現在のビジネス業務においてITの活用は不可欠になっている。ただ、ほとんどのビジネスパーソンのIT知識は十分なものとはいえない。「メールがつながらない」「プリンターで出力ができない」「エクセルの関数が分からなくて書類がつくれない」、「受信したあやしいメールにどう対処して良いか分からない」といったトラブルを、経験した方も多いのではないだろうか。
こうしたトラブルが起きたとき、IT部門を持っていたり、IT専任担当者を置いたりする企業であれば即座に解決を依頼できる。しかし、そうでない会社ではスムーズに解決できず、業務が止まったり残業が増えたり顧客に迷惑をかけたりといった支障が生じる。
こうしたITトラブルに、“できる社員”が忙しい時間を割いて対処しているケースが見られる。日頃からパソコンで企画書や見積書を頻繁に作成している“できる社員”は、必然的にITに明るくなる。つまり彼らはITに関しても詳しいことが多いので、必然的に役割が回ってきてしまうのだ。
この状態は、企業にとって好ましい事態ではない。本業の中心となるべき社員が、ITトラブルに振り回されて本来の業務に集中できなくなるのは一大事だ。トラブル処理で時間が取られ、疲れてしまうようなら元も子もない。“できる社員”をトラブル処理から解放するには、全社員のITスキルを上げるか、ITの専門部員を置くしかない。しかし、そんな余裕がない企業も多いはずだ。
IT担当者不在のもう1つの問題は、セキュリティ対応が遅れてしまうこと。昨今教育系企業や公的機関の情報流出が相次ぎ世間を騒がせた。こうしたトラブルに巻き込まれるリスクは、企業規模に関係なく高まる一方だ。
「当社に盗まれる情報はない」と高をくくっている企業もあるが、セキュリティが甘いとパソコンを踏み台にしたサイバー犯罪に巻き込まれてしまう。情報を盗まれた被害者ではなく、情報を漏えいした加害者として指弾される危険性を認識すべきだ。今後、 マイナンバー制度が始まれば、否が応でも社員と家族の番号を管理しなくはならない。これを漏えいさせると罰則を受けるリスクがある。
「セキュリティ対策の必要性は分かっているが、ヒトもカネも余裕がない」などといっている場合ではない。ビジネスを続けていきたいならば、早急に対策に取り組むべきだ。その解決策となるのが、毎月一定額で故障・保守に対応してくれる社外ヘルプデスクサービスの活用だ。ヘルプデスクとは、ITに関する困りごとを受け付け、その解決に貢献する相談窓口サービスのこと。大手企業のIT部門と同様あるいはそれ以上の機能を、一定料金で提供する。一般的なサービス内容を以下にまとめた。
【社外ヘルプデスクのサービス内容】
(1)パソコンのソフト、ハードに関する困りごとを電話で受け付け、解決策を提示
(2)パソコン、周辺機器、ネットワークなどの設定・変更
(3)電話で解決できないトラブルを遠隔操作で解決するリモートサポート
(4)IT機器の管理・報告
(5)トラブル発生時の出張サポート
現在、国内で利用できる主なサービスには、大塚商会「おたすけくん」、KDDI「まとめてオフィス」、NTT東日本「オフィスまるごとサポート」、NTT西日本「オフィス安心パック」※1などがある。サービス内容は各社少しずつ違うが、いずれも中堅・中小企業を対象としていることもあり、月額500~3000円程度(通信環境など諸条件に関わる費用は除く)のリーズナブルな価格設定がされている。
社外ヘルプデスクサービスを賢く使いこなす
失敗しない社外ヘルプデスクサービスの選び方を以下にまとめた。
(1)基本料の安さにごまかされない
多くのサービスは月額500~3000円程度の安さを前面に出しているが、その内容はさまざまだ。基本料金でサポートできる環境(パソコン台数やユーザー数、拠点数)などを確認し、必要なサポートを受けるために必要な金額はいくらなのか、必ず事前に算出すべき。
中でも出張サポートは通常料金以外に出張費用など追加料金がかかることも多い。過去の業務データから出張が必要なトラブルの発生件数を予測し、それにかかる追加料金も試算して、コストを比較する。
(2)サポートの範囲をきちんと確認
IT関連の困りごとは多岐にわたる。アプリケーション、ネットワーク、プリンター、無線LAN、OS設定、セキュリティ対策など、どの範囲までサポートするのか、必ず事前に確認する。もちろん、幅広くサポートしてくれる業者を選ぶのがポイントだ。
(3)リモートサポートの有無
電話だけで問題を解決できない場合、トラブルを起こしたパソコンに遠隔でアクセスし、画面を共有しながら問題を解決するリモートサポートが可能かどうか確認する。
(4)サポート対応の回数・時間制限はあるか
電話サポートを受けられる回数や、1回の電話対応の時間を制限しているサービスと、基本料金だけで回数も時間も無制限に対応するサービスがある。実際の利用を想定したサービスを選ぶ。
(5)サポートの電話がつながるかどうか
パンフレット、ホームページ、セールストークなどでは分からないが、最も重要なポイントはサポート電話のつながりやすさだ。電話がつながらなければヘルプデスクは何の役にも立たない。まずはお試しのつもりで小規模に導入し、つながりやすさを実地に確認してから、全社に広げるのも一つの手段だ。
(6)訪問サポートのクオリティ
サポートを依頼してからどの程度で保守要員が現場に到着するのかは、サービス選びの重要なポイント。拠点のエリアによって時間が変わる。拠点ごとの対応状況を確認し、全社的にもっとも短い時間で訪問サポートが可能な事業者を選択する。
業者によっては、出張サポートを委託先の業者に任せているケースが少なくない。エリアごとにまったく違う業者と提携している場合には、サービス品質が一定に保たれないことがある。エリアごとの実際の作業会社を確認する。
コストを抑えつつ、ITトラブルを解決するため社外ヘルプデスクを導入するのだから、思わぬ費用が発生したり、トラブルがトラブルを呼んだりしては意味がない。サポートの必要性を慎重に見積もり、最適なサービスを選択したい。
※1 オフィス安心パックの利用には、フレッツ 光ネクストなどプロバイダーの契約・料金が必要
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