寒さが厳しくなるこれからの時期は、空気の乾燥にともないウイルス感染が広がりやすくなります。普段から行っているマスク着用やうがい・手洗い、消毒といった感染症対策を、いっそう徹底して過ごしましょう。これに加えて、不調を寄せ付けない体づくりがとても大切です。今回は、寒い時期でも免疫機能を維持・強化する生活習慣と、そのためのレシピを専門家に伺いました。
「この時期の体調管理の基本は、体を温めること。体を温めると血行が促進されて白血球の働きが活発になり、免疫力アップにつながります」と話すのは、健康ソムリエ理事、ロングライフラボ理事としても活躍されているイシハラクリニック副院長の石原新菜医師です。寒さの厳しい季節は冷えによって血流が滞ったり、体がこわばったりして、さまざまな不調を招きやすくなります。手軽に体を温められる石原医師オススメの温活方法は、仕事や運動、家事などの合間に、ホットドリンクをこまめに飲むこと。免疫力を高める働きや血行をうながすために、「ビタミンC」「ポリフェノール」を多く含む食材と体を温める「スパイス」をホットドリンクに組み合わせるのが、石原医師のオススメだそう。
ビタミンCには疲労回復を助け白血球を活性化させる働きが、ポリフェノールには老化や免疫力低下の原因となる活性酸素を抑える働きがあるため、疲労や不調の予防にうってつけだといいます。
しょうがに含まれる辛味成分には血行・発汗を促進させる働きが、シナモンには冷えを取り除き血行を促進させる働きが、カルダモンには血の巡りをよくして消化を促す働きが、クローブには胃腸を温める働きがあるといいます。
石原医師に、上記の食材・スパイスを使用したホットドリンクレシピを考案いただきました。ホットドリンクを活用して体を温めながら、こまめな水分補給で常にノドを潤しておくことも、この時期の体調管理には有効です。レシピを参考にドリンクをつくったら、保温水筒で携帯しましょう。
【とろとろはちみつレモンジンジャー】
<材料>1人分
●水……180ml
●レモン果汁……大さじ1
●すりおろししょうが……5g
(またはジンジャーパウダー……小さじ2分の1)
●はちみつ……大さじ1
●くず粉または片栗粉……小さじ1
※くず粉や片栗粉は、とろみをつけることでドリンクの保温効果を高めます。加えてくず粉は血行促進作用も期待できるため、食材とスパイスの相乗効果を底上げできます。
<作り方>
材料をすべて鍋に入れて弱火でゆっくり混ぜながら、ひと煮立ちしたらでき上がり。
【ノンアルコールホットワイン】
<材料>1人分
●100%ぶどうジュース……150ml
●レモン果汁……大さじ1
●しょうがのすりおろし……5g
(またはジンジャーパウダー……小さじ2分の1)
●シナモンパウダー……小さじ8分の1
●クローブパウダー(あれば)……少々
●はちみつ……小さじ1
<作り方>
材料をすべて鍋に入れて弱火にかけ、よく混ぜたらでき上がり。
【ホットアップルレモンジンジャー】
<材料>1人分
●リンゴジュース……150ml
●レモン果汁……大さじ1
●しょうがのすりおろし……5g
(またはジンジャーパウダー……小さじ2分の1)
●はちみつ(お好みで)……小さじ1
<作り方>
材料をすべて耐熱カップに入れ、600Wの電子レンジで1分~1分半温めたら、よく混ぜてでき上がり。
冬の体調管理4カ条
冷えによる不調を防ぐには、飲み物で体内を温めることに加えて生活習慣の見直しも重要です。一時的な寒さ対策にとどまらず健康を維持・増進するための体調管理法を、石原医師にご紹介いただきました。
【1】食事で体を温める
鍋料理や豚汁などの温かい汁物は、上記に提案したホットドリンクと同様、体を温めるのに役立ちます。みそやしょうゆなどの発酵食品、根菜類、ネギ、しょうが、薬味などには体を温める働きがありますから、毎日の食事に積極的に取り入れましょう。また、ビタミンAには粘膜免疫を強化する働きが、ビタミンCには風邪などの感染症にかかった際に出る活性酸素の働きを弱める抗酸化作用があるため、これらのビタミンが豊富な緑黄色野菜を加えるのもオススメです。ビタミンCは水溶性で排出されやすいため、小まめに摂取することが大切です。
【2】いつでも頭寒足熱
足元は心臓から遠くて冷えやすいためはだしは禁物。靴下や厚手のタイツ、レッグウオーマーなどでしっかり防寒し、上半身はカーディガンなどで体温調節しやすい状態にすると、室内外の寒暖差を和らげながら自身の適温で快適に過ごせます。
【3】「3首」を温める
首・足首・手首の「3首」は、他の部位に比べて筋肉や脂肪が少なく、太い血管が表面に出ているため熱が逃げやすくなっています。特に外出時は、マフラーや手袋などでの防寒を怠らないように注意しましょう。
【4】十分な睡眠時間を確保
副交感神経が優位になる睡眠中は、血管が開いて血流が促進されて胃腸や内臓の働きが活発になり、疲労回復や免疫機能の維持・強化が進みます。睡眠不足が続くとこうした働きが低下し、風邪をひきやすくなったり、さまざまな生活習慣病が増悪したりする傾向があります。少なくとも、6時間以上を目安に十分な睡眠を取りましょう。
新たな1年のスタートは、生活習慣を切り替えるチャンスです。年末年始の緩んだ生活を見直して不調知らずの体をつくり、心地よいスタートダッシュを切りましょう。
【取材協力】
石原新菜(いしはらにいな)さん
医師・イシハラクリニック副院長。ヒポクラティック・サナトリウム副施設長。健康ソムリエ理事、ロングライフラボ理事。2006年帝京大学医学部卒業。現在父、石原結實のクリニックで主に漢方医学、自然療法、食事療法により、種々の病気の治療にあたっている。クリニックでの診察のほか、分かりやすい医学解説と親しみやすい人柄で、講演、テレビ、ラジオ、執筆活動と幅広く活躍中。日本内科学会会員。日本東洋医学会会員。日本温泉気候物理医学会。