ゴルフエッセー「耳と耳のあいだ」(第91回)ゴルフの世界でも生成AIは使えるか?

スポーツ

公開日:2023.06.20

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 昨今、「ChatGPT」に代表される生成AI(人工知能)が何かと話題になっています。日本経済新聞「きょうのことば」(2023年4月6日付)では、生成AIについて「人の指示にしたがって文章や画像、動画を自動生成する人工知能(AI)。2022年以降、高精度で簡単に使えるサービスが続々と登場。人の仕事を代替したり短時間でコンテンツを量産したり、企業活動や人々の生活を大きく変革する可能性がある技術として注目が集まっている」と説明しています。

 ゴルフ業界でも2019年ごろからAI活用の芽が出始めているようですが、いずれ生成AIをベースとしたゴルフサービスも日常的に利用される日も近いのではないかと思われます。しかしながら、世界中で加熱する開発競争とともに急速に普及する生成AIに対して危惧される声もあり、この5月末にはG7やOECD加盟国において早期のルール/指針づくりを進めるというニュースがありました。今後の展開がどうなるのか、みなさんの職場でもホットな話題ではないでしょうか。そこで今回は、ChatGPTに的を絞り、こうした生成AIがゴルフに与える影響について考えてみたいと思います。

ChatGPTで個人情報検索をしてみると

 ChatGPTについて、話を進める前に少し説明します。ChatGPTは「Chat(チャット)」と「GPT(ジーピーティー/Generative Pre-trained Transformer)」を組み合わせた名称であり、米OpenAI社が公開した文章生成言語モデルのことです。質問に対して用意された回答で返す従来型のチャットボットとは異なり、自然な受け答えの対話が革新的であり、日本語にも対応しています。最新バージョンの「GPT-4」がAPIで各開発ベンダーに提供されており、これを利用するアプリやサービスが増えている中、米マイクロソフト社の「Microsoft 365 Copilot」も同APIをプラグインとして機能拡張できることが先日報じられました。

 BizClipの記事「IT時事ネタキーワード「これが気になる!」(第121回)Microsoft、Excelなどに対話AI搭載を発表。話題の対話型AIとは」を参考に、私もChatGPTの公式サイトにアクセスし、無料で利用できるバージョンを試してみました。確かに実際に使ってみると、あたかも人と会話しているかのようにコンピューターがこちらの質問に対して即座に自然な文章で答えてくれます。

 手始めに、「小森剛について教えて」とチャット欄に入力してみました。小森剛とは私、筆者のことです。入力してから4~5秒ぐらいで次のような答えが返ってきました。「小森剛(こもり たけし)は、日本の俳優です。彼は1970年12月27日に福岡県福岡市で生まれました。小森剛は子役としてキャリアをスタートさせ、多くのテレビドラマや映画に出演しました」とあり、思わず笑ってしまいました。私は福岡出身でもなければ俳優でもありません。

 本当にChatGPTが示した俳優がいるのかとGoogle検索してみたところ、私以外では、神奈川県横浜市出身のシンガー・ソングライターとして同姓同名の人が実在するようですが、俳優の小森剛は見つかりませんでした。気を取り直し、今度は「ゴルフの小森剛について教えて」と入れてみました。すると、「申し訳ありませんが、私のデータベースにはゴルフ選手の小森剛に関する情報はありません」と返されます。それならばと「ゴルフインストラクターの小森剛について教えて」や「日本ゴルフジャーナリスト協会の……」と入れても同じ返答でした。

ゴルフに関連した質問とその結果は……

 次は単刀直入に、「ゴルフ上達のポイントを教えて」とChatGPTに聞いてみました。回答の全文は割愛しますが「基本的なフォーム」「練習の重要性」「自分に合ったクラブセッティング」「コースマネジメント」、そして「メンタルの向上」の5つを挙げ、およそ650~700文字にまとめて答えてくれました。文末には、プロやインストラクターの指導を受けましょう、とも書かれていました。

 さらに内容を絞り、「ゴルフで飛ばすにはどうすればいい?」と聞いてみました。返答を要約すると、「正しいスイング」「スイングスピードの向上」「自分に合ったクラブとボール」、そして「テクニックの習得」が大事と答えてくれました。スイングスピードの向上では、柔軟性や筋力を高めるトレーニングやストレッチの重要性も説いていました。飛距離アップにはフィジカルが大事であることを述べているのはさすがだと思いました。そして、やはり最後には、ゴルフインストラクターやコーチの指導を受け、個別のアドバイスや改善点を見つけましょうと締めていました。

 このように、個別具体的な指導はないものの、ゴルフの上達に関する一般的な質問には必要な情報や練習法について的確に答えていて、これからゴルフを始めようとする人には良い参考になるのではと思いました。うれしいことに、ChatGPTはゴルフ上達の必須項目としてインストラクターの指導を受けるようにと促しています。ゴルフ指導者が生成AIによって職を奪われることは当分なさそうです。

 さらに、もう少し難しくChatGPTに聞いてみました。「ゴルフでOBしたときの正しい処置を教えて」と聞いてみたところ、これも数秒で650文字ぐらいの文章で答えてくれました。しかし、その中にはおかしな内容がかなり含まれていました。例えば「最後に打った場所からOBの場所までの距離を計算し、その距離を加算する」「OBのラインを背にして直角にドロップする」「OBの場所と同じライン上でボールをプレーする」といった説明です。

 そして極めつけは、「ボールを肩の高さから腕の長さの範囲で垂直にドロップします」という回答。ご存じの通り、ドロップの方法は2019年のルール改定で「ヒザの高さから」に変更されており、「肩の高さから」は以前のルールです。またドロップエリアは腕の長さではなく、ワンクラブレングス(クラブ1本分の長さ)です。

ChatGPTに見る生成AIの可能性と注意点…

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執筆=小森 剛ゴルフハウス湘南

有限会社ゴルフハウス湘南の代表取締役。「ゴルフと健康との融合」がテーマのゴルフスクールを神奈川県内で8カ所運営する。自らレッスン活動を行う傍ら、執筆や講演活動も行う。大手コンサルティング会社のゴルフ練習場活性化プロジェクトにも参画。著書に『仕事がデキる人はなぜ、ゴルフがうまいのか?』がある。

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