弁護士が語る!経営者が知っておきたい法律の話(第118回)改正障害者差別解消法の注意点

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公開日:2024.07.25

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 2024年4月1日、改正障害者差別解消法が施行され、事業主の努力義務にすぎなかった障害のある人への「合理的配慮の提供」が義務化されました。今回は、障害者差別解消法について概説した上で、改正された障害のある人への「合理的配慮の提供」の義務化について解説します。

障害者差別解消法とは

 障害者差別解消法は、障害のある人の自立および社会参加の支援などのための施策を推進するという障害者基本法の理念にのっとり、障害を理由とする差別の解消を推進することを目的として2013年6月に制定されました。

 この法律は、障害の「社会モデル」(障害のある人が日常生活などで受けるさまざまな「制限」は、社会の側にあるさまざまな障壁(バリアー)によって生じるものという考え方)を前提に、わが国おいて、障害のある人もない人も互いにその人らしさを認め合い、共に生きる社会(共生社会)の実現をめざしています。

 本法の柱は2つです。行政機関や事業者に対して、①障害のある人への障害を理由とする「不当な差別的取扱い」を禁止する(7条1項、8条1項)と、②障害のある人から申し出(意思の表明)があった場合に、負担が重すぎない範囲で障害のある人の求めに応じて必要かつ合理的な配慮をしなければならない(「合理的配慮の提供」、7条2項、8条2項)、とするものです。

 ①の「不当な差別的取扱い」の禁止とは、障害を理由として、財・サービス、各種機会の提供を拒否したり、それらを提供するに当たって場所・時間帯を制限したりするなど、正当な理由なく障害のない人と異なる取扱いをして障害のある人を不利に扱うことを禁止するものです。

 その際、車いす、補助犬その他の支援機器などの利用や介助者の付き添いといった社会的障壁を解消するための手段の利用を理由として行われる不当な差別的取扱いも、障害を理由とする不当な差別的取扱いに該当しますので注意が必要です。

 ②の「合理的配慮の提供」は、改正前は行政機関のみ義務として課されており、事業者は、“~配慮をするように努めなければならない”と努力義務とされていました。しかし、共生社会の実現に向けた改正により、2024年4月1日からは、事業者も障害のある人への「合理的配慮の提供」が義務となりました。簡単にまとめると下表のようになります。

表 事業者も合理的配慮の提供が義務に 

※内閣府のリーフレットを基に作成

 

 本法は、教育、医療、福祉、公共交通など、日常生活および社会生活に係る分野が広く対象となります。ただし雇用分野については、障害者の雇用の促進などに関する法律の定めるところによるので、本法の対象外です。

 また、本法の「障害者」とは、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害がある者であり、障害および社会的障壁により継続的に日常生活または社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいい(2条1号)、障害者手帳を持っている人に限られません。

建設的対話を通じて合理的配慮を提供する…

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執筆=上野 真裕

中野通り法律事務所 弁護士(東京弁護士会所属)・中小企業診断士。平成15年弁護士登録。小宮法律事務所(平成15年~平成19年)を経て、現在に至る。令和2年中小企業診断士登録。主な著作として、「退職金の減額・廃止をめぐって」「年金の減額・廃止をめぐって」(「判例にみる労務トラブル解決の方法と文例(第2版)」)(中央経済社)などがある。

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