ビジネスを加速させるワークスタイル(第15回)
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公開日:2024.11.21
会社と契約書を交わす際、記名欄に「株式会社〇〇代表取締役△△」などと、会社名に続けて代表取締役名を記載するのが一般です。これは、代表取締役が承認した契約であると示すものです。
この代表取締役名ですが、上記のように「代表取締役△△」と記載する場合がある他、会社によっては「代表取締役社長△△」と記載したり、「代表取締役CEO△△」と記載したりするところがあります。会社によっては、契約書に代表取締役名を記載せず、「株式会社〇〇常務取締役□□」「株式会社〇〇営業部長××」などと記載するケースもあると思います。
単なる「代表取締役」と「代表取締役社長」などの立場にある者とでは、権限に違いがあるのでしょうか。また、「常務取締役」「営業部長」などの立場にある者は、どのような権限を有しているのでしょうか。今回は、こうした疑問について、取締役会を置いている会社を念頭に整理し解説します(指名委員会等設置会社を除きます)。
まず、会社の役職員に対するさまざまな呼称、すなわち「代表取締役」「取締役」「使用人」「会長」「社長」「副社長」「専務」「常務」「部長」「課長」「CEO」などについて整理してみましょう。
これらのうち、株式会社の運営・管理のルールなどを定めている会社法は、「代表取締役」「取締役」「使用人」についてのみ、その有する権限などを規定しています。残りはすべて、慣習などに基づき会社内部で定める「肩書」に過ぎません。そして、会社法の規定する「代表取締役」などと会社内部の肩書は、必ずしもすべての会社で相関関係が認められるものではありません。
例えば社長という肩書は、通常は代表取締役に付与するでしょうが、代表取締役が必ず社長であるかというと、そうとは限りません。複数の代表取締役がいる会社では、会社内部で序列をつけるために、それぞれに社長、副社長、専務、常務などの肩書を付与する場合があります。つまり、代表取締役であっても社長ではない者、例えば代表取締役副社長や代表取締役専務なども存在するわけです。
従って、契約書などに記載される一定の立場にある者の法律上の権限を確認するためには、「肩書」にとらわれることなく、会社法の規定する「代表取締役」「取締役」「使用人」のいずれの立場にある者かの見極めが重要です。「代表取締役」と「取締役」は就任すると登記されますから、登記によってその地位を確認できます。
代表取締役とはどういう権限を有しているでしょうか。代表取締役は、取締役の中から、取締役会によって選定されます。代表取締役の権限は、会社法の規定によれば、株式会社の業務を執行し、対外的には会社を代表するとされています。代表するとは、会社のためにした行為の効果が会社に及ぶということです。
こうした権限は、「株式会社の業務に関する一切の裁判上または裁判外の行為」に及びます。この「一切の権限」、すなわち包括的な権限を有する点が代表取締役の大きな特徴です。代表取締役が2人以上いるときは、各自が会社を代表します。
代表取締役の包括的な権限は、会社の定款や取締役会規則により制限できます。例えば、代表取締役社長と代表取締役専務とで決裁権限に差異を設けられます。しかし、このような内部の制限を知らない取引相手などの第三者に対して、会社は権限の制限を理由に、当該代表取締役の行為による効果を否定して責任を免れることはできません。
株式会社と契約締結などの取引を行う際には、まず、肩書ではなく代表取締役名で行われる取引、すなわち代表取締役が認めた取引であると確認することがポイントです。もちろん、代表取締役名ではなく取締役や使用人の名を連ねて契約を結ぶことも可能です。この場合に注意すべきは取締役や使用人の権限です。それについて以下に解説します。
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執筆=植松 勉
日比谷T&Y法律事務所 弁護士(東京弁護士会所属)、平成8年弁護士登録。東京弁護士会法制委員会商事法制部会部会長、東京弁護士会会社法部副部長、平成28~30年司法試験・司法試験予備試験考査委員(商法)、令和2年司法試験予備試験考査委員(商法)。主な著書は、『会社役員 法務・税務の原則と例外-令和3年3月施行 改正会社法対応-』(編著、新日本法規出版、令和3年)、『最新 事業承継対策の法務と税務』(共著、日本法令、令和2年)など多数。
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