ビジネスを加速させるワークスタイル(第15回)
似ているようで違う、法人向け光回線の選び方
公開日:2024.01.30
商標とは、企業が、自社の取り扱う商品・サービスを他社のものと区別するために使用するマークです。企業のブランド力・競争力とも直結するため、多くの企業は自社の商品・サービスについて商標登録をしているのではないかと思います。
この商標について定めている「商標法」も、前回解説した不正競争防止法と同じく、2023年6月7日に改正がなされ、2024年4月1日から施行される予定です(一部は2024年1月1日施行)。今回はこの商標法と、同じく改正された意匠法の中から、事業者への影響があるものについて解説します。
現行の商標法では、他人の登録商標と同一または類似する商標であって、その商標登録にかかる指定商品もしくは指定役務、または類似する商品もしくは役務についての使用は商標登録を受けることができません(商標法4条1項11号)。
これは、先に商標登録を済ませている他人の商標と混同されるような商標の登録を認めないというものであり、商標制度が設けられている趣旨からして当然のことです。ただ、海外の商標制度を見てみますと、先に商標登録をしている他人の同意(コンセント)があれば、類似する商標登録を認めるという「コンセント制度」が設けられている国もあります。
コンセント制度は一定のニーズがあり、日本に制度がないことは国際取引の妨げになります。そのため、日本でもコンセント制度が導入されることになりました。今回の商標制度で導入されたコンセント制度を利用するためは、商標登録を受けることについて他人(先に商標登録をしている人)の承諾を得た上で、他人の登録商標と出所混同が生じる恐れがないようにしなくてはなりません。
「他人の登録商標と出所混同が生じる恐れがない」については、抽象的な要件ですので、具体的にどのような場合がこれに当たるのか判然としませんが、今後特許庁から審査基準が公表されるでしょう。なお、コンセント制度に基づき商標登録をされたことにより業務上の利益が害される恐れがある場合、一方の商標権者は、他の商標権者に混同防止表示を付すよう請求できるとされています。
現行の商標法では、他人の氏名を含む商標については、その他人の承諾がなければ一律に商標登録をすることができません(商標法4条1項8号)。「他人」とは、同姓同名の人をさすと考えられていますので(審決昭和27年10月31日・昭和26年審判229号)、同姓同名全員から商標登録について承諾を得る必要があります。しかし、ありふれた氏名であれば、同姓同名全員から承諾を得ることは現実的に無理ですから、事実上商標登録をすることは不可能でした。
氏名を含む商標については、ファッション業界などを中心に、創業者やデザイナーの氏名をブランド名として採用する傾向があるところ、規定の厳格な解釈により、新興のブランドのみならず広く一般に知られたブランドまで、同名の他人が存在すれば一律に出願を拒絶せざるを得ず、氏名からなるブランドの商標としての保護に欠けるとの指摘がなされていました(産業構造審議会知的財産分科会第9回商標制度小委員会参照)。
そこで、今回の商標法の改正では、「他人の氏名」について、「商標の使用をする商品又は役務の分野において需要者の間に広く認識されている氏名に限る」との限定が付されました。
その結果、①商標の使用をする商品または役務の分野において、知名度のない他人の氏名を商標登録する場合、②商標に知名度のある他人の氏名が含まれていても、それが商標の使用をする商品または役務以外の分野である場合は、他人の承諾を得なくとも商標登録することが可能になりました。
また、③商標の使用をする商品または役務の分野において知名度のある氏名を商標登録する場合であっても、その知名度のある他人から承諾を得れば足りることになり、同姓同名の全員から承諾を得る必要はなくなりました。
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執筆=近藤 亮
近藤綜合法律事務所 弁護士(東京弁護士会所属)
平成27年弁護士登録。主な著作として、『会社法実務Q&A』(ぎょうせい、共著)、『少数株主権等の理論と実務』(勁草書房:2019、共著)、『民事執行法及びハーグ条約実施法等改正のポイントと実務への影響』(日本加除出版:2020、共著)などがある。
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