暑い日が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか?ゴルフスクールにお見えになるお客さまの中には、あまりの暑さでラウンドの予定を中止したという声が聞かれます。「ゴルフに行って熱中症で倒れたら大変」との考えからでしょう。体調に自信のない方はそれもやむなしだとは思いますが、ビジネスパーソンの場合、中止にしたくてもできないケースもあるでしょう。
ゴルフは季節を問わず楽しめるスポーツです。とはいえ、最近の夏の暑さは尋常ではありません。そこで今回は、夏のゴルフにおける注意点をお伝えしたいと思います。
知っておくと便利な暑さ対策グッズ
夏のゴルフで気を付けなければならないポイントは、暑さ対策と水分補給です。まずは暑さ対策に有効なグッズをいくつかご紹介しましょう。
夏場のゴルフを楽しむための最新グッズがいっぱい(撮影場所:ヴィクトリアゴルフ藤沢川名店)
・機能性ウエア
機能性ウエアとは、通気性、吸水性、速乾性、放熱性に優れたウエアをいいます。汗をかいてウエアが体に張り付いてしまうと体を動かしにくくなり、スイングに支障を来してしまいます。そして何より不快です。機能性ウエアですと、汗をかいてもベトつかず、サラッとした着心地で快適にプレーができます。価格は少々高めなこともありますが、機能性ウエアで夏を乗り切りましょう。ゴルフウエアだけでなく、アンダーウエアも機能性の高い製品が販売されています。併せて着用するとより効果的です。
ゴルフウエアだけでなくアンダーウエアも機能性に優れた製品を選ぼう
・帽子
帽子は、暑さ対策、熱中症対策、そしてUV対策の観点からも夏のゴルフの必須アイテムです。なぜなら、頭部に直射日光が当たると頭部の温度が上昇し、熱中症のリスクが高まるからです。ラウンドの際、地域によっては帽子の着用を義務付けしている所もありますが、そうでなくとも帽子は必ず着用するようにしてください。色は、黒や紺などの濃い色は熱を吸収するので避け、白や黄色など淡色系がオススメです。色の選択はウエアも同じです。
・日傘
帽子同様、体に直射日光が当たらないようにするのに日傘は有効です。市販されているゴルフ用の傘は晴雨兼用のものが多く、防水機能に加え、UVカット機能を備えています。そして、価格が高いほど軽量です。18ホールの長丁場で使用しますので、少々高くても軽くて丈夫なモノを選びましょう。ゴルフ場のカートに常備されている傘は、ほとんどが雨用のみでUVカット機能はありませんが、それでも日傘として使えばかなり効果的です。最近は「日傘男子」という言葉が聞かれるほど、街中でも男性の日傘が見られるようになりました。ぜひ、ゴルフ場でも恥ずかしがらず、積極的に日傘を使用するように努めてください。
・サングラス
熱中症の1つ「熱射病」は、体温の上昇によって脳の機能が異常を来し、時に意識がなくなり、生命の危険が高くなります。サングラスは、日光のまぶしさによって脳が興奮するのを抑え、熱射病を防ぐ役割があるといわれています。
長時間、目に強い紫外線を浴びると、白内障や黄斑変性(おうはんへんせい)症という、視界がゆがんだり目が見えなくなったりする病気を引き起こすリスクが高まります。さらに、角膜炎(かくまくえん)になる恐れもあります。最近の研究では、目に紫外線が当たると肌が黒くなることが分かっています。紫外線によって目にダメージが生じると、脳はメラニンという皮膚にある黒褐色の色素を作るよう命令するからです。目の保護や美肌を守るためにも、夏のゴルフではサングラスを着用しましょう。
・冷感グッズ
アイシングバッグ(氷のう)や、水でぬらして首に巻くだけでヒンヤリ冷たくなるクールベルト、貼るだけで冷たい湿布などの冷感グッズは比較的安価で便利です。それらグッズがない場合は、タオルを水でぬらして首に巻くだけでも効果的です。また冷感アームカバーもオススメです。紫外線をガードできますし、接触冷感機能で体を冷やす効果があります。
普段から携帯できるグッズで、ラウンド前に使い慣れておきましょう
ラウンド中の水分補給のポイントとは?…
次に水分補給について説明しましょう。ゴルフに限らず、運動をすると体温が上昇します。すると体温が高くなり過ぎないように、体は汗をかいて体温調整します。ところが運動強度が高くなるにつれ、発汗のため皮膚に送られていた血液は、酸素を必要とする筋肉の方へと流れてしまいます。汗をかくと血液中の水分だけが減少するため、血液の粘性が高まり流れにくくなってしまいます。これが「運動をしてバテる」という現象の一因です。故に、運動中にもマメに水分補給を行い、血液量の減少や血液の粘性の増加を抑えるようにすることが必要です。
