人類は科学技術の進歩と交通機関の発達により、かつてないほど便利な時代を迎えています。しかし、そんな中でも、何らかのストレスを感じている方は少なくないと思います。特に今回、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、テレワークなど新しい働き方を求められたり、将来が見えずに不安になったりすることによって、ストレスを感じているケースもあるかと思います。
こうした社会的な大きな事象に由来するストレスをどう解消していくべきか。個人プレーでありながら集団での協調を求められるゴルフには、そのヒントがあるように思います。今回は、これまでの記事を振り返りながらゴルフに求められる精神性を確認しつつ、ストレス対策によるメンタルヘルスの改善法を探ってみたいと思います。
ストレス対策としては、ストレスを感じたときに、それを気分転換することなどで解消する方策と、ストレスを感じにくくする方策が考えられます。ゴルフが、気分転換の方法として有効なのはいうまでもないことですが、ストレスを感じにくくする効果もあります。
例えば、テレワークによるストレスを考えてみましょう。コロナウイルス感染拡大がきっかけで拡大したテレワークは場所と時間を選ばずに仕事ができるというメリットがありますが、一方で、仕事とプライベートとのメリハリがつきにくくなり、そのことに対してストレスと感じる人がいるようです。また、メリハリがつきにくくなることによって、「多少、さぼっても大丈夫だろう」などと考えがちになります。自分を律する、コントロールする難しさがテレワークのストレスになるともいえるでしょう。
ゴルフは自分を律するに適したスポーツです。というのも、ゴルフには審判がいません。ですから、誰も見ていなければ、利己的欲求を満たすため不正を働くことが可能です。しかし、そうした不正をしていては、心から気持ちよくゴルフを楽しむことができません。バレたら当然、同伴プレーヤーから非難も浴びるでしょう。第52回「性悪説と性善説との融合、より高まるゴルフの教育性」で述べましたが、ゴルフは、そうした「人間の弱さ」を払拭する精神を育むスポーツなのです。したがって、自分の心を鍛えたいテレワーカーには、ゴルフがオススメなのです。
ゴルフで協調性を鍛え、テレワークに備える…
もちろん、ゴルフは自分のスコアを追求するスポーツですから、精神的には孤独に強くなります。その一方で、一緒にプレーしたり、後からプレーしたりする人のことを考えることから、協調性を強化する効果もあります。
ゴルフでは、同伴プレーヤーが良いプレーをすると「ナイスショット!」と声を掛けます。ミスショットをすると「ドンマイ!ドンマイ!」「大丈夫!大丈夫!」と声掛けをしたりもします。また、バンカーショットの後は後続組に配慮して、バンカーをならします。ショットの際、削り取った芝生は元に戻し、できたくぼ地(ディボット)には備え付けの砂を入れて足やクラブでならします。ボールの落下でグリーン上にできたボールマーク(ピッチマークともいう)はグリーンフォークで平らに修復します。これらはすべて同伴プレーヤーや後続組のための行為です。
このように、ゴルフには「人のため」のマナーが多く見られます。ですから、ゴルフは「相手ファースト」「他人ファースト」の精神を重んじるスポーツといえますし、こうした他人を思いやる行動は、実は自分のためでもあるといえます。ゴルフはそれらの精神をプレーヤー同士でお互いに養うことができます。この辺りについては第43回「スコアをアップさせる「相手ファースト」思考」を読み返してみてください。こうした行為は離れた場所で働く他の従業員への気遣いに通じるものがあるでしょう。
もちろん、同伴プレーヤー同士が気持ちよくゴルフを楽しむにも「協調性」が求められます。ゴルフにおける協調性は、第49回「ピンを抜く?挿したまま?パッティングに見る協調性」で説明していて、そのベースにあるのは「気配り」と「速やかな意思疎通」です。ゴルフのラウンドでは、同伴プレーヤーの行動と歩調を合わせて進めていきます。自分が先に打つべきか、同伴プレーヤーが打つのを静かに見守りながら待つべきかは、ある程度離れた場所にいる同伴プレーヤーの行動や全体の流れを鑑みながら判断します。グリーン上に行けばピンを挿したままパッティングするのか、それとも抜くのかといった判断なども、同伴プレーヤーと協調していればプレーの流れの中でスムーズに行えるようになります。このように、ゴルフは「協調性」を養うことができるスポーツともいえます。
いかがでしょうか。このように過去の記事を眺めていただくと、ゴルフとは結果的に勝ち負けを競うスポーツではあるものの、それは、参加者個々が、「人間の弱さ」を克服し、「協調性」を持って、「人のため」を考えて行動することによって成り立っているということがお分かりだと思います。これらはテレワークをする際にも必要な要素であり、それがゴルフによって自然に鍛えられます。
将来の不安が見えないことに対するストレスに関しても、ゴルフというスポーツは移り変わる気象条件の中で、少しでも良いスコアを求めて挑戦していくスポーツですから、こちらにも効果があるでしょう。
ストレスを感じて、精神的に不健康になっている人は、自分がつらいだけでなく周囲に悪影響を及ぼすこともあります。直接的に危害を加えられることはなくても、イライラ、カリカリしている人のそばには、誰も近づきたくはないものです。同じ職場にたった1人でもメンタルヘルスが不調の人がいるだけで、その人だけでなく、その職場全体の生産性は低下してしまいます。働く人の健康と、組織としての生産性維持のために、メンタルヘルス対策に取り組むことが経営者に求められています。
ただ、精神的な問題ですから、その対策は非常に難しい点があります。その点、ゴルフは上記のようなストレス対策の効果に加えて、健康の維持増進に役立つという意味でも、非常にお勧めです。接待ゴルフなどという言葉もありますが近頃はそんな使い方よりも、個人や仲間と純粋にゴルフをスポーツとして楽しむ人が増えてきました。だからこそビジネスパーソンのストレス対策として有効なのです。ゴルフでストレス耐性を強化し、もしストレスを覚えてもスカッと解消してしまいましょう。