三重県松阪市の日乃出エヤコンは、空気調和設備等の設計・施工・保守・修理をとおして「建物に生命を吹き込む」事業を展開している。工事をして終わりではなく、設置後のアフターサービスも請け負うことが強みだ。2022年10月に東邦ガスの完全小会社となり、1969年の創業から54年目を迎えた同社は、業務効率向上のため、「おまかせAI 働き方みえ~る」を導入している。
代表取締役の岩出巧氏は、「セキュリティやエクセル、通信についてなど、何かあれば気軽に相談できる関係性があった」と話す。「働き方みえ~る」についても、何度となく担当者から提案を受け、勉強会も実施していたという。
こうした思いの中、国のDX補助金を活用して、さまざまな業務効率化ツールを導入してきた。そして、「働き方みえ~る」の導入についても、業務効率化によって働きやすい環境をつくり、生産性を向上するとともに、優秀な人材の採用につなげたいという狙いがあった。
「働き方みえ~る」を導入し、まず見える化できたのは、資料を社外に持ち出し、自宅で仕事をする人がいることだった。岩出氏はこう説明する。
「どのパソコンにUSBメモリをいつ差し込んだのかが分かるようになっていることに驚きました。セキュリティ面からも、労働時間の面からも、許可なく社外に資料を持ち出して残業することは禁止しています。『働き方みえ~る』の導入により、それを未然に防ぐことができました」(岩出氏)
さらに、業務改善にも「働き方みえ~る」が役立っているという。同社では2週間に1回程度、全員が集まって業務の課題や効率化に向けた情報を共有する会議を実施しているが、その際に「働き方みえ~る」のレポートや分析結果を活用している。
「社員が12人と少ないこともあり、業務が属人化してしまうことが課題でした。『働き方みえ~る』には、『重点的に対策すべき業務』を分析して見える化する機能があります。これにより個人の仕事を見える化し、属人化している業務を見直すことができています。
「働き方みえ~る」を導入して1年半、明らかに社内の雰囲気が変わってきていると岩出氏は感じている。それまでは社員同士のパソコン業務に関するコミュニケーションはあまり活発に行われていなかったが、最近では担当業務を超えたコミュニケーションが生まれている、と確かな手応えを語る。
「『この業務はどうしたらいいと思う?』『私はこうしたらもっと効率が良くなると思う』といった会話を耳にすることが増えてきました。これは大きな変化だと感じています」と語る岩出氏。
「働き方みえ~る」をきっかけに、業務品質改善と生産性向上に向け、社員たちが主体的に取り組む風土が醸成されつつある。
業務遅延の原因は、パソコンのフリーズだった
実際に「働き方みえ~る」を使用する社員にも、話を聞いた。総務部で働く社員は、「働き方みえ~る」を導入した後の変化について、次のように語る。
「総務は、お金を生み出さない部署と言われます。おそらく社長は、総務部のメンバーが実際にどれだけの業務をこなしているか分かっていなかった部分もあるのかなと思います。しかし実際は、雑務も含め、かなりの業務をこなしています。『働き方みえ~る』で業務量が数値化されることで、自分たちの業務を視覚的に理解してもらえるようになったのは、双方にとって良かったと感じます」
また、総務部では、度重なるパソコンのフリーズが課題だった。業務中に何度もフリーズし、そのたびに業務を中断し、再起動しなければならず、生産性が大きく落ちる原因となっていたのだ。
しかし、同社では「購入から何年」という発想でハード面を整備していたため、なかなか新たなパソコンの購入には至らなかったという。
「『働き方みえ~る』により、フリーズの回数はもちろん、それによってどれくらい業務の進捗(しんちょく)が遅れてしまうのかが数値化されたので、社長への説明がしやすくなり、社長自身の意思決定もしやすくなったのだと思います。結果的に新たなパソコンを購入してもらえることになりましたが、NTT西日本のご担当者さんが適宜アドバイスしてくださったのも大きいです。第三者の視点からご提案いただくことで、説得力を増すことができました。この件が、今後の社内システムの更新のタイミングを検討していく機会にもなったと感じています」
また、業務の可視化は、生産性の向上にも効果を発揮しているという。例えば、ある社員は業務を可視化したところ、インターネットで調べ物をしている時間が圧倒的に多いことが分かった。
「社長から頼まれて、調べものをすることが多かったんです。この結果を見て自分の業務を振り返ったところ、どこまでの情報がいつまでに必要かが分かっていなかったために、無駄な時間を使っていたことに気付きました。それからは、依頼されたときに、優先順位や納期、どこまでの精度で必要なのかをしっかり確認するようになり、生産性が上がりました」
効果は、それだけではない。『働き方みえ~る』で繰り返し作業が多いことに気付いた社員は、自身で業務改善方法を模索し、確かなスキルアップも果たした。
「繰り返し作業に注文書の発行があるのですが、なかなか効率化できずに悩んでいました。『働き方見え~る』により繰り返し作業の多さが可視化されたことをきっかけに、作業効率の向上に取り組み、今話題のChatGPTに質問をして、エクセルの関数を作ったりして効率化することができました」
同社では今後、働きやすい環境を作るためさらに業務改善と効率化を進めていきながら、新たな技術の積極的な導入も図り、業務品質向上を追求して百年企業をめざしていく考えだ。
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