早いもので、今年も年の瀬を迎えます。1年の締めくくりこそ、心を落ち着かせて挑みたいものです。クラブ選びのポイントをシリーズでお伝えしている今回は、ついにホールの締めくくり、パッティングでなくてはならないクラブ、「パター」についてお話しします。
ゴルフのプレーは、空中戦と地上戦とに大きく分かれます。空中戦はボールを空中に飛ばして目的地に運ぶ戦法。一方の地上戦は、ボールを地面に転がして攻めていく戦法です。この地上戦に特化しているともいうべきクラブがパターです。
パターはボールを転がすためのクラブですので、14本のクラブのうち、一番ロフト角が立っています(地面に対し、より垂直に近くなっている)。一見パターにはロフト角がないように見えますが、実は3度~6度ぐらいのロフト角が付いています。ボールの転がりを良くするためのロフト角なのですが、なぜロフト角が付いているのかは記事の後半で……。
パターは、主にグリーン上で使います。が、決してグリーン専用というわけではありません。ボールを転がす方が有利な場合は、グリーン以外の場所からも積極的に使っていくとよいでしょう。特にこれから冬場にかけて、芝生が枯れて薄くなるので、“転がし”は有効な武器になることを覚えておいてください。
パター選びは自分のストロークを知ることから
パターの形状はとてもバラエティーに富んでいます。ヘッドやネック、グリップに至るまでさまざまな形状があります。そんなパター選びで最も大切なのが「フィーリング」です。構えたときの安心感や方向の合わせやすさなど、言葉では表すのが難しい独特の感性が大事になります。相性とでもいいましょうか、恋人や結婚相手を選ぶときの気持ちに近いかもしれません。
パターの形状はさまざまなので相性がポイントに。写真左から、キャロウェイ「オデッセイ WHITE HOT RX」(マレット型)、PING「SIGMA G ANSER」(ピン型)、PING「SIGMA G TESS」(L型)、アクシネット「BULLS EYE STANDARD」(T型)
しかし、膨大なパターの種類の中から、自分に合う1本をフィーリングだけで探し当てるのは至難の業といえるでしょう。大まかにいえば、プレーヤーのストローク(ボールを打つ目的でクラブを前方に動かす動作)のタイプによって、パターのタイプも分かれます。これからタイプ別に説明しますので、「フィーリング」の精度を上げるためにも、ぜひ押さえておきましょう。
パッティングのストロークには、大きく分けて2つのタイプがあります。「ストレートストローク」と「アークストローク」です。前者はパターを振る動作がブランコのように動くタイプで、上から見たときにパターのヘッドが直線的な軌道になります。直線的に動くので「ストレート」と表現しています。後者は車のワイパーのように動くタイプで、上から見たとき円弧(アーク)を描くようなヘッドの軌道になります。アイアンなど他のクラブと同じような動きといえばお分かりになるでしょうか。
どちらのタイプが向いているのかは、体形や構え方のクセ、肩周辺の筋肉の付き方などによって変わります。人それぞれで、どちらが良いとか悪いということはありません。まずは現時点で自分のストロークがどちらのタイプなのか、畳の縁やフローリングの線など、真っすぐなモノを目安にパターを振ってみましょう。なお、ゴルフ初心者で、自分のストロークが安定していないという方は、まずはストレートストロークとしてパターを選んでみてください。
フィーリングに合うパターのタイプは?…
次にパターのタイプを知っておきましょう。パターには大別して、「フェイスバランス」と「ノンフェイスバランス」、そして「カウンターバランス」の3つのタイプがあります。パターのヘッドを浮かせた状態で置いたとき、フェイス(打面)がどこを向くかでタイプを見分けることができます。写真のようにシャフトを寝かせて置くと分かりやすくなります。
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写真左からフェイスバランス、ノンフェイスバランス、カウンターバランス[/caption]
【1】フェイスバランス
フェイスが真上(地面に対して水平)を向くタイプです。マレット型などがこの代表です。
【2】ノンフェイスバランス
ヘッドの先端(トゥ側)が下になり、フェイス面が斜め上を向くタイプです。ピン型などがこの代表です。
【3】カウンターバランス
ヘッドの先端が真下を向き、フェイス面が地面に対して垂直になるタイプです。L字型やT字型がこの代表です。最近はこのタイプも、フェイスバランスではないという意味でノンフェイスバランスと表現しているメーカーもあります。
前に説明したパッティングのストロークタイプによって、3つのタイプで選ぶべきパターが違ってきます。ストレートストロークの方は、【1】のフェイスバランスがより安定して振ることができます。アークストロークの方は【3】のカウンターバランスがオススメです。【2】のノンフェイスバランスはどちらのストロークタイプでも対応できます。ストレートストロークで練習した方がよい初心者は、フェイスバランスのパターを選びましょう。
締めくくりを決める秘訣とは?
空中戦では打球の高さはとても重要です。打球の高さによって落ちてからの“転がり”に影響するからです。しかし、地上戦であるパッティングは、高さは関係ありません。意識するのは方向と距離感だけです。ところが、実はパッティングにもキャリー(打ったボールが空中を飛び地面に落ちるまでの距離)があるのをご存じでしょうか?
芝が短く刈り込んであるグリーン上であっても、決して板の上にボールがあるわけではなく、わずかですがボールは芝に沈んでいます。ですからボールを打ち出す際、少しジャンプさせると転がりが良くなります。冒頭で、パターにもロフト角が存在し、このロフト角のおかげで転がりが良くなると述べました。その理由は、キャリーのためというわけです。パッティングでは、一見ボールが最初からゴロゴロと地を這っているように見えますが、ちゃんとキャリーとランがあるということです。
トッププロになると、パッティングでもキャリーとランを計算してプレーすると聞きますが、一般レベル、特に初心者は意識しなくてよいでしょう。意識しなくてもパターのロフト角が、その役割を果たしてくれます。それよりも、落ち着いてボールを打ち出す「方向」と「距離感」だけに集中しましょう。
ホールにおける目標はカップです。パッティングは目標達成の詰めの作業です。いかにして目標を達成するか、そのプロセスにおいて、パッティングは極めて重要です。パッティングではラインを読み、打つ方向と強さ加減(距離感)を決めたら、そのことに集中できるかが成功のカギとなります。「このパットを外したらダボになっちゃう……」とか「これが入れば100が切れる」など、結果を気にするとまず間違いなく入りません。
パットでカップに入る入らないは自分次第です。同伴競技者や外部環境は関係ありません。目的の方向に、目的の距離感でボールを打ち出すことに、いかに集中できるかが勝負の分かれ目です。
そして、これはビジネスでも全く同じです。「この契約を取らなければ年次目標をクリアできない」とか、「あと○○円売らければ上司に叱られる……」など、結果だけに心が奪われると、かえって不正を招いたりするなど経営に悪影響を与えかねません。結果は気にせず、目の前のお客さまに真摯に向き合い、日々やるべき事にベストを尽くす。これが一年の締めくくりを実りあるものにする秘訣のように思います。今年もあと数日、浮き足立つことなくやれることに集中しましょう。