ビジネスを加速させるワークスタイル(第15回)
似ているようで違う、法人向け光回線の選び方
公開日:2015.08.19
野沢温泉スキー場が無料Wi-Fiサービスを開始した。1台で広範なエリアをカバーできるエリクソンの屋外用無線LANを導入。スマホ用サイトやアプリとの連動で情報配信に活用している。
「今年は『携帯がつながらない』というクレームが一切なくなった。Wi-Fi利用者数も順調に伸びている」
ゲレンデ・コース数36、最長滑走距離1万mと日本屈指の規模を誇る野沢温泉スキー場。2005年の民営化後、その運営を担ってきた「株式会社野沢温泉」で取締役・総支配人を務める河野智春氏は、2014-15シーズンから開始した無料Wi-Fiサービスの効果に目を細める。
全国の観光地で公衆Wi-Fiの整備と、ICTを使った“おもてなし”を充実させようとする取り組みが進められているが、もちろんスキー場も例外ではない。近年はスキー・スノボ客もスマートフォンを使ってゲレンデや施設の情報を得たり、SNSに写真や動画をアップするなど、滑る以外の楽しみが広がってきているからだ。
野沢温泉もこれまで、スマホ向けサイトやアプリを充実させてゲレンデガイドや周辺施設案内等の情報提供に力を入れてきた。だが、トラフィックの急増によって肝心の足回りが弱体化していた。通信事業者もLTE基地局設備の増強を進めているが、それだけでは追いつかず、昨シーズンまでは何度か「通信量がパンクした」(河野氏)。
そこで昨季の終了後にWi-Fi設備への投資を決定。最も客が集中する山頂の「やまびこエリア」および「日影ゲレンデ」で、2014年12月7日のスキー場オープンとともに無料Wi-Fiサービスを開始した。
約3カ月で総アクセス数は2万5000を超え、延べ9000人が利用。トラフィックのオフロードによってLTEの品質も改善した。
当初、河野氏は「量販店で無線LANアクセスポイント(無線LAN AP)を買ってきて取り付ければよいと安易に考えていた」。だが、多くのスマホユーザーに高速かつ安定したインターネット接続を提供するには、同時接続可能な端末数が多く、かつ、広いエリアをカバーしながらアンテナ出力の小さなスマホの信号を受信できる性能が不可欠だ。また、冬季のスキー場という過酷な環境で動作する耐候性も求められる。
そこで、地元長野で通信設備施工を行うTOSYSが屋外用無線LAN APを提案。ソネットが国内総代理店を務めるエリクソン製の「BelAir20EO」の導入を決めた。
BelAir20EOは、前述の条件に合致するほか、電波を接続端末に集中して発するダイナミックビームフォーミングで干渉のない効率的な無線通信を行える特徴も持つ。また、5GHz帯電波を使って複数のBelAir20EOを中継してエリアを広げることも可能だ(端末接続に2.4GHz帯を使用)。
もう1つ、エリクソン独自の「UAM認証」機能によって、ユーザー認証が簡易にできるのも特徴だ。利用者は面倒なパスワード入力が不要で、SSIDをタップするだけでポータル画面(Web認証画面)が表示される。ポータルサイトには施設案内やイベント情報等のコンテンツを掲載し、利用者はそれぞれに隔離された(暗号化)状態でアクセスできる。野沢温泉側はログを管理し、時間帯別のアクセス数や使用端末などの利用状況も把握できる。
こうした利点を評価し、図表1のように2台のBelAir20EOで日影ゲレンデの大半をカバーしている。リフト券売場や飲食店が集まる「インフォメーション・センター」に設置した【AP1】は、指向性アンテナを使用して約600m先のメインゲレンデ最上部までWi-Fiエリア化。このAP1と5GHzで中継接続する【AP2】は、無指向性アンテナを使い、日影ゲレンデのベースエリアを広範囲にカバーしている。インターネットにはAP1からフレッツ光ネクストを経由して接続した。
また、山頂の「やまびこエリア」にもフレッツを開通しBelAir20EOを設置。多くの客が集中するエリアを優先して、計3台で無料Wi-Fiサービスをスタートした。
図表1 日影ゲレンデのアクセスポイント設置とWi-Fiエリア
図表2は、12月7日の開始後、1週間当たりの総アクセス数と利用者数を示したものだ。年末以降、1週当たり延べ1000人前後がコンスタントに利用していることがわかる。「できることなら、すべてのゲレンデをカバーしたい」と河野氏の評価は高い。来シーズンは、駐車場が隣接し、野沢温泉の“玄関口”とも言える長坂ゲレンデにもWi-Fiを拡張する計画だ。
図表2 アクセス数と利用者数の推移(1週間ごと)
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