屋内練習場でもコースでもゴルフに行った翌日、気分良く仕事に向かえていますか?ゴルフ疲れで仕事にならない……という人はいませんか?特にビジネスパーソンなら、ゴルフは翌日からの仕事の活力を養うためのツールであることが望ましいはず。
ゴルフが仕事のプロゴルファーとは異なり、趣味・スポーツの一環として取り組みたい、休暇・余暇にリフレッシュしたい、という気持ちでゴルフに親しんでいる人にとっては、ゴルフが「休養」になっていないと、翌日の仕事に疲れが残ってしまうのは当然です。翌日に疲れを残さず、心身ともに充実した状態で仕事に向かうためには、きちんとした「休養」が必要で、ゴルフをすることが「休養すること」に当てはまっていないといけません。
今回は、誰もが知っているようで知らない「休養」の言葉の定義と、はたしてゴルフは「休養」といえるのか、その辺りに触れながら、ゴルフでしっかり「休養」して、仕事のパフォーマンスを上げるコツをお伝えします。
そもそも「休養」するってどういうこと?
健康の三要素は「運動」と「栄養」と「休養」といわれています。このうち、「運動」と「栄養」に関しては一般でも広く学ぶ場があり、学問として体系化されています。ただ、「休養」については、国内では一般社団法人日本リカバリー協会が科学的に体系化するまで、深く学ぶ場がなかったといいます。
この協会が2017年からインターネットで実施している10万人規模の調査によると、最新の調査(2021年)では「疲れている」と答えた人が8割を超えていたそうです。世界的に見ても疲労度の高い日本人が、「休養」に無頓着でいてよいはずがないでしょう。
「休養」を体系的に学ぶ「休養学」を提唱する専門家グループの第一人者であり、日本リカバリー協会代表理事の片野秀樹先生は、図1を使って以下のように解説します。
多くの人の日常は、図1左のように、①活動(仕事)して、②疲労がたまったら、③休養(睡眠など)をとり、そのまま①の活動に戻る、という三角形のサイクルで回っているというのが片野先生の分析です。しかし、本来の「休養」とは「休んで養う」と書く通り、仕事などの活動を休んで体力や気力などの活力を養うこと。つまり、現代人がイメージする休養、三角形のサイクルでは「活力を養う」ことが抜けてしまっている、と片野先生は指摘します。
そこで片野先生は、図1右のように、①活動→②疲労→③休養、の後に、④活力を加えて、四角形の循環サイクルをイメージした日常を送ろうと推奨されています。
図1:休養サイクルに「活力」を加える※
さらに片野先生は、活力を養うための方法を「休養モデル(杉田・片野式)」と名付けました。図2で示しているのは、「休養」を「生理的休養」「心理的休養」「社会的休養」の3つに分類し、それらを細かく7つの型に仕分けたモデルです。
図2:「休養」には3つの大分類とそれに属する7つの類型がある※
片野先生の言を借りれば、休養とは単にカラダを休めるのではなく、7つの型を複合的に取り入れ、活力を上げることが大事だそうです。以上を踏まえた上で、ゴルフがこの休養モデルのどの型に当てはまるのかを考えてみたいと思います。
※図1、図2:「片野先生、休養学って何ですか?」、株式会社ベネクスWEBマガジン『Recovery Lab MAGAZINE』 2022/11/30より引用
ゴルフは最強の休養ツール…
ゴルフは運動ですから、休養モデル「生理的休養」の中でも“運動型”の休養といえるでしょう。そして、「心理的休養」の中では、ゴルフは同伴プレーヤーや指導者といった人とのコミュニケーションをしたり、コースの木々や季節を感じたりしながら行うため“親交型”の休養といえます。また、ビジネスパーソンにとってのゴルフは休暇・余暇を楽しむ趣味であるべきですから、“娯楽型”の休養と位置付けてもよいでしょう。さらにゴルフでは、コースの攻略法を頭の中で練ったり、これから放つショットをイメージしたりしつつ、ショットの瞬間に集中します。これは“造形・想像型”の休養としての要素もあるでしょう。
練習場やコースという非日常の空間に没入する、季節の草花や自然豊かで雄大な景色の中に身を置く、ゴルフウエアやゴルフクラブといった買い物を楽しむといった要素がゴルフにはありますから、「社会的休養」、“転換型”の休養とも考えられます。
