。主な著作として、『会社法実務Q&A』(ぎょうせい、共著)、『少数株主権等の理論と実務』(勁草書房:2019、共著)、『民事執行法及びハーグ条約実施法等改正のポイントと実務への影響』(日本加除出版:2020、共著)などがある。
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