冬が旬の「レモン」。和食にも洋食にも年中使われる名脇役なので意外に思われるかもしれません。国産レモンの収穫量トップを走る広島県が地域ブランド化を推し進めたことも手伝って、近年の需要は右肩上がり。また、レモンの健康効果についての研究も進んでいます。
国産レモンの産地の中で「広島県大崎上島町」は、レモン島といわれるほど栽培が盛んです。2017年にこの島で1年間かけて行われた調査では、日本人の平均レモン摂取量が約2カ月に1個であるのに対し、島民の平均摂取量は約5日に1個とかなり多いことが分かりました。2018年5月から2023年までの5年間は、4者連携(自治体、広島大学、大手飲料メーカー2社)により、レモン摂取による健康効果を確認するための長期観察介入研究(※)が行われています。
島民の健康寿命が全国平均より7歳高いということもあり、レモンを多く摂取するほど健康寿命は伸びるのか、いよいよその関連性解明に期待がかかります。今回はレモンを日常的に食べる島民から、健康の土台を整えるヒントを学びましょう。また、レモンを使った家族で楽しめるレシピをご紹介します。
大崎上島町の島民が長寿を誇るのはレモンの何に由来しているのかを、島内で調査研究を進める県立広島大学教授の飯田忠行(いいだ ただゆき)先生に伺いました。
A. 骨の健康を支える効果
2017年2月〜2018年2月に実施した日常的なレモン摂取状況と健康状態の実態調査(※1)では、レモン摂取量が多い島内女性の骨密度は、同年齢平均の骨密度よりも高い傾向にあることが分かりました。
※1 調査対象は、レモンの消費量が多い大崎上島町の成人男女123人の内、データ解析対象者90人/61.9歳±10.8歳、男性26人・女性64人
飯田先生は「骨密度が高い理由の1つに、レモンに豊富なクエン酸が持つキレート作用が挙げられます。キレート作用とは、カルシウムをはじめミネラルを腸から吸収しやすい形に変えること。この働きが血中カルシウム濃度を安定させ骨密度を維持することにつながり、結果的に同年齢の女性に比べて、島内女性の骨密度が高くなっているのでは」と言います。
B. 高血圧を抑制する効果
この健康調査では、レモンを定期的に摂取している人は、そうでない人と比べて最高血圧が低く抑えられていることも分かりました。飯田先生はこれを「レモンの皮に含まれるレモンポリフェノールと果汁に含まれるレモンフラボノイドが関係しているのでは」と指摘。5年間の長期観察介入研究で、さらに因果関係が明確になるかもしれません。
レモンをたっぷり使った湯豆腐で健康になろう
睡眠不足や疲労が抜けないときには意識的にビタミンCを取るのがオススメです。ビタミンCを多く含み、クエン酸による消化促進、抗酸化効果、肌の新陳代謝アップなどに効果が期待されているレモンは、健康寿命を伸ばす可能性も秘めています。
そこで、皮ごとレモンの栄養素を取り入れることができる、これからの季節にピッタリのオススメレシピを管理栄養士の柴田真希さんに教えていただきました。
◎レシピ「もやしレモン湯豆腐」
材料(2人分)
[スープ]
● だし汁……800cc
● 薄口しょうゆ……小さじ2
● レモン汁……大さじ2
[レモンポン酢](作りやすい分量)
● レモン汁……大さじ3
● しょうゆ……大さじ3
● みりん……大さじ1
● 昆布……3g
[具材]
● 絹ごし豆腐……1丁
● 大豆もやし……1袋
● ねぎ……1本(100g)
● シイタケ……2枚(40g)
● レモン……1個
[作り方]
1. [レモンポン酢]を作る。小瓶に材料全てを入れ、1日以上置くとよりおいしくなる
2. 絹ごし豆腐を食べやすい大きさに切る
3. ねぎを斜め切りに、シイタケに飾り包丁を入れる
4. レモンを2〜3mm厚の輪切りにする
5. 鍋に[スープ]の材料を入れて中火にかける
6. 具材と大豆もやしを入れ温まったらお好みで[レモンポン酢]をかけていただく
(レシピ考案:管理栄養士 柴田真希さん)
だしやきのこをたっぷり入れると、うま味が増して、より減塩しやすくなるそうです。皮ごとスライスして活用すれば、鮮やかな黄色が差し色になる、見た目にも楽しい一品になります。冬の健康維持に、体が芯から温まるもやしレモン湯豆腐を食卓のメニューに加えてみてください。
【取材協力】
飯田忠行 先生
県立広島大学保健福祉学部 理学療法学科 教授/レモン健康科学プロジェクト研究センター長。広島県戦略作物であるレモンの効果検証を行っている。専門は応用健康科学、地域健康疫学、 公衆衛生学、老年医学。
柴田真希 さん
管理栄養士・(株)エミッシュ代表取締役。