人間の喉が渇く感覚は、非常に不正確だといわれています。ですから「喉が渇いた」と感じてから水分を補給するのでは、遅い場合があります。ラウンド中は喉が渇いたと感じなくても、早めに水分補給をするようにしてください。
また一度に大量の水分を補給するのではなく、ホールごとに小マメに飲むようにしましょう。ペットボトルから水を1口飲む量は平均20mlといわれています。ホールごとに2~3口飲むとハーフ(9ホール)で500mlのペットボトルがちょうど1本なくなることになります。ですから、1ラウンドではその2倍と考えて、500mlのペットボトルを2本用意しましょう。ラウンド中だけではなくスタートの30分ぐらい前に、コップ1杯程度の水分を取っておくのも効果的です。
飲み物の中に糖分が入っていると、水分の体への吸収速度が遅くなることが分かっています。糖分が多いジュースやコーラは避けましょう。また、夏のラウンドでは非常に多くの汗をかき、水分とともにナトリウム(塩分)やカリウム、マグネシウムなどのミネラル分を失ってしまいます。それを補充するためには、ミネラルを含むスポーツドリンクがオススメです。ただし、スポーツドリンクには意外と糖分が多く含まれていることがあります。そのため、水分補給を主な目的とするなら、スポーツドリンクを、水で1.5倍から2倍に薄めて飲むとよいでしょう。一方、スタミナ補給も目的なら、糖分を取るため薄めることなく飲んだ方が効果的です。
経口補水液は、スポーツドリンクよりもミネラル分の濃度が高く、かつ糖分が抑えられている清涼飲料水です。スポーツドリンクを薄めるのは面倒だという向きには経口補水液がオススメです。ただし、経口補水液は飲料水とはいえ、ナトリウムとカリウムを多く含んでいますので、それらの摂取によって悪化する可能性のある疾患をお持ちの方は念のため医師に相談されるとよいでしょう。
ラウンド中にペットボトル入りのお茶を飲んでいる人を見かけますが、お茶やコーヒーは利尿作用があり、効果的な水分補給には不向きです。アルコール類も脱水効果があるため、ラウンド中は飲まない方がいいでしょう。ゴルフの昼食時に飲むビールは格別だとは思いますが、後半のラウンドを考えれば、アルコールの摂取は極力控えるべきです。
暑い日のゴルフの注意点とは
私は通常ですと、健康のため、またコース戦略上できるだけカートには乗らず、自分の足で歩いてプレーすることを勧めています(連載第16回参照)。しかし、酷暑日のゴルフは別です。極力カートに乗り、体力を温存します。そしてスロープレーにならない範囲でゆっくり歩くことも心掛けています。
暑さ対策や水分補給など、細心の注意を払ってもなお、熱中症にかかってしまった場合の対処も覚えておきましょう。
まずはプレーを中断し、木陰などの涼しい所に移動してください。そして衣服を緩めます。熱中症になると体温の感覚がマヒし、本人は寒がる場合があります。しかし、いくら本人が寒がっても体を温めてはいけません。左右の首や脇の下、足のつけ根などをぬれタオルや氷のうなどで冷やしましょう。そして、経口補水液やスポーツドリンクなどの塩分を含んだ飲み物を飲ませてください。普通の水しかない場合は、水と一緒に塩あめを食べさせてもよいでしょう。飲み物を受け付けない場合は緊急性がありますので、すぐにラウンド幹事やゴルフ場スタッフに連絡しましょう。
ここまで、熱中症を予防する方法や、熱中症になった場合の対処法を述べてきました。最も大切なことは日ごろの体調管理をしっかり行い、熱中症になりにくい丈夫な体を確保しておくことです。それには、十分な睡眠、栄養のある食事、エアコンで冷やし過ぎないなどが挙げられますが、中でも重要なのは運動習慣を付けておくことです。
主に上半身、肩甲骨周辺の筋肉の柔軟性を高めておくことは、ゴルフスイングに役立つばかりか熱中症予防にも効果的なのです。熱は上半身にこもりやすく、運動をしないと首から肩にかけての血流が悪くなって疲労物質が停滞。わずかな運動でもバテやすい体となってしまいます。
また、肩甲骨を動かさないと、内臓機能も低下することが分かっています。内臓機能とともに自律神経が弱まると暑さへの慣れ(順化)も弱くなります。こうなると、睡眠障害や食欲不振などを引き起こし、熱中症のリスクが高くなってしまいます。熱中症を避けるためにも、日ごろの運動習慣で肩甲骨を動かし、熱中症になりにくい体をつくっておきましょう。
肩甲骨の柔軟性を高める効果的な運動は、「ゴルフフィットネス」の運動プログラムの1つ「楽体(ラクダ)運動」がオススメです(連載第31回参照)。熱中症対策は付け焼き刃の対策ではなく、ビジネス同様、普段からの取り組みが求められるのだと思います。