読者の中には、本格的にゴルフを学ぶ人はもちろん、健康維持の一環としてゴルフに親しむ人もおられることでしょう。私の運営するゴルフスクールでは、活動目的に「一人でも多くの人々に健康で豊かな人生を送っていただくこと」を掲げ、健康の維持・増進のための運動プログラム(ゴルフフィットネス)をお客さまに提供しています。
ゴルフは身体バランスがとても大切なスポーツですから、身体バランスを整えることは、ゴルフの上達にも健康維持にもつながります。インストラクターも単にスイング技術を教えるのではなく、豊富な知識と経験のもと、お客さまを健康に導くことを最大のミッションとして常に接しています。
このように、一口にゴルフスクールといっても、運営方針はさまざまです、それによって指導方法やインストラクターの質も異なります。前回(第11回)は、良いゴルフインストラクターを見極めるには体験レッスンが近道と紹介しました。もう一回り大きなフレームワークでゴルフスクールを選ぶポイントを説明しましょう。
立地や施設も大事だけど……やはり、まず「笑顔」を見よう
ゴルフスクールを選ぶ際、ご自宅や職場からの「近さ」で選ぶ人が圧倒的に多いようです。確かに「通いやすさ」は重要です。どんなに良いスクールでも、場所的に通うのが大変であれば長く続けるのは難しいでしょう。
どんな施設なのかも大切です。アウトドアの練習場、いわゆる「打ちっぱなし」なのか、インドア練習場なのか、それぞれメリットとデメリットがあります。アウトドアの場合、ネットまでの距離がどれくらいあるのか、バンカーやパッティング練習グリーンなどの付随設備があるかどうかも比較検討の対象です。インドアの場合、映像解析システムがあるか、シミュレーションが設置されているかも見ておくとよいでしょう。
こうした立地や施設といったハード面は、スクール選びの大切なポイントではありますが、分かりやすく比較しやすい項目です。一方、判断が難しいのがソフト面、つまり、インストラクターやスタッフの良しあしなどです。
私が考える良いスクール選びのポイント。その1つ目はスタッフの「笑顔」です。インストラクターをはじめ、受付スタッフやメンテナンススタッフなど、練習場で働くあらゆるスタッフが、皆笑顔で働いていれば、良いレッスンやサービスが、期待できます。
表情は「情を表す」と書くように、その人の人柄を表します。スタッフがやりがいを持ち、イキイキ楽しく仕事をしていれば、それは必ず表情となって表れます。そして、そのような職場は、仕事の質も高いはずです。スクールにおいても何より、皆が笑顔で対応してくれれば気持ちがいいですよね。このことは、ゴルフに限らずサービス業全般にもいえることでしょう。
スクールの雰囲気をつくる「情報共有」…
良いスクール選びの2つ目のポイント、それは「スタッフ間の連携」です。規模の大きな練習場になると、ゴルフショップやクラブ工房、飲食店が入っているところも少なくありません。例えば、ショップの店員にスクールのことを尋ねても、ちゃんと答えてくれるような練習場は、スタッフ間の連携が取れている証拠。それぞれのセクションのスタッフが、お互い情報を共有して仕事をしていると感じられます。
一方で、スクールのことはインストラクターに丸投げで、受付スタッフですらカリキュラムなどをきちんと説明できない練習場があるのも事実。通って気持ちの良いスクールとは、セクションの壁を越えて情報共有に熱心で、お客さまのためにスタッフが一丸となっているスクールと心得ておきましょう。
スクールの規模が大きくなるに連れ、1つのスクールに複数のインストラクターが在籍しているケースがほとんどです。彼ら在籍インストラクターが協調して仕事をしているか否かを知ることも、スクール選びの大切な指標になります。
残念なことに、同じスクールで働いているにもかかわらず、他のインストラクターのレッスン内容を否定したり、自分勝手なレッスンを展開したりと、互いにお客さまの取り合いをしているインストラクターが少なからず存在します。そのようなスクールでは、入会後、他のインストラクターのレッスンを受けにくいといった弊害が必ず起こり、お客さまにとっては不利益しか生みません。
気になるスクールがあったら、可能な限り、複数のインストラクターの体験レッスンを受けるようにしてください。インストラクターの連携が取れているスクールであれば、お客さま自身の熟練度に合わせた、お客さまのためのコーチングを感じ取ることができるはずです。
掲示板で分かる「お客さま志向」
スクール選びの3つ目のポイント、それは掲示板をチェックすることです。スクールの掲示板が、イベントを告知するポスターでにぎわっているスクールは、良いスクールである可能性が高いでしょう。コースレッスンといった課外レッスン、コンペのような競い合う場、セミナーなどの学べる場、○○大会のような楽しめる場、そして懇親会などレッスンを受けている者同士が集える場など、さまざまなイベントが告知されているスクールは、「お客さまに喜んでいただきたい」という強い思いにあふれていると見てよいでしょう。
お客さまに対し、ただルーティンワーク的にレッスンをしているだけのスクールでは到底イベントなど打てません。ですから、イベントの多いスクールは「お客さま志向」が高く、さまざまなことにチャレンジしているスクールといえるわけです。
「企業姿勢」から長く通えるスクールを選ぶ
スクール選びのポイントの最後。実はこれが最も重要なのですが、それはスクールの「売り」や「特徴」から、長く通えるスクールであるか否かを見極めるということです。売りや特徴とは、他のスクールとの差別化要素ですから、言い換えると、スクールを経営している会社の「理念」や「ビジョン」といった企業姿勢でスクールを選ぶということになります。
例えば、私のスクールではゴルフインストラクターを「幸せゴルフサポーター」と呼んでいますが、これは会社理念『-私たちの理念-ゴルフを通じて、より多くの人々に健康で豊かな人生の喜びを、そして地域社会の発展と、ゴルフ界の発展に貢献します。また、そのことを通じて、我々は誇りとやりがいを持ち、自身の向上と、協力者との共栄を目指します。』に基づくことです。ですから「幸せゴルフサポーター」は、フィットネスのインストラクターに負けないくらい解剖学や生体力学について学んでいて、このことが冒頭に紹介したゴルフフィットネスとともに、スクールの売りになっています。
企業姿勢を明らかにすることは業種、業態を問わず、すべての会社運営における共通の原理原則でしょう。どのような理念を掲げるかは事業によりますが、「地域社会のため」「地元の人々のため」「業界の発展のため」といった理念を掲げ、ブレない経営をしている会社は、それがしっかりと売りや特徴として表れるものです。
多くの企業は、理念やビジョンを明文化し、事務所に掲げたり、毎朝朝礼で唱和したりしますが、それらはお客さまからは見えません。ですから、その企業が提供する商品やサービスの売りや特徴から企業姿勢を推し量ることが、継続的に付き合っていけるスクールかどうかの決め手になります。
以上のゴルフスクール選びのチェックポイントをまとめると次のようになります。
(1)従業員が皆笑顔で楽しく、イキイキと仕事をしているか。
(2)従業員同士が連携し、情報共有ができているか。
(3)お客さま志向が高く、色々なことにチャレンジしているか。
(4)理念やビジョンを掲げブレない経営をし、売りや特徴が明確か。
いかがですか?お客さま目線で間違いのないゴルフスクールに出会うための指針をまとめてみました。店舗商売をされている企業にとっても通じる内容かと思います。顧客パフォーマンスに優れた店舗づくりの参考にしてください。