地方ベンチャーを育てる仕組みを作る(第1回)東京だけですべての問題が解決できるわけじゃない

地域活性化

公開日:2015.08.18

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 ベンチャーブームが続いている。「早朝イベントでベンチャーと大企業をつなぐ」の連載では、毎週木曜日の早朝に開催されるベンチャーのプレゼンの場「Morning Pitch(モーニングピッチ)」がどのように生まれてきたかを聞いた。今回は、同イベントの仕掛け人であるトーマツベンチャーサポート事業統括本部長の斎藤祐馬氏に、地方ベンチャーに注目する理由を話してもらった。

―― このところは地方のベンチャー支援にも力を入れていらっしゃいます。なぜ今、地方なのでしょうか。

斎藤:ずっとベンチャーを支援してきて感じているのが、ベンチャーは力はあるのに、世の中での認知は低くてなかなかマスになりづらいところがあります。例えば最新のテクノロジーであるがゆえに、一部の人だけが関わっていることが多い。

 ただひと口にベンチャーと言っても、中身は様変わりしてきています。1990年代後半から2000年代前半にかけてITが世に出てきて、ITベンチャーというだけで投資が受けられるような時代もありました。その一方で未成熟であるがゆえにさまざまな失敗も見られました。特にライブドアショック後に金銭的なインセンティブがあまり見込めない状況で、わざわざ起業した人たちがここにきて数多く活躍しているのです。

 そこでは2010年代型と呼べるような、社会課題を解決しようというベンチャー企業が増えてきています。

―― なるほど、確かにそうかもしれない。

斎藤:社会課題への取り組みって、何か強い意志がないと続きません。お金も全然集まらず、マスにもなりづらい。今の日本の大きな課題の1つは少子高齢化だといわれています。いろいろな本によるとそもそも地方と都会では出生率が全然違うので、東京に人が集まれば集まるほど日本全体の人口が減少して地方も過疎化していくという。

 なぜ地方の若い人は東京に来るのかというと、地方に仕事がないわけではなく、面白い仕事がないからだと思うのです。もし地方に面白い仕事をどんどん生みだすことができれば、大枠で見ればそういう少子高齢化といったことにも対峙できるし、ベンチャーがもっと注目されると思うんです。

 そうした中で地方のベンチャーをきちんと支援していくことが、日本全体にとってもいいことだと思います。また、ベンチャーというものをもっと世の中に根付かせていきたいという僕自身の意志とも合致している。だから今、地方に目を向け始めたのです。

―― 地方で多いのは、新規事業の起業というよりは、独立開業というイメージがあります。チェーン店で働いていた経験を生かして、のれん分けのような形で飲食店を始めるといったケースはあると思います。しかし、社会的課題に向けて起業するような人は、まだ少ないという気もします。その辺りはどうなんでしょうか。

斎藤:起業環境といいますか、起業しやすい条件というものがあると思います。まずコミュニティーがあって実際に起業している人たちと身近に会えて、こういう生き方があるということを知らないと始められない。そこに触れて、そういう生き方に共感して、始めようとしたときに資金を供給してくれる、支援してくれる人がいる。そういう環境が必要なわけですよね。それが最も整っているのが東京なわけです。

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 地方には大きく2つの課題があります。1つは目線の問題。東京では一般的に売り上げ10億円のカベというものがあって、そこでよく企業の成長が止まるといわれています。ところが、例えば京都だと3億円とか、さらに地方だと1億円といわれている。これはまさに見ているマーケットの違いです。全国なのか、その地方なのか、その県だけなのか。

 この目線をどう引き上げていくのか。そのために我々は47都道府県で「ベンチャーサミット」を実施しています。農業やものづくり、フードなど産業テーマ別に開催して、少しでも起業家や、そういう生き方に触れてもらえる機会を増やそうという思いです。

 2つ目が、やはり支援者です。起業を経験した人や、優秀なプロフェッショナルは東京に一極集中しています。どうやって地方で支援者を生むか。いまトーマツベンチャーサポートは各地に23の活動拠点あり、そこのメンバーを育てるためのプログラムがあります。

 ベンチャーをどう支援していくのかについてのノウハウをパッケージ化して、それでメンバー全体のスキルアップを図っています。それをこれから公開して、全国の支援者のレベルを上げようという取り組みをやっていこうとしている最中です。

地方でも面白い仕事には人材が集まる…

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斎藤 祐馬

トーマツ ベンチャーサポート事業統括本部長 1983年愛媛県生まれ。慶應義塾大学を卒業後、2006年にトーマツに入社。2010年にトーマツ ベンチャーサポートを事実上立ち上げた。公認会計士でもある。

※トーマツ ベンチャーサポートは、2017年9月1日より「デロイト トーマツ ベンチャーサポート」に社名変更しました。

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