ビジネスを加速させるワークスタイル(第15回)
似ているようで違う、法人向け光回線の選び方
公開日:2019.10.29
9月上旬、友人と共にスイスへ行ってきました。主な目的はアルプス中腹のハイキングでしたが、その中の1日は現地ガイドに案内してもらい、氷河トレッキングを楽しみました。メイン写真は、氷河トレッキングを楽しんだスイスのシュタイン氷河とシュタイン湖です。今回は、めったに体験できない氷河トレッキングと、そこで感じた環境変化の話をします。
私たちが訪れたのは、スイス中央部に位置するインターラーケンという山岳都市。すぐ近くにはアイガー(3970m)、メンヒ(4107m)、ユングフラウ(4158m)などアルプスの名峰がそびえています。現地に到着後2日目までは、それらの山を眺めるハイキングで体慣らしをし、3日目に氷河へ向かいました。
同行してくれるのは、インターラーケンに住むベテラン山岳ガイドのハノさん。この日はハノさんが若い時から通っているシュタイン氷河を案内してくれることになりました。街から車で東へ約1時間、目的の氷河が見渡せる場所に到着しました。
目の前には真夏でも真っ白な雪をまとった、3000mを優に超える山々が連なっています。岩と氷の山の手前には、牛や羊の放牧地ともなっているのどかな草原が広がっています。この対照的な風景がいかにもスイスらしく、しばらく目を奪われました。
ハノさんは「湖(シュタイン湖)の奥に見えるのが、これから歩くシュタイン氷河だよ」と指さします。人の感覚では動きが感じられないほどゆっくりと流れている氷河ですが、離れた場所から見ると、山の稜線(りょうせん)からこぼれ落ちるようにして、青白い氷が流出していることが分かります。
私たちはさらに氷河のすぐ近くまで移動し、身支度を整えました。クランポン(鉄の爪が付いた滑り止めの道具。ブーツの底に付けることで氷の上も滑らずに歩ける)とアックス(ピックが付いたつえのような金属製の道具。氷雪を砕いたり、バランスを取って歩いたりするために使う)、ハーネスを身に着けたら、いよいよ出発です。
氷河では誤って足を滑らせたり、氷の割れ目に転落したりするのを防ぐため、メンバー全員が1本のロープで結ばれた状態で歩きます。いわば、全員が運命共同体。自然に気が引き締まりました。
ハノさんは深い所では数十メートルを超えるというクレバスを避け、慎重に歩いていきます。夏から秋のシーズン中、何度もここを訪れるそうです。彼が言うには、動きながら溶ける氷河は来るたびに様子が変わり、その都度、ルートファインディング(ルート選び)を行うとのこと。私たちが歩いた氷河末端部はクレバスが複雑に走っているのですが、まるで迷路のような氷河上でも、的確にルートを選んでいくのは、まさにプロの技だと思いました。
歩き始めてすぐ、大きなアイスブリッジが現れました。下部が溶けて、氷河の表面部だけが残り、氷の架け橋のようになっています。今にも崩れ落ちそうで危ういのですが、青く輝く氷河の美しさに息を飲みました。ハノさんは「あと2日もすれば、あの橋は崩れて跡形もなくなってしまうでしょう。皆さんは見られてラッキーですね」と言います。今、目にしている光景は、自然がつくり出したひとときの芸術作品なのかもしれません。
しかし、うっとりとしたのもつかの間。突如、ハノさんが幅1メートルほどのクレバスをヒョイとまたいで向こう側に渡り、「さあ、皆さんもこちらへ!」と促します。クレバスの際まで来て、のぞき込むと、青くぱっくりと口を開ける氷の割れ目は、底が見えず暗い氷の下のどこまでも続いています。もし、渡ろうとした瞬間に足元の氷が崩れたら…と考えると手に汗を握り、足がすくみます。勇気を出して1人ひとり慎重に渡り、なんとか全員がクレバスを越えることができました。
氷河で恐ろしいのはクレバスだけではありません。日差しで溶けた水が氷上を流れ、それがさらに氷を溶かして、氷河を渓谷のように深く削っていきます。氷河をうがつように流れる水流は分厚い氷の下で滝となって、足の下から不気味な轟音(ごうおん)を響かせていました。
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執筆=小林 千穂
山岳ライター・編集者。山好きの父の影響で、子どもの頃に山登りをはじめ、里山歩きから海外遠征まで幅広く登山を楽しむ。山小屋従業員、山岳写真家のアシスタントを経て、フリーのライター・編集者として活動。『山と溪谷』など登山専門誌に多数寄稿するほか、『女子の山登り入門』(学研パブリッシング)、『DVD登山ガイド穂高』(山と溪谷社)などの著書がある。現在は山梨で子育てに奮闘中。
【T】
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