近ごろの政治や経済のニュースを見ていると、国内も海外もなんだかなぁとため息ばかり出ませんか。例えば議論の場であるはずの国会が議論を放棄してしまっては、存在理由が不明確になってしまいます。問題が発生した際にそもそも原点は何か、本筋は何かと常に意識しないと、道を見失うことが往々にあります。ゴルフも例外ではありません。
ゴルフは、本質を忘れてしまってプレーに臨むと途端にスコアを崩してしまいます。コースに出ていて、そうしたゴルファーを多く見かけます。本質さえ見失わなければ、ゴルフはもっと易しくなりますし、もっと良いスコアで回れるはずなのです。今回は、ゴルフの本質について考えてみたいと思います。
ゴルフの本質とは?
ゴルフとは、所定のコースにおいてクラブを使ってボールを打ち、いかに少ない打数でカップに入れるかを競う競技です。「少ない打数でカップに入れる」「目的の場所にボールを運ぶ」……この2つ、つまり結果とプロセスこそがゴルフの本質です。
ドラコン(ドライビングコンテスト)のように飛距離を競う大会もありますが、ゴルフ競技は、そもそもナイスショットや飛距離を競うものではありませんし、スイングのキレイさを競うものでもありません。この本質を忘れ、ショットの良しあしや飛距離ばかりを求めてプレーしている人が、とても多いのではないでしょうか?以下の実例に心当たりはありませんか?
●ナイスショットが打てないと嘆く人
ボールはフェアウェイの良い所に運べているにもかかわらず、「今のはチョット当たりが悪いなぁ」「少し芝をかんだなぁ」と、100点満点のショットでなければ気が済まない。
――満足できなかったとしても、良い位置に付けたことを喜ぶべきです。理想のショットを打てるほうがまれなのですから。
●結果オーライを悔しがったり、恥ずかしがったりする人
ボールの上をたたく(トップ)などのミスショットをしたにもかかわらず、ボールが転がって運よくグリーンにオンできたとき、「もっとちゃんと打てていれば」などと言い訳をする。
――少ない打数でカップに入れるため、目標とする場所にボールを運ぶというゴルフの目的からすれば、結果オーライは文字通り、オールライト(良い/問題ない)なのです。悔しがったり恥ずかしがったりする必要はないでしょう。
●ナイスショットが打てたことだけに満足する人…
自分でも納得のいく素晴らしいショットが打てたと思った瞬間、突然風向きが変わり、ボールはグリーンをオーバーしてしまった。ところが、ナイスショットが打てたといってその余韻にひたっている。
――本来は、目的の場所にボールを運べなかったのですから、悔しがらなければならない状況です。本人が満足しているので良いといえば良いのですが、ゴルフという競技の本質からいえば、これもまたおかしな話です。100ヤードを打とうとして120ヤード飛んでしまったら、これは“ミス”です。ミスをミスとして捉えるからこそ人は改善しようと努力をし、その結果上達していきます。ミスをミスとして捉えられない人は、上達は難しいでしょう。
●ボールが曲がることを「良くないこと」と決めつけている人
練習でスライスばかり打っているのに、プレー中でも「何としてもスライスを直さなきゃ」とスイング修正に躍起になっている。
――この人は、フックはまず出ないわけですから、見方を変えればスイングは「安定している」といえます。右打ちの人がスライスすると、ボールは右に曲がるわけですから、そのことを加味して本来の狙い所より左を狙えばよいのです。ボールが曲がること自体は決して悪いことではなく、そのことをうまく利用すれば強みになります。良くないのはボールが曲がることではなく、曲がってしまうという自身の持ち味を考慮しない「戦略性の無さ」であることを理解しましょう。
●使うクラブの番手に“見え”を張る人
150ヤード、ショートホールのティーショット。同伴競技者が6番アイアンを手にしているのを見て、自分もついアイアンを手に。自分はユーティリティーを使いたいと本音では思いつつ、相手がライバルだと“見え”を張ってしまう。
――これはほとんどのケースでショートし、手前のバンカーに落としてしまうでしょう。ゴルフは、飛距離や番手を競い合っているのではありません。ライバルに“見え”を張りスコアを落としていては、本末転倒です。
結果とプロセスにこそ意味がある
もちろん、飛距離や良いショットを打つことを追究し、努力することは間違いではありません。しかし、これまで挙げた例のように、枝葉に一喜一憂していてはスコアの改善につながらないのです。
「少ない打数でカップに入れる」「目的の場所にボールを運ぶ」というゴルフの本質からすれば、たとえゴロであろうが曲がろうが、はたまた人より大きい番手で打とうが、目的の場所にボールを運びさえすれば、良いスコアを出すことは十分可能なのです。
一流のビジネスパーソンがゴルフにのめり込む理由
ゴルフは、その本質さえ忘れなければ、誰でも楽しめるスポーツです。そしてそれは、ビジネスでも同じです。本質を忘れてしまってはビジネスになりません。ビジネスにおける本質は、次の3つだと私は考えています。
●世の中の役に立つビジネスか?(社会性)
●「価格<価値」の原則にのっとった上で利益が上げられるか?(収益性)
●そのビジネスを通じて人は成長できるか?(教育性)
企業ですから、利益を上げることは必要です。しかし、そのために3つの本質(社会性・収益性・教育性)を見失っては本末転倒な結果を招いてしまうでしょう。
利益を追求するあまり、過剰なコスト削減を行った結果、安全性が損なわれ、消費者の信頼を失い、売り上げが落ちた。販売を強化するため、営業担当者の仕事量を増やしたところ社員が疲弊し、離職者が続出。結果、営業力が落ちた。これらは、残念なことに本質を見失ったために起きた失敗例といえます。
ゴルフもビジネスも、本質を見失うことなく努力すれば、良い結果が得られます。そして、そのことを通じて人も企業も成長していきます。一流のビジネスパーソンの多くがこぞってゴルフにのめり込むのは、そんなところに理由があるのではないでしょうか?