ゴルフエッセー「耳と耳のあいだ」（第86回）社内研修で使えるコースラウンドの仕方

　ここで、前述の限定ルールのもとで行われる研修風景を想像してみましょう。「上級者のボールは各ホール1回しか選択できない」となると、ティーショットで上級者のボールを選択した場合、そのホールのセカンドショット以降ではもう選べなくなってしまいます。そうなるとスコアをまとめるために大切なグリーンを狙うショットを中級者や初心者が打たなくてはなりません。つまり、上級者のボールをどこで選択するのかが悩みどころになります。

　メンバーには、飛ばし屋だけどショートゲームが苦手という人がいれば、飛ばないけれどアプローチの距離感はプロ級という方がいるかもしれません。中上級者にもクラブの得手不得手や調子の波があるでしょう。リーダーは「同じ人のボールを続けて選択してはいけない」ルールとともに、メンバーの長所短所を考慮しながら、どこで誰のボールを選択するかを話し合い、都度判断していかなければなりません。そこで、コミュニケーションが生まれます。

　「最後のカップインは必ず初心者でなければならない」という条件があったら、中上級者は初心者でも入れやすいやさしいラインにボールを寄せる必要があります。誰もが入れられそうな短い距離のパッティングでも初心者の筋肉が緊張や萎縮をしないよう、リラックスできるムードづくりも必要です。険悪な雰囲気にさせず、中上級者は初心者を成功体験に導けるでしょうか。

　社内の上級者といってもプロゴルファーではありませんから、ミスショットするときもあるでしょう。反対に、初心者が目の覚めるようなナイスショットを打ったり、ミスショットが木に当たって結果オーライのすばらしいポジションに落ちたりする場合もあるかもしれません。チームの誰かがミスをしても他のメンバーがそれを補えば、感謝の気持ちも芽生えてチームの結束力はより強くなると思います。このようなラウンドを通じて、チームでコミュニケーションを図りながら戦略を練り、目標スコアでホールアウトする過程を体感していきます。

ラウンド後はプレゼンテーションと表彰式で効果倍増

　プレー後はクラブハウスで反省会と報告会、そして表彰式を行います。チームごとに、ラウンドを振り返って良かった点、反省すべき点、戦略上工夫した点やアピールポイントなどを話し合い、全参加者の前でプレゼンテーションしてもらいます。表彰式は単にスコアの勝敗だけでなく、各チームのプレゼンテーション内容から最も良かったと感じるチームを投票し、最も投票数の多かったチームを表彰します。

　また、メンバー同士で助け合いながらラウンドするため、感謝の気持ちが生まれます。その気持ちを「サンキューカード」に書いて、感謝する相手に渡すのも面白いと思います。例えば、「一緒に回ったAさんは、遠く離れたカートから使いたいクラブを届けてくれた」「Bさんはバタバタしている私の代わりにバンカーをならしてくれた」など。サンキューカードが最も多かった人を表彰するのもよいでしょう。

　このように、従業員の健康を増進し、従業員同士のコミュニケーションを活発にして、さらに人材育成も図れるのがゴルフのいいところです。今回紹介した「ゴルフde社内研修」は、一案に過ぎません。企業によって従業員に求める能力は異なるでしょうから、コースラウンドを通じて自社に合った社内研修を企画されると面白いと思います。ぜひトライしてみてください。