できるビジネスマンになるには、「虫の目」「鳥の目」「魚の目」の合計3つの目を持たねばならないといわれています。社員研修などで学ばれた方も少なくないのではないでしょうか。そこで今回は、視点を変えてこれら3つの目をゴルフにどう生かせばよいかを考えてみたいと思います。
ビジネスに必要な3つの目を改めて述べておくと、「虫の目」とは、ミクロの視点でさまざまな角度から、細部を注意深く見る目のことです。「鳥の目」とは、高い所から俯瞰(ふかん)し、広い視野で全体を見渡す目のことで、前回のゴルフエッセー「全体最適を考えればビジネスもゴルフもうまくいく」でも少し触れました。「魚の目」とは、時代の流れや変化、トレンドを水の流れをつかむように敏感に感じる目のことです。この3つの目を持つことがビジネスにおいてはとても大切であるというわけです。
虫の目でより細かな情報収集を
まずは虫の目、ミクロの視点です。
ゴルフにおいて、スコアメークの要となるのがグリーン上のパッティングです。ティーショットは多少曲がっても、次のショットが打てる場所であれば、グリーンオンするまでに打数をリカバーすることも可能です。しかしパッティングは、ボールがカップに入らなければ即1打プラスになってしまい、リカバーのしようがありません。ゴルフをされる方ほど、パッティングの重要性を理解されていることでしょう。
パッティングの良しあしは、カップまでのラインを正確に読むことにかかっています。ラインが正しく読めるか否かで、パッティングの出来が9割方決まってしまうといっても過言ではありません。その大切なグリーン上でラインを読む作業では、グリーンの傾斜や芝目などを細かく観察します。その際求められるのが、まさに虫の目です。
パッティング以外でも、ゴルフでは多くのシーンで虫の目が求められます。例えば、クラブ選択をする際、打ちたい所までの距離や高低差、刻一刻と変わる風の状態などを、虫の目を駆使してあらゆる角度から情報収集し、打つクラブを判断しなければなりません。
また、長く芝が伸びているラフからのショットを余儀なくされた際、芝の深さや密集度、生えている方向などをチェックし、最適なクラブと打ち方を決断しなければなりません。ここでも虫の目が求められます。判断や決断を下すため、必要な情報を正確に収集する観察眼(虫の目)は、ゴルフには必要不可欠な目といえるでしょう。
コース戦略は鳥の目で…
続いて鳥の目、マクロの視点です。
全体を見通す鳥の目が求められるのは、そのコースをどう攻めるか、いわゆる「コース戦略」を練るときです。コースのレイアウトを鳥瞰(ちょうかん)図で眺め、自分の飛距離や球筋のクセを加味してグリーン上のピンポジションから逆算して攻めるルートを決めていきます。
例えば、グリーン右手前に大きくて深いバンカーがあるとします。右方向から狙うと、その大きなバンカーを越える形でグリーンを狙わなければならず、バンカーに落とすリスクが高まります。安全圏からグリーンを狙うためには、必然的にフェアウェイの左サイドを狙って打つべきだということになります。しかし、狙っていても、思った所にボールが飛ばないことはよくあります。ボールが飛んだ先の傾斜や木の高さ、あるいは風向きなども考慮して、その地点から鳥の目をもって、ピンまでの攻略ルートを再確認しなければなりません。
鳥の目を鍛えるためには、ホールごとのレイアウトを鳥瞰図で眺め、そのホールの全体像を把握した上でプレーに臨むといいでしょう。今や多くのゴルフ場が、ホールごとの攻略のポイントを、レイアウト図と共にネット上で公開しています。ぜひ事前の参考にしてください。
虫の目、鳥の目を生かす魚の目
最後に魚の目、流れを察知する目です。ゴルフでは大切な2つの流れを察知しなければなりません。
1つは、ゲームの流れです。通常ゴルフは1ラウンド18ホールでスコアを競います。ホールごとの難易度や得手不得手、さらに調子の波を加味し、プレーヤー各自がホールごとに目標スコアを決めていきます。
例えば、「朝のホール1~3番はまだリズムに乗れていないからボギーで御の字、中盤の◎番と△番は得意なホールだからパーを取りに行き、距離のある◆番はダブルボギーもやむなし……」といった具合です。そして18ホールトータルで目標スコアがクリアできるよう、18ホール通しての想定ストーリーを作っておくわけです。ゲームを進めていくうちにこのストーリーは、その日の実情に合わせて、次々と変更していかなければなりません。
「今日はいつもより少しドライバーが飛ばない」「今日はパッティングのフィーリングがいまいち」。当日の調子と、それによるスコアによって、ストーリーはまるで川の流れが変化するように、刻々と変わっていきます。その中で、少しでも良いスコアを狙うために、その流れの変化をつかむ魚の目が求められます。
2つ目は、プレーの進行です。同伴プレーヤーの動きを鑑みながら、今自分がすべき行動を決め、お互いがスロープレーにならないよう計らい、プレーを進めていきます。
例えば、同伴プレーヤーが今まさに打とうとしていたら、その人のプレーの妨げにならぬよう、止まって静かに見守ります。いつ何をすべきかは、同伴プレーヤー全員の動きを把握した上でプレーの進行をつかみ、今すべき行動を判断していかなければならないのです。この流れをつかむ目も魚の目です。
この魚の目は、スロープレー防止の観点から大切ですが、同時にスコアアップの観点からもとても大切です。なぜなら、プレーの進行の流れをつかむことで、自分のプレーのための時間を確保することができるからです。同伴プレーヤーが動いているときこそ、鳥の目で全体を見渡し、残りの距離や風の状況、ボールのライなど、虫の目を駆使して情報収集するための時間です。
魚の目でゲームの流れやプレーの進行を把握できているからこそ、目標を俯瞰して見る鳥の目と、細部を注意深く見る虫の目に余裕が生まれるというわけです。
虫の目、鳥の目、魚の目という3つの目をゴルフで養いつつ、ビジネスで鍛えた3つの目をゴルフにまた生かす。お互いの相乗効果でゴルフ、ビジネス共に向上していきましょう。