昨年、ゴルフクラブやボールなどのゴルフ用品ビジネスからナイキが撤退するという残念なニュースもありましたが、国内のゴルフ用品出荷市場は――2015年が前年比103.2%、2016年は前年比101.8%で2年連続のプラス予測となっており、ゴルフ用品市場はまだまだ元気なのです※。
現在進行形の人口縮小に対し、量より質、商品単価をいかに上げるかというのは日本のあらゆる産業における課題だと思いますが、ゴルフ用品の市場もまたしかり。細分化するお客さまニーズに合わせて、クラブの種類も増えているというのが現状なのでしょう。
ドライバーは、ショートホールを除くホールの1打目、ティーショットで使います。したがって、最も飛距離が出せるよう、シャフトが長く、ヘッドも大きく設計されています。また、ティーアップして打つことを前提に設計されており、これもヘッドが大きく作られている理由の1つです。シャフトが長くヘッドが大きいが故に、距離が出る分、曲がりやすいという特性があります。初心者がドライバーを選ぶ際に悩むのは、飛距離もしくは正確性のどちらかにこだわっているからではないでしょうか。
ドライバー選びで大切なのはまず「重量」です。重すぎるドライバーは振り切ることができず、十分なヘッドスピードを出すことができません。一方、軽過ぎてもヘッドの重さを感じることができず、スイングのタイミングが合わなくなります。体力に応じた重さのドライバーを選びましょう。
試しに、ドライバーを逆さにし、ネック(クラブヘッドとシャフトの付け根の部分、ホーゼルともいう)側を持って振ってみてください。先端が軽過ぎて、思うように振れないことが分かると思います。クラブをバランスよく振るには、体力に応じた適度な重さが必要なのです。…
最適な重さの目安は個人差がありますが、一般的な男性でしたら300グラム前後。若くてパワーのある人であれば305グラム以上、女性や体力に自信のない方は300グラム以下のものを選ぶとよいでしょう。
重量の次に大切なスペックが、ロフトの角度とシャフトの硬さです。ロフトとは、クラブフェースの角度のこと。角度が大きいほどフェースは上を向き、ボールは上がりやすくなります。ロフトとシャフトのどちらも、ボールの弾道と飛距離に大きく影響を与えます。
ロフト角とシャフトの硬さで吟味する
ロフト角は、9度、10.5度などと、クラブのモデルごとにあらかじめいくつか用意されています。角度が大きいほどボールは高く上がりますし、角度が小さいと低くなります。初心者はボールが上がらないケースが多いので、11度以上がオススメです。
ボールの弾道は低くても十分な飛距離は望めませんし、高過ぎてもかえって距離が落ちてしまいます。ボールの弾道はその人のヘッドスピード(振りの速さ)やスイングのクセによって変わってきます。自分に最適なロフト角は、ショップの店員に相談するか、あなたのスイングのクセを知っているインストラクターがいれば、その人に相談するとよいでしょう。
シャフトの硬さも重要です。一見シャフトは固い棒のようですが、ビュンと勢いよく振るとムチのように“しなり”ます。この“しなり”が重要で、しなったシャフトが元に戻ろうとする力を利用して飛ばしのパワーを高めています。
しなりが足りないと飛ばしのパワーが十分生まれませんが、しなり過ぎてもいけません。シャフトがしなり過ぎると、しなりの戻りが遅くなり、ボールに対するインパクトのタイミングがズレてしまい、飛ばしのパワーが十分生まれないのです。ですから、適度にしなるシャフトを選ばなければなりません。
シャフトの硬さはフレックスといい、L(レディース)→A(アベレージ)→R(レギュラー)→SR(スティッフ・レギュラー)→S(スティッフ)→X(エキストラ)とレベルが分けられています。Lが一番軟らかく、Xが一番硬いです。一般的には、男性はRを、女性はLを選びます。LとRの中間のAはパワーのある女性かシニアの男性向けです。Rより硬いのがSRやSで、これらはハードヒッター向け、Xはプロ向けとなります。
最適なシャフトのフレックスはヘッドスピードを目安に選びます。ドライバーのヘッドスピードとフレックスとの関係を以下表にまとめました。参考にしてください。
また、シャフトのフレックスはヘッドスピードだけでなく、スイングテンポの速い遅いも関係しています。スイングテンポが速い人は目安よりも硬めのシャフトを、遅めの人は軟らかめのシャフトを選ぶとよいでしょう。店内に試打ができるゴルフショップがあれば、そこでヘッドスピードやボールの打ち出し角度、およその飛距離などを測ってくれます。いろいろなクラブを試してみて、ベストなクラブをチョイスしてください。
何よりも大事な「思い入れ」
重さ、ロフト角、シャフトの硬さといったスペックを基にドライバーを選ぶポイントをお伝えしましたが、ドライバーを選ぶ要素は他にもあります。
ドライバーはクラブメーカーにとって主力商品ですから、各メーカーは力を入れてさまざまなモデルを開発しています。例えば、スライスしにくく設計されているものや、逆にフックしにくいもの、飛距離重視で作られているものや方向性重視のもの、打球感や打球音といったフィーリングにこだわって作られているモデルなどまであります。あなたが中級者以上なら、ドライバーにどの様な性能を求めているかを明確にしておくことも大切です。
そして、スペックや性能といった機能性と同じかそれ以上に重要なのが、見た目やデザイン性です。これはドライバーに限らずクラブ全般に通じることですが、クラブはゴルファーにとって常にゲームを共にする大切なパートナーです。「構えたときに安心感がある」「好きなプロが使っているモデルである」「モデル名やロゴマークが好き」「色やデザインが好き」といった思い入れをクラブ選びに反映させることは、クラブをパートナーとして選ぶ大事なプロセスといえます。
満足度の高いクラブを手にすることで、よりゴルフが楽しくなることでしょう。
以前、お客さまから「このドライバー、自分に合っていますか?」と相談されたことがあります。その方は学生時代にアメフトをやっていて筋骨隆々、年齢も若くパワーヒッターであったため、本来はSシャフトが合うのですが、お持ちになったのはRシャフト。内心、この方にはシャフトが軟らかいなと思いましたが、そのクラブは亡くなったお父さまの形見だったのです。私は「大丈夫ですよ。大切に使ってあげてください。」と答えました。
この方は当然プロではありませんし、競技志向のゴルフがやりたいわけでもありません。ゴルフを楽しみ、ゴルフによって心豊かに過ごしていただければそれでよいのです。今ごろ、ゴルフが好きだったお父さまの魂と一緒に、ゴルフを楽しんでいらっしゃることでしょう。
パフォーマンスやモチベーションを最大限に引き出すためには、機能や性能より「思い入れ」が最も大切です。それは、ゴルフもビジネスも同じだと思うのです。