桜の便りを聞く頃は、年度末の忙しいタイミングでもあります。職場内の多忙に加え、出張の機会も増える時期だけに、「それどころではない」という声もちらほら聞こえてきそうです。
桜には、「ヒカンザクラ」「ヤマザクラ」などいろいろな種類がありますが、一般的に鑑賞できる機会が多いのは「ソメイヨシノ」。自生しているソメイヨシノはごく少なく、人の手で植えられたものがほとんどです。
すなわちソメイヨシノは、人の身近にある桜。市街地の真ん中や集落の周辺などでよく見られるため、平野部を走る新幹線の車窓は、開花の時期に乗車すると桜、桜の連続になります。ぜひ、晴れ間に映える自分だけの桜の風景を探してみてください。
東海道新幹線で特にお薦めしたいのが新富士駅付近の「富士山を背景に見え隠れする桜」です。
「こだま」のみ停車の新富士駅を「のぞみ」「ひかり」が通過するタイミングは、列車によって多少異なりますが、おおむね東京駅からは50分後、新大阪駅からは1時間45分後が目安になります。
晴れていれば、富士山が最も大きく見える場所ですから山側の車窓に注目してみましょう。特に富士川鉄橋付近(大きな川なのでよく分かる)では、川沿いの桜並木も目にできるかもしれません。座席はE席(グリーン車はD席)が富士山側です。
東北新幹線でのお薦めは、意外にも東京のど真ん中・上野駅付近。下り列車なら発車直後に、上り列車なら到着直前に、それぞれ飛鳥山公園の桜を間近に見ることができます。近くでは、少し上野寄りの谷中霊園も同じくお薦め。いずれも列車が速度を落とす区間なので、花をゆっくりと楽しめます。座席はこちらもE席側です。
もう1つ、山陽新幹線の新大阪・新神戸間にある「六甲トンネル」付近も推しておきましょう。見やすい座席はA席で下り列車限定。列車の進行方向に目を向けるのが鑑賞のコツです。六甲山系の南斜面に広がる住宅街のあちらこちらで咲く桜のパノラマをトンネルに入るまで遠望できます。
「駅前見どころ」も意外に多い
時間が許せば、列車に乗る前や思い切っての途中下車で、仕事を忘れてひととき、桜の花を愛でに出かけるのもよいリフレッシュになりそうです。
その町ごとの名所なら、たいていの駅付近で見つけることができますが、とりわけお薦めしたいのが「生田川公園」(新神戸駅)と「姫路城」(姫路駅)。いずれも最寄りは山陽新幹線の駅になります。
生田川公園の桜は「ぬのびき花街道」ともいわれ、新神戸駅の真下を流れる生田川に沿って並木状に続きます。駅のホームから眺めることもできますが、ここは下りて散歩としゃれ込んでみたいところ。15分も歩けば満足できそうです。神戸は「坂の町」。駅からの道のりは下り坂ですが、帰り道では息が弾んでしまうかもしれません。
姫路城は、入り口の大手門まで姫路駅から徒歩15分ほどで到着します。ただし城内は広く、桜を楽しみながら一通り見学すると、駅へ戻るまでに2時間以上かかりますからご用心ください。
手軽に楽しむなら、大手門に程近い「イーグレひめじ」の屋上展望台へ上がってみましょう。真正面の小高い位置から桜のピンクと常緑樹の緑、真っ白に輝く大天守のコントラストを一望できます。
以上、紹介したスポットの最寄り駅付近の開花日(平年値)は、以下の通りです。
・新富士駅(3月25日)
・上野駅(3月26日)
・新大阪駅、新神戸駅、姫路駅(3月28日)
桜(ソメイヨシノ)は、おおむね開花から1週間ほどで7分咲きになって見ごろを迎え、満開から1週間ほどで花吹雪になります。
転勤や配置転換などが多くなるこの時期は、不安や期待を胸に乗車することも少なくありません。目線を上げて車窓越しに桜を眺めることで、気持ちを落ち着けて、フレッシュな気分で業務に取り組んではいかがでしょうか。