最近、場所を選ばない働き方を推奨する企業が増えている。必要なときだけオフィスに出社したり、基本的には自宅で働いたりするなど、従来とは違った勤務形態を認めるものだ。社外で働く場合はノートパソコン、タブレットなどモバイル端末を活用する。自宅で働く場合にも、会社が貸与したパソコンなどをネットワークにつないで仕事をする。こうした、社外での利用を目的とした企業資産が増え続けると、従来型の社内IT機器管理では賄い切れないケースが出てくる。
柔軟な働き方の前提となるIT資産管理
自社の業務に使われているIT機器が、どこでどう使われているのか、どんな状態かは、企業として把握しておかなくてはならない。こう指摘すると「パソコンの台数や、それをいつ買ったかくらいは管理している」と、安心していないだろうか。それでは不十分。ハードウエアだけではなく、ソフトウエアも対象だ。さらに、アップデート状況も管理する必要がある。こうした管理を総称して「IT資産管理」という。
IT資産管理の目的は大きく3つある。1つが物理的にIT機器を管理すること。どこにあって、誰が使っている、資産的な価値はどうなっているか。これは会計上も把握しておかなくてはならない。2つめが業務を適切に行うための管理だ。会社が認めたソフトウエアを利用しているか、そのバージョンが常にアップデートされているかをチェックする。
そして今、最も重要視されているのが、3つめの目的である情報セキュリティーの確保だ。例えば、端末それぞれのネットワーク接続状況の確認、紛失・盗難の際のデータ保護設定、セキュリティーソフトの更新状況などをチェックし、情報漏えいを防止する重要な役割を果たす。
管理方法の見直しは、働き方の柔軟性を実現する上で非常に大切だ。モバイルワークや在宅勤務を取り入れようとすれば、従来のように社内にIT資産があることを前提とした方法では、到底対応し切れないからだ。
多くのIT資産を効率的に管理するには…
しかし、社内にあるIT資産をしっかりと管理することはハードルが高いという企業も多いだろう。端末ごとに管理番号を振り分け、データベースを作らなければならない。IT関係に詳しくない社員がいれば、ソフトウエアの更新も利用者任せにできない。とにかく手間がかかる。
こんな悩みを解決するのが、IT資産管理ソリューションだ。対象となる企業規模を問わず、さまざまなサービスが提供されている。例えばシステム開発を手掛けるSkyは、「SKYSEA Client View」を企業・団体向けのパッケージ商品として提供する。
SKYSEA Client Viewの機能は幅広い。セキュリティー面で、基準を満たしていないパソコンはシステムに接続できないように運用できる。アプリケーションはバージョンレベルの管理が可能で、自動でインストールする機能もある。指定したURL以外のWebサイトにアクセスしようとすると、警告を与える。これら各端末の情報は、サーバー側で一元管理する。
ただ、こうしたIT資産管理ソリューションのパッケージ商品は、価格面や導入の手間で、企業規模によっては、オーバースペックになるケースがある。そうした場合には、導入の手軽さで優位性のある、クラウドベースのIT資産管理サービスを検討したい。NTT西日本が提供する「オフィス安心パック IT管理サポート(NMS)」※1(以下、IT管理サポート(NMS))やソリトンシステムズの「eCare-OnDemand」が該当する。これらのサービスは、先述のIT資産管理ソリューションとほぼ同様の機能を備えている。初期費用を抑えて導入したい場合にも適する。
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IT管理サポート(NMS)(イメージ)[/caption]
モバイルワークでも情報セキュリティーを確保したい
2017年2月にモバイルワーク向けにバージョンアップしたIT管理サポート(NMS)は、情報セキュリティーの観点からも、いくつか機能が追加された。その1つが「位置情報閲覧機能」だ。端末の現在の位置情報と、過去履歴が管理画面上に表示される。どこでどのデバイスが使われているかをリアルタイムに把握でき、モバイルワーク管理では非常に有効だ。
また、モバイルワークの最も大きなリスクである、端末の盗難や紛失への対策も取り入れた。「リモートロック/リモートワイプ」は、利用者が社外で端末を紛失した際に、管理者が遠隔操作で端末をロックして一時的に利用できなくしたり、端末を初期化したりして、端末の中にあるデータを保護する。発見後はロックを解除することが可能だ。
通信環境そのもののセキュリティーレベルを高く保つ機能として、「Wi-Fiフィルタリング機能」を備える。モバイルワークでは、外出先で公衆無線LANを利用する場合がある。しかし、それらの中には、データを盗まれかねないセキュリティーレベルの低いものもある。それらに接続せずに、企業が認めたアクセスポイントのみに制限することができる。
今後、企業が生産性を高め、競争力を強化するには多様な働き方を社員に認める必要がある。働く場所もオフィスに限らず、幅広く認めるようにしなくてはならない。それに伴って、企業のIT資産もオフィス外に分散していくことになる。その管理をいかに効率的に、そして安価にできるか。工夫が問われている。
※1フレッツ 光ネクスト等の契約・料金が別途必要
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