小売り、飲食、サービスといった業種を問わず、中小規模の店舗にとって悩みのタネは集客だ。いかにコストを抑えて商圏の顧客にアピールできるか、手段を模索する経営者は多いはずだ。従来、商圏を絞った集客ツールとして活用されてきたのは、新聞の折り込みチラシ広告。配布する地域や数量が限定できて効率的だ。
しかし、新聞がスマートフォンやタブレットなどで見られるようになり、折り込みチラシ広告では情報が届かない層が増えている。そのような中で浮上してきているのが、パソコンやスマートフォン向けのインターネット広告である。
今、多くの家庭にはパソコンがある。通勤電車の中でスマートフォンを操作するシーンは当たり前。寸暇を惜しむように、友人にメールやSNSでメッセージを送ったり、ニュースやブログの記事を読んだり、ゲームをしたり、買い物をしたりしている。その前提となるのが、インターネットに接続されていることだ。インターネットに接続していれば、あらゆる情報にアクセスできる。
情報を提供する供給側の店舗・企業にも、顧客との結び付きを強化するためにWi-Fiを活用しようとする動きがある。
店舗側から見てWi-Fi利用環境を提供するメリットは2つある。1つめは、インターネットを使いたい顧客が来店してくれること。2つめは、店舗の情報をWi-Fi経由で顧客に発信できることだ。
現在、多くの大手飲食チェーンでは、来店者にWi-Fi利用環境を無料で提供している。そこに行けば無料でインターネットにつなげられるので、モバイル端末を利用している人にとってはありがたいサービスだ。SNSを利用したり、ネットサーフィンをしたりするために、Wi-Fi利用環境のある店を選ぶ人も多い。国内の日本人だけでなく、訪日外国人観光客もWi-Fiが使える店に集まる。Wi-Fi利用環境を提供するだけで、来店客が増える可能性がある。
2つめのメリットも大きい。店舗・企業にとってはWi-Fi利用環境を用意することで、顧客にさまざまなアプローチができるようになる。
最も典型的なのがカフェなどの飲食店での提供だ。顧客がログインした際に、自動的に店舗のWebサイトが開くように設定しておけば、割引クーポンを渡したり、お薦めメニューを紹介したりして、売り上げ増につなげることができる。“Wi-Fiがつながる”ということで、モバイル端末のユーザーがリピーターになってくれることも期待できる。
ほかにも、全国に数百店を展開する居酒屋チェーンで、Wi-Fi利用環境を活用して顧客にポイントがたまる仕組みを導入したケースがある。スマートフォンに公式アプリをダウンロードした顧客が来店すると、Wi-Fi経由でスマートフォンにプッシュ通知が届く。顧客がプッシュ通知を開いてアプリにチェックインをすると、ポイントがたまる。ある程度ポイントがたまると、懸賞に応募できるという仕掛けになっている。来店するとポイントがたまるので、顧客にとっては再来店するモチベーションになる。
集客の仕組みの中には、提供する店舗の業務負担が増加し、効果を打ち消してしまうケースも珍しくない。しかし、前述の居酒屋チェーンのWi-Fiを使った方式は、システムが自動的に公式アプリを立ち上げて、ポイントを付与する。店舗のオペレーションへの影響は少なく、メリットを享受しやすい。
中小規模の店舗もWi-Fiで集客できる
顧客の情報収集手段がインターネットにシフトしている今、インターネットと店舗を連動させる仕掛けをどう提供していくのかが、集客の大きなカギになる。FacebookやTwitterといったソーシャルメディアも活用したい。
専門スタッフがいない中小規模の店舗にとって、Wi-Fiを活用した集客への取り組みは敷居が高いのも事実だ。そういう場合には、通信事業者が提供する店舗向けのWi-Fiサービスを利用するのが便利だ。面倒な認証の仕組みや通信回線の運用まで任せられる。店舗のホームページや、地域ごとにPRする仕組みまで用意してくれる場合もある。
Wi-Fiの仕組みづくりはこうしたサービスを利用し、店舗側はホームページで提供するコンテンツや利用者のデータ分析などに力を入れるのが得策だろう。