夏バテ対策にしっかり食事を取っているのに、眠気や倦怠(けんたい)感が抜けない。その原因は、運動不足や睡眠不足などから来る体のリズムの乱れであるほか、糖質に偏った食生活に陥っているからかもしれません。これを「糖質バテ」といい、秋になってメタボ化する可能性が高くなるので要注意です。バテやすい、と感じている今の時期から対策をしておきましょう。
ジリジリと暑い外出先からキンキンに冷えた室内へと出入りを繰り返すうちに自律神経が参ってしまい、食欲減退から体調不良を引き起こすのが「夏バテ」。それに比べて、体温調節もしていて食事をきちんと3食取るなど夏バテ対策しているのもかかわらず、眠気や倦怠感が抜けない……これが糖質バテの疑いアリ!なのです。糖質バテの状態が続くと余分な脂肪を蓄積しやすくなるため、「秋太り」に発展することも。早速、次の項目をチェックしてみてください。1つでも当てはまっていたら糖質バテの可能性があります。
セルフチェックで1項目でも当てはまる人は、糖質に偏った食生活や運動不足、睡眠不足によって、血糖値のコントロール力が低下しやすい傾向にあると、循環器専門医の池谷敏郎先生は言います。
(1)食生活の乱れ(糖質過多)
清涼飲料水や冷やし中華、そうめんなどの冷たい麺類には糖質が豊富です。糖質に偏った食事を続けると、血糖値が急上昇しやすくなります。
(2)運動不足
運動不足は血糖値が急上昇する理由の1つです。運動不足の状態が続くと、血糖値を下げる役割を担うホルモン「インスリン」の働きが悪くなり、血糖値のコントロールがうまくできない状況に陥ります。
(3)睡眠不足
睡眠時間が減ると満腹ホルモンの「レプリン」の分泌量が減り、空腹ホルモン「グレリン」の分泌量が増えます。その結果、食べ過ぎに走りやすくなり、血糖値の急上昇を引き起こします。すると体内では、急激に上がった血糖値を下げようと多量のインスリンが分泌され、今度は食後の急激な血糖値の低下が起こりやすくなります。
食後の血糖値の過度な上昇や反動で生じる低血糖は、夏の気温差によって自律神経が乱れることによる「夏バテ」と同じような眠気・倦怠感を引き起こします。糖質バテを防ぐためにも、血糖値を正常に保つことを目的にして次の生活習慣改善に取り組んでみましょう。
糖質バテを予防・改善する生活の習慣3つ
そこで、(1)食生活の乱れ(2)運動不足(3)睡眠不足の改善方法を、池谷先生に考えていただきました。
(1)夏の食生活に「プラス、舞茸」
バランスの整った食生活に切り替えることが望ましいことは言うまでもありませんが、糖質に偏った麺類や丼ものなどの一品モノで済ませたくなる日もあるでしょう。そんな日の食事には、舞茸を加えましょう。舞茸には、食後に血糖値が急上昇するのを抑える効果が期待できます。糖尿病・高血圧などの予防・改善効果が明らかになりつつある「ビタミンD」を同時に摂取することもできます。他のきのこ類と比べても、舞茸はビタミン・ミネラルが豊富。お勧めの調理法はいためること。舞茸については過去記事の第26回で詳しく解説していますので、読み返してみてください。
(2)1日20分以上の運動
生活習慣病予防のための健康情報サイト「e-ヘルスネット」では、糖尿病改善の1つとして、運動療法を紹介しています。運動の頻度はできれば毎日(少なくとも週に3~5回)、運動量は20~60分、運動強度は中等度(ややきつい)の全身を使った有酸素運動を行いましょう。全身の大きな筋を使用するウオーキング(速歩)・ジョギング・水泳・自転車などがお勧めです。
(3)十分な睡眠
昼間の活動時間に眠くなり、夜は寝苦しくて眠れない……これでは慢性的な睡眠不足になってしまいます。寝不足を解消するには(1)(2)に取り組みつつ、眠る環境を整えるのがお勧めです。
枕は、頭部をきちんと支えてくれるだけの弾性と発汗に備える吸湿性・放湿性のある素材のものを。寝返りで横向きになっても、肩先から側頭部全体を支えるだけの奥行きが必要です。ベッドマットや敷布団は、快適な眠りを持続するために適度な硬さが必要。掛け布団は、寝ている間にかく汗を発散させる吸湿性・放湿性があるものを選びましょう。こうした睡眠の質にかかる寝具の選び方は、e-ヘルスネット「快眠のためのテクニック」で紹介されています。
今年の夏(6~8月)は、全国的にも平均気温が高いという気象予報が出ています。糖質バテをしないように、食事の工夫と適度な運動・睡眠で正常な血糖値を維持できるよう心がけてください。
【取材協力】
池谷敏郎(いけたに としろう)先生
医学博士・池谷医院院長。東京医科大医学部卒。東京医科大学循環器内科客員教授、総合内科専門医、循環器専門医。