アスリートたちが熱い火花を散らした冬の平昌五輪は大盛況のうちに閉幕しました。読者のみなさんも思いきり体を動かしたくなっている頃ではないでしょうか。日ざしの暖かな日も少しずつ増え、外でのランニングなどもそろそろ再開しようという時期です。暑くない季節ではありますが、この時期こそ「水分」「糖質」「ミネラル類」の摂取を心がけてください。
なぜなら、この3つの要素が不足したまま運動を続けていると、体に不調を来すばかりか、ケガを招きかねないからです。ポイントは、運動前・運動中・運動後の定期的な水分・栄養補給です。プロに話を聞きました。
筋肉を動かすエネルギーになるのは糖質ですが、糖質の代謝を促すには、ナトリウムやカルシウム、マグネシウムなどのミネラル類が必要です。水分やミネラル類が不足すると、筋肉を動かすための糖質の代謝がうまくできず、筋肉が思うように動かなくなってしまい、思わぬケガを招くこともあります。
外気がひんやりしているこの時期は、運動で発汗してもすぐに乾いてしまいます。また気温が低く喉の渇きも感じにくくなります。こうしたことから、夏ほど水分・ミネラル補給に意識が向きにくいため、運動中に補給不足になりがち。3月だからといって、水分や栄養補給を怠るとその代償を支払うことになります。
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現役マラソンコーチ 衣笠明宏氏[/caption]
次に、実業団で陸上部の監督経験を持つ衣笠明宏(きぬがさあきひろ)氏からは、実際のレースでミネラル類の不足により救急搬送された話を伺いました。
「サロマ湖100kmウルトラマラソンは、最高気温が28℃を超えると、完走率が50%を切る過酷なレースです。2013年に私は、このレースに出場したものの69kmでレースを断念するという体験をしました。
レース中は、常にスポーツドリンクを給水し、60km付近までは体に何の異常も感じませんでしたが、66km付近から一気に筋疲労を感じ始め、右足脹脛(ふくらはぎ)がつり始めました。69kmで競技続行は不可能と判断をして腰を下ろすと、右足脹脛・左足脹脛・腹筋・上腕二頭筋、三頭筋・大腿四頭筋とあらゆる体の筋肉がつりました。痛くて、痛くて、気絶するかと思いました。係員が来て経口補水液を飲ませてくれましたが、それでも痛みは治まらず、救急搬送されることに。ところが救急車に乗るのも一苦労で、数十分はかかったと思います。
ドクターから、筋弛緩(きんしかん)剤や点滴を打ってもらったことで回復しましたが、原因は『電解質(筋肉や神経の働きをサポートしたり、水分調整などを行うミネラル)の不足』によるものと診断されました。この経験から、現在は水分だけでなく、ミネラル類の摂取にも気を付けるようになり、翌年の大会では、気温28.1℃、完走率は55.8%だったにもかかわらず、体に異常もなく完走することができました」
手軽なミネラル補給には「塩こんぶ」がオススメ!
プロ野球チームの栄養指導実績のある管理栄養士・医学博士の本多京子(ほんだきょうこ)先生は「運動によって発汗が増すほど、塩分をはじめミネラル類の喪失も加速度的に増加します」と語ります。運動中は水分や糖質の補給だけではなく、ミネラル類を摂取することが大切。日ごろから健康や体調管理にアンテナを張っているアスリートほど、運動中に塩分(塩分サポート食品や塩のタブレットなど)を携帯し補給しているそうです。
塩以外の手軽なミネラル補給としてオススメなのが「塩こんぶ」。2017年11月19日に行われた神戸マラソンでは、ランナーたちのミネラル補給に、30km地点のエイドステーションで食品大手のフジッコが「塩こんぶ」を提供し、アスリートたちの体調管理をサポートしました。
佐藤先生は「昆布のミネラル成分(100gあたり)は牛乳の約23倍、カルシウムは約7倍の含有率を誇ります。体内への吸収率は80%以上と高いので、塩こんぶは子どもからシニアまで年齢を問わずオススメできますね」と言います。
本多先生からは摂取方法をアドバイスいただきました。「塩こんぶは適度な塩分・ミネラルが含まれうま味が強いため、おいしく続けやすいのが特徴です。例えば、運動前には水分補給に加え、多めに塩こんぶを入れたおにぎりを食べてみてはどうでしょうか。運動中は、塩こんぶをポーチに携帯しておいて、休憩時にさっと一口つまみましょう。運動後には、塩こんぶに温かいお湯を注いでスープにすると、ホッと一息つくことができますよ」とのこと。
健康維持には運動が不可欠ですが、準備やケアを怠るとケガの原因になります。水分・糖質・ミネラルの摂取を忘れずに、おいしく続けやすいものを選ぶなどの工夫をして運動習慣をつくりましょう。
※資料提供:フジッコ 昆布事業部