ヤーデージブックは、トーナメントの主催者が参加選手に配るものと、市販されているもの(※)があります。前者には、トーナメント期間中、毎日変更されるピンポジションが書かれています。ピンポジションは、トーナメントで戦うためにとても重要な情報です。後者には、排水溝やスプリンクラーといった人工物からの距離や、フェアウェイの起伏や高低差といった変化することのない細かな情報が、正確に記載されています。
プロ選手は、自身が練習ラウンドなどで得られた情報をヤーデージブックにメモ書きして、活用しています。どのような情報を書き加えているのかは選手によってまちまちです。例えば「フェアウェイは一見狭く見えるが実際は広い」と不安を払拭する内容や、「グリーン右手前のバンカーは深くて難しいが、セカンド地点からは見えないので要注意」など、事細かに書き込む選手がいる一方で、狙い所や危険地帯を大ざっぱに書き込むだけという選手もいます。いずれにせよ、この自分なりにメモを取っておくという行為はとても重要です。今回は、メモを取ることの効能について考えてみましょう。
プロゴルファーが、トーナメントで良い成績を残すために、入手したヤーデージブックにあらゆる情報をメモする必要性は理解できると思います。一般のアマチュアゴルファーにとっても、ラウンドの際、メモを取る習慣を持つことは良いことです。では、どんな内容を書けばいいと思いますか。…
アベレージゴルファー(ラウンド平均100くらいが目安のゴルファー)だと、わざわざ市販のヤーデージブックを購入するケースは多くないと思います。よってメモを書き込むのに活用するのは打数を記録するスコアカードです。
メモする内容は、ラウンドの記録です。例えば「1番ホールのティーショットをドライバーでフェアウェイの左サイド残り140ヤードの地点に打った。そこからの第2打を7番アイアンで打ち、グリーン右手前のバンカーに入れた」といった場合、このような情報を文章で書き込むのは手間がかかりますし、小さなスコアカードには書き切れません。そこで、分かりやすいように記号化します。先の例ですと、「①1W→F左残140」、「②7I→G右B」などと書き込むわけです。
余裕があれば、実際に打ったショットだけでなく「フェアウェイ右サイドにあるバンカーは自分の飛距離だとちょうど入るので要注意」のような情報も、上手に記号化して書き込んでください。「F右Bキケン!」とでも書いておけば分かるでしょう。このように、ラウンドの記録を残しておくと、次に同じコースを回るときの手がかりになります。
メモの振り返りは成長を促す
プロゴルファーがヤーデージブックにメモ書きする第1の目的は、次にコースを回る際の戦略立案や判断に活用することです。一方、アマチュアの場合は、自分のゴルフを振り返り、レベルアップを図ることを考えましょう。スコアカードにメモしたラウンド記録を書きっぱなしにせず、その日のうちに再確認しましょう。今日のプレーを振り返ることで問題点を整理することができ、上達につながるからです。
ラウンド中は気付かないことでも、家に帰って冷静に考えると分かることもあります。あの時、ミスを取り返そうと慌ててフェアウェイウッドでグリーンオンを狙ってしまったが、一度グリーン手前の花道に刻むべきだったな……というようにです。
初心者は、プレー中は焦ってバタバタとしてしまうケースが少なくありません。しかし、家に帰ってホッと一息つけば、己のプレーを冷静に、かつ客観的に振り返ることができます。上達には、この時の「思い出し」が、とても重要なのです。正確に思い出せるのもメモを取っているからこそです。メモの効能の1つといえるでしょう。
ラウンドを振り返ることは、よい脳トレになります。脳は、覚えた情報を、脳内の「海馬」という部位に一時保存します。これはあくまで一時保存で、その保存期間は約3週間といわれています。記憶が一時保存されているうちに、繰り返し反復すると、記憶力の強化につながり、脳は活性化します。ぜひラウンドメモを使って、その日のラウンドを1度は思い出すようにしましょう。記憶が整理できる3日以内に行うのが効果的です。
メモを残しておくと、半年後、1年後に同じコースをラウンドしたときには自分の実力の変化を測ることもできます。「以前は、○番のショートホールは5番で打っていたけど、今は7番で届くようになったなぁ……」のようにです。たとえ思うように上達していなかったとしても、次のラウンドまでの課題を再確認できたのですから、レベルアップにつながります。
メモを取れば信頼をも得られる
自分で実際に行った経験は、とても貴重なものです。その貴重な経験を、記憶が薄れると同時になかったものにしてしまうのは、非常にもったいない話です。経験を有益な情報として活用するために、メモを取るクセを付けましょう。
メモを取ることは経験を記録することです。メモをチェックすることは客観的な気付きにつながり、記憶の整理を促します。そして、記憶を整理することで、脳も活性化します。メモを残せば、成長を実感することもできます。成長が実感できればモチベーションも上がり、さらに成長を促します。これら、メモの効能はビジネスでも全く同じです。
ビジネスシーンにおいて、相手の話を聞きながらメモを取るという行為は信頼を得ることにもつながります。なぜなら、相手の話に興味を持ってきちんと聞いているという意思表示になるからです。
ちなみに、私はメモ用のノートを常に持ち歩いています。ノートがかばんの中にあってすぐに取り出せない場合は、スマホのメモ機能を活用します。ただし、相手の話をメモするときは、スマホではなく必ず紙のノートとペンを使うようにしています。人の話を聞きながらスマホをいじっていると思われ、かえって印象を悪くしてしまうからです。
ゴルフでもビジネスでも、メモを取ることはこのように多くの効能をもたらします。ぜひとも実践することをお勧めします。