中小企業の悩みの1つとして、社内にIT専門の担当者が1人しかいない「ひとり情シス」、あるいは担当者が全くいない問題がある。多くの中小企業が、IT専任担当に人員を割けないのは致し方ない事実。しかし、現在のビジネス活動はITなくして成り立たないといっても過言ではない。つまりIT分野の力不足が、経営のリスク要因にならないように注意を払う必要がある。
例えば、ウイルス対策ソフトを導入している程度のセキュリティ対策しか講じていない企業は、いつ重大なトラブルに巻き込まれてもおかしくない。そこで今回、セキュリティ対応状況に関する簡単なチェック表を用意した。ぜひチャレンジしていただきたい。以下の項目に3つ以上チェックが付いた企業は、危険度が“赤信号”状態といえる。
□社員がUSBメモリーやスマホに顧客情報を入れて持ち歩いている
□社員がスマホや個人のパソコンをオフィスに持ち込んで使っている
□標的型攻撃を防ぐ方法を社員が理解していない
□ウイルス対策ソフトが最新ではないパソコンがある
□Windows XPがまだ動いているパソコンがある
□マイナンバー制度への対応準備ができていない
ITトラブルが、売り上げ伸び悩みの原因かも…
IT分野の力不足がもたらすもう1つのリスクは、ビジネス機会の損失だ。こちらに関してもチェックリストを用意した。IT環境が以下の項目に3つ以上当てはまる場合、貴社は取引を拡大するチャンスを損ねている可能性があるだろう。
□突然、メールが使えなくなり顧客と連絡が取れなくなったことがある
□ハードディスクが壊れて仕事の情報が消えてしまったことがある
□Officeソフトの使い方が分からず、社員や顧客に迷惑をかけたことがある
□ネットワーク障害で顧客からの問い合わせ・注文を受けられなかったことがある
□IT担当者が手いっぱいで、経営戦略を支援する“攻めのIT”を実践できない
□セキュリティレベルが理由で、新規取引の契約ができなかったことがある
こうしたトラブルはちょっとした事故と捉えがちだがこれにより顧客の信頼を失ったり、営業機会や販売機会を損失したりしているのを忘れてはならない。専任のIT担当者を置かずコストを抑えることで、本業に経営資源を集中したはずなのに、結果的には経営のリスク要因になっているようでは本末転倒だ。
もう1つの問題は、システム担当者の人員不足に起因するコストだ。以下の項目に3つ以上当てはまるようなら、貴社は必要以上のコストを支払っている可能性がある。
□1人のIT担当者が、毎月何度も拠点のITトラブル対応で出張している
□部門サーバーのトラブルで、部の仕事が丸1日はかどらなかったことがある
□パソコン入れ替えのためにIT担当者が休日出勤を重ねている
□トラブルの原因がハードかソフトかネットワークか分からず復旧に時間がかかる
□IT担当者は相談できる人がおらず、1人で抱えがち。健康上の問題が懸念される
□営業所のパソコンが壊れたため、ITに詳しい人が出張して復旧作業を行ったことがある
「ひとり情シス」はコストが少ないように見えて、実は残業代や出張費、休日出勤費などの見えないコストを大量に発生させていることがあるのだ。
フィールドサポート付きのサービスがねらいめ
システム担当者を増やさず、経営のリスクやコストを削減したい……。そんな場合の解決策は、ITのインフラ管理やトラブルシューティング業務をアウトソーシングしてしまう方法がある。アウトソーシングというと、人件費よりも高くつくイメージを持ちやすいが、近年ではいろいろな形態があり、リーズナブルで便利なサービスが選択できるようになってきている。1人のシステム担当者にフル稼働してもらうよりも結果的にコストが抑えられるケースもある。通信キャリアを中心に、多くの企業がさまざまなアウトソーシングサービスを提供している。一度、出入りの通信キャリアの営業担当者に相談してみてもいいだろう。
お勧めなのは、ITトラブルに電話で答えてくれるヘルプデスクサービスを提供し、それでも解決しない場合は技術者を派遣してくれるフィールドサポートが付いているサービスだ。IT担当者を増やすことなく、経営リスクや無駄なコストを削減する。アウトソーシングサービスの検討は経営改善の有効な選択肢である。