7月に入り、梅雨末期の大雨や大型台風の襲来など気象災害が気になるシーズンになりました。2019年に甚大な被害を及ぼした台風15号、19号をはじめ、近年は数十年に一度といわれるような異常気象が頻繁に起きています。さらに、日本には火山の噴火や地震のリスクもあり、さまざまな災害に備える必要があります。
そんな中、今年は新型コロナウイルスによる感染症対策も取らなければならず、まだまだ問題が山積しています。状況によっては、自力で危機を乗り越えなければならないケースも考えておかなければなりません。そんな困難な事態に陥ったときに強い味方となるのが登山用品です。
登山用品は厳しい気象条件下での使用が想定されていたり、設備がない場所でも自活したりするための道具がそろっています。一般的な製品よりも軽量、コンパクト、さらに防水機能を備えているものが多いことが特徴で、ヘッドランプ、テント用品、調理器具など、災害時に大いに役立つものがたくさんあります。
もともと登山のためにそれらの装備を持っている人は、災害時に活用しない手はありません。いざというときに、すぐに使えるようにまとめて収納しておくとよいでしょう。また、登山未経験の人であっても、防災用として少しずつそろえられるのがよいところです。
私は非常時に役立ちそうな登山道具のほか、水や食料、生活必需品など、一時避難の行動に支障が出ない程度の、最低限のものを詰めた非常用バックパックを準備しています。災害時に必要となるものを用意しておけば、いざというときに自分が困らないだけでなく、避難所などにある有限の物資を、より困っている人に譲ることができるという考えからです。
私は日ごろ使っている登山道具とは別に、非常時の持ち出し用として下記のような物を用意しています(一時避難用に夫と2人分)。これらの非常用品は、登山で使わなくなったバックパックに詰めて玄関脇に置き、緊急時はすぐに持ち出せるようにしています。
[caption id="attachment_34333" align="aligncenter" width="400"] 非常用バックパックの中身。年に一度、見直しをしている[/caption]
[1]スリーピングマット
登山のテント泊で使うマット。ウレタンフォームが入っていて、半自動的に吸気・膨張するタイプなので、少し息を吹き込むだけで使えるのが特徴。体育館などの固い床や、屋外で横になることも想定して入れている。折り畳めば座布団代わりにもなる。
[2]ツエルト
専用ポールがない(必要としない)2〜3人用簡易テント。トイレや着替えのときに広げれば目隠しとして使えるほか、かぶるだけで防寒になる。屋外でテントのように張れば、風雨もしのげる。
[3]飲料水
飲み水としてはもちろん、食事や手洗いにも使えるよう、お茶やジュースではなく、ミネラルウオーターを準備(1人1日3ℓ、3日分をこのほかに備蓄)。
[4]ペーパー類
トイレットペーパー、ポケットティッシュ、体拭き用の大判使い捨てタオルなど。
[5]携帯トイレ
トイレが使えないときのための必需品。臭いが外に漏れにくい素材のビニール袋で密閉できるようになっている。
[6]タオル
使い勝手のよい手拭き用タオルのほか、シーツ代わりや防寒にも使える大判タオルも入れている。
[7]クッカー
お湯を沸かしたり、簡単な煮炊きをしたりするための鍋。チタン製なので、丈夫で軽い。
[8]バーナー&ガス
折り畳めば手のひらサイズほどのコンパクトさだが、火力が強く、非常時も頼りになる。クッカーとセットで使う。
[9]携帯ラジオ
避難先での情報収集にラジオを使うとスマートフォンを使う時間を減らせ、バッテリー消費をセーブできる。
[10]バッテリー
携帯電話などの電源として。
[11]ザックカバー
雨天時に避難するときなど、バックパックの中身をぬらさないために。
[12]ファーストエイドキッド
常備薬、ばんそうこう、包帯、三角巾、ガーゼ、テーピングテープ、湿布、使い捨てカイロ、エマージェンシーシート、簡易裁縫道具など。保険証のコピーや筆記用具なども入れておくとよい。
[13]食料
アルファ米、レトルト食品、菓子類など日持ちがよく、すぐに食べられるものを数食分(これとは別に数日分を備蓄)。
[14]ヘッドランプと予備電池
登山用は頭に装着できるようになっていて、手に持たなくてもよく、両手が空くので便利。夜間の避難や、屋内で停電したときのために1人1つ用意したい。できれば200ルーメン程度の明るいものを。
[15]衛生用品
歯ブラシ、コンタクトレンズ、除菌アルコール、マスクなど。
[16]折り畳み傘
雨天時のほか、晴天時に屋外で過ごすときは日傘としても使える。
[17]浄水器
飲料水が足りず、湧き水などを利用するときのために。水中のバクテリアや微生物などをろ過し、飲み水にすることができる。
非常用品は年に一度は中身をチェックし(私は9月1日と決めています)、食料や医薬品などを新しい物に入れ替えたり、不足しているものがないか見直したりするようにしています。必要となる物は人によって違いますので、「人と防災未来センター」の減災グッズリスト(http://www.dri.ne.jp/utility/utility_checklist)などを参考に準備するとよいでしょう。
そのほかに備蓄しておきたい登山用品
一時避難で身の安全が確保でき、自宅が無事であるならば、備蓄品を使ってより快適に過ごすことができます。そのようなときは、例えば、次のような登山道具が役立つでしょう。
・テント
避難所が混雑して入れないときに宿泊場所として使える。プライベート空間が保たれるのも利点で、避難先での「3密」を防ぐアイテムとしても注目されている。しかし、暑い時期に締め切っていると熱がこもりやすいので要注意。また、設営の際には周囲への配慮を怠らず、マナーを守るようにしましょう。
・登山用ヘルメット
落下物などからの頭部の保護や、足元が不安定な場所での転倒に備えて。
・登山用ウエア
登山用のウエアは軽くてかさばりにくく、ぬれても乾きやすいものが多い。防寒着も保温性が高いので活用したい。
・トレッキングシューズ
ぬかるみでも足がぬれにくく、一般的な靴に比べて靴底が硬いので、ガラスなどが散乱した場所を歩くのにも心強い。
・レインウエア
悪天時の移動のほか、屋外での作業時に着用すると服の汚れを軽減できる。防水透湿素材を使ったものは蒸れにくく快適。
・ポータブル型ソーラーパネル
避難所などのコンセントが混んでいて使えないときなど、電源の確保に。
・グローブ
作業時に手の保護や冷え防止に。
ここに挙げたもののほかに、工夫次第で災害時に使える登山道具はたくさんあります。日ごろ、登山で道具を使うときに「非常時はこんな使い方ができそうだな」といったようにシミュレーションをしてみると、より用途が広がるかもしれません。また、緊急時にも慌てずに使えるよう、使い方をマスターしておくことも大切ですね。