新型コロナウイルスの影響で、テレワークを行う方が増えてきています。テレワークを始めた何人かの知人によると、「満員電車のストレスから解放された」「通勤時間がなくなって時間に余裕ができた」「雑用がなくなり仕事に集中できるようになった」といったメリットが多く聞かれました。通勤費や出張費が抑えられ、経費削減につながるのでとても良いことのように感じます。ただ、その半面、うまくいかないという声も聞こえてきます。よく聞けばその課題は、ゴルフで培ったノウハウで解消できることに気が付きました。今回は、テレワークをスムーズに進める実践法をゴルフから学んでいただこうと思います。
テレワークがうまく機能しない2つの課題
テレワークの問題点は何か?知人から聞いた話をまとめてみましょう。
まず、テレワークの実行者は次のような問題を感じるようです。
・家にいるので、ついダラけて仕事モードに入りづらい(オン/オフの切り替えが難しい)。
・オンライン会議中に家族などが掃除機を動かし、慌てて注意すると逆ギレされた。
・仕事中に子どもが「遊んで」とせがんできて集中できない。
一方、同居する人の立場では次のような問題があるようです。
・仕事時間中、パートナーにリビングを占領されて居場所がない。
・子どもの分も含めて朝昼晩、三食作ることに追われて息つく暇がない。
・仕事の邪魔になるからと、静かに過ごすことを強要される。自由がない。
自宅で仕事をすることになったビジネスパーソン。その誰もが自宅に自分の部屋や遮音性の高い場所を持っているわけではありません。子どもがいる家庭なら、なおさらです。生活をする場所に仕事を持ち込むわけですから、家族などに事前の了解を得て、しっかり理解を得なければ問題が起こるのは当然です。仕事の環境づくりはビジネススキルと心得て、1つずつ問題を解決しましょう。もちろん経営者はそれをサポートしなければなりません。
テレワークの実行においては、通信環境、業務資料へのアクセス方法、従業員間や顧客とのコミュニケーションの確保といった業務を遂行するために整備すべきポイントがあります。ただ、それとは別に、仕事とプライベートの切り替え、同居人や家族との距離感に苦労しているケースが少なくないようです。
家族が同居していない一人暮らしの場合、テレワークを行うと不規則な生活に陥りかねません。やはり、仕事時間は集中、休息時間にはリフレッシュ、といった切り替えが大切です。また、同居人や家族がいるビジネスパーソンは、業務に集中している姿勢を見せることが家族などの理解につながります。同居人や家族は最も愛すべき大切な存在であり、その存在こそが仕事を頑張る理由という人も多いでしょう。テレワークは、仕事ぶりを家族などに見せることができる機会ともいえます。きちんと集中できれば、家族の息遣い程度は感じられる空間で働くというのを考えていいのかもしれません。
気持ちの切り替えに効果的な「アンカリング」と「ルーティン」…
仕事とプライベートの切り替えが難しいテレワーク。今までは、「スーツに着替える」「満員電車に揺られる」といった行動が仕事モードへの切り替えになっていたのかもしれません。故にテレワークでは、それらに代わる「きっかけ」を見つける必要があります。
「気持ちを切り替える」きっかけを意識し、用意しておくことです。ゴルフなら頭に描いたショットイメージを実行に移す際、きっかけを決めておくと、効果的に気持ちの切り替えができます。例えば、小声で「よし!」とつぶやく、手に持っているクラブで地面をポンとたたく、などです。心理学では、この「きっかけ」のことを「アンカリング」といいます。直訳すると「条件付け」です。ある条件を与えると、ある状況が反射的に起こるというものです。
仕事の前には必ずブラックコーヒーを飲む、新聞を読むなど、アンカリングは何でもよいと思います。私の場合、プライベートでは家でメガネをかけていますが、仕事のときはコンタクトレンズを装着しています。コンタクトレンズを着けるという行為が、仕事モードに切り替わるアンカリングとなっているようです。ですから、私が自宅で仕事をする際にはコンタクトレンズを装着するようにしています。
アンカリングを一連の動作としてパターン化するのが「ルーティン」といえるでしょう。多くのアスリートが自身のプレーで実践していて、ゴルファーも同様、ショットの前動作を「プレショットルーティン」といったりします。上級者になると、毎回同じルーティンを踏んでショットに入ります。一般初心者は動作がルーティン化されていないことが多く、焦ったりバタついたりしてショットの精度を落としています。
テレワークでも、このルーティン化は大切だと思います。家だからといって、パジャマや室内着のまま仕事をしていませんか?朝起きて顔を洗い、ヒゲをそり、朝食を取り、身支度を調えるといった出社するときに行う一連のルーティンを、在宅でも同じように実践するとよいでしょう。
同居人や家族の理解を誘う現実的な解決法
テレワークをする上で、もう1つの課題が、同居人や家族との距離感です。ゴルフプレーにおいても、ショットの際、同伴プレーヤーが近くでぺちゃくちゃ話をしていてはショットに集中することができません。自宅で仕事をする際、書斎など生活の場と区切られたパーソナルスペースがあれば仕事に集中しやすいですが、そうでない場合は環境的に難しいでしょう。
ゴルフプレーで、パーソナルスペースをつくる工夫は帽子です。帽子のつばで視界が若干ですが遮られるためです。同伴プレーヤーとの会話を楽しむような「一緒モード」のときは、帽子のつばを上げて視界を広げます。一方、ショットを打つときの「独りモード」に入るときは帽子を深くかぶり、視界を狭くするのです。とはいえ、ショットを打つときの「独りモード」は、帽子のつばだけでは不十分、同伴プレーヤーの協力なしには実現できません。ゴルフでは、ゴルファーがお互いにプレーを尊重し合い、同伴プレーヤーがショットに入ると、静かに見守る、邪魔にならない所で止まるなど「独りモード」を妨げないように行動します。
これはテレワークも同じでしょう。テレワークの生産性を高めるには、家族などの理解と協力は不可欠です。そこで、パーティションを設置したり、カーテンで仕切ったりして、少しでもパーソナルなスペースがつくれるような工夫をオススメします。「そのスペースに着席している間は配慮してね。そのスペースから立ち上がって離れたらプライベートタイムだよ」という切り替えを家族などに共有しておくとお互いにストレスが軽減できるでしょう。
今回、新型コロナウイルス対策として、急きょテレワークを導入した会社も多いと思います。ただ今後、働き方改革やBCP(事業継続計画)の観点で、新型コロナウイルス感染の危険がなくなっても、テレワークを業務形態の一部として取り入れる会社は少なくないと思います。テレワークで大切な同居人・家族間の人間関係がギクシャクすることがないよう、ゴルフで培った「協調性」や「相手ファスト」の精神を忘れずに過ごしていただけたらと思います。