このように、ゴルフは7つの型のうち5つの型に該当する最強の休養ツールといってよいと思います。とはいえ、ゴルフは運動ですから体がまったく疲れないわけではありません。休養モデルでは、適度な運動(活動)によって老廃物の除去や新陳代謝を促し活力の向上につながるとし、これを「積極的休養」と呼んでいます。
“適度な”とあるように、ゴルフで「休養」するためには“疲れ過ぎない”ことが肝要なのです。それでは、どうすれば疲労を最小限にし、“疲れ過ぎない”ゴルフになるのかを考えてみましょう。キーワードは、睡眠、食事、コンディショニング、そして笑顔です。
活力を高める“疲れ過ぎない”ゴルフの仕方
【睡眠】
ゴルフ前夜の睡眠は大切です。最低でも6時間、できれば7時間半の質の良い睡眠を心がけてください。個人差はありますが、レム睡眠~ノンレム睡眠の周期がおおむね90分ですので、90分の倍数が理想的です。ゴルフ前夜の過ごし方や睡眠に関しては、第13回「スコアも翌日の仕事も絶好調にするゴルフ~前夜編~」で詳しく説明しています。
【食事】
コースに出る日は朝が早いからと朝食を抜く人が多いです。しかし朝食を食べないと、エネルギー不足と脱水症という2つのリスクが大きくなります。18ホール、外を歩き回ってプレーしたら相応のエネルギー消費になります。朝食抜きではすぐに疲れてしまい、良いスコアも望めません。ゴルフ当日の朝食に関しては、第14回「スコアも翌日の仕事も絶好調にするゴルフ~朝食編~」をお読みください。
ハーフ(9ホール)をラウンドした後の昼食は、栄養素も考えるといいでしょう。例えば、疲労回復効果の高いビタミンB群を豊富に含む豚肉と野菜を同時に取れる豚のしょうが焼きはお勧めです。一方、昼食で御法度なのは飲酒です。ビタミンB2は糖質や乳酸を分解してエネルギーを生成する大切な栄養素です。それを、体内でアルコールを分解する際に使ってしまいますから、エネルギーを生み出せず、かえって疲れやすくなります。飲酒の楽しみは帰宅してから、翌日の仕事に響かないよう少量にとどめておきましょう。
【コンディショニング】
スポーツ分野では、体の調子を整え、機能改善を図ることを「コンディショニング」といいます。プレー前にコンディショニングを施すと身体バランスが整い、疲れにくい身体になります。また、ケガのリスクを最小限に抑えられるだけでなく、より高いパフォーマンスを発揮してゴルフを楽しめます。プレー前のコンディショニングに関しては、第15回「スコアも翌日の仕事も絶好調にするゴルフ~身体編~」を参考にしてください。
【笑顔】
笑うと免疫のコントロール機能をつかさどる間脳に興奮が伝わり、情報伝達物質が分泌され、血液やリンパ液を通じて体中に流れ出します。その結果、免疫力が高まるといわれています。免疫力が高まれば疲れにくい身体になります。また、笑顔によって表情筋が刺激を受け、脳にフィードバックされてポジティブな感情が生まれます。休養学でいう「心理的休養」の観点から考えると、嫌な気持ちでゴルフに臨まないことも“疲れ過ぎない”コツといえそうです。笑顔でゴルフを楽しめば健康維持・増進にもつながるため、笑顔はとても大切なのです。笑顔の効能に関しては、第78回「笑顔で取り組めばゴルフもビジネスもうまくいく」で詳しく説明しています。
以上、4つのキーワードによる、“疲れ過ぎない”で「休養」できるゴルフの仕方をお伝えしました。最後にもう1つ。ゴルフで適度に疲れた身体を癒やし、疲労を回復させるのにお勧めなのが入浴です。湯船に漬かると、温熱作用と水圧による血行促進で疲れが取れます。水の粘性抵抗で適度な負荷がかかり、トレーニングにもなります。また、浮力で体重が9分の1程度になるため、体を支える負担が軽減され、身も心も解放されます。
一般的に37~39度のぬるめのお湯に15~20分ほど漬かると、副交感神経が優位になり疲れが取れやすいといわれています。日本のゴルフ場はお風呂が充実していますから、ぜひ活用してください。疲れた状態で頑張っても、生産性は上がりません。そんなときはゴルフ場・練習場に出掛けて、明日の仕事に向けた活力を蓄えましょう。