企画書、あいさつ文、見積書、経費精算書、プレゼン資料などなど、多くの組織で使われる業務書類の大半は電子化されている。書類を作成するソフトはいろいろあるが、圧倒的な普及率を誇るのが「Microsoft Office(以下、Office)」だ。
業務上の文書やデータのやりとりは、Officeで作成するのが事実上、スタンダードとなっている。他にも文書や表計算を行うソフトはたくさんあるが、互換性の面でほぼ独占状態だからだ。このように業務に欠かせない存在となっているOfficeだが、組織として運用するにはさまざまな課題もある。
悩ましい異バージョンの混在
Officeに関する悩みの1つが、さまざまなバージョンの混在だ。この大きな原因は、パソコンの導入・更新のタイミングがバラバラで、その時期によって異なるバージョンのOfficeが導入されていることに起因する。
バージョンが混在する弊害は、主に3つある。第1の弊害は、資産管理の煩雑さだ。パソコンの台数が多いと、Officeのライセンスがどれだけあるのか管理し切れない。時には未利用のライセンスがあるのに新規購入してしまうなど、費用の二重払いが発生するケースもある。また、システム部門がユーザーからOfficeに関する問い合わせを受けたときも、バージョンをいちいち確認しなければ回答ができず、非常に効率が悪い。
第2の弊害は、各バージョンによる使い勝手の違いだ。Officeはバージョンによってインターフェースが異なる。部署異動があると使用するパソコンが変わり、中には従来と違うバージョンのOfficeがインストールされていることもある。メニューの位置が異なるなど使い勝手が違い、慣れるまで生産性が落ちる。さらに、Office 2007以降は標準ファイル形式が「docx(Word)」「xlsx(Excel)」「pptx(PowerPoint)」に変更されたため、Office 2003でファイルが開けないという互換性の問題も生じる。
旧バージョンの利用はセキュリティーリスクが高い…
最も深刻なのが第3の弊害、セキュリティーリスクだ。日々深刻化するセキュリティーの脅威に対抗するべく、マイクロソフトはOfficeのバージョンアップのたびに、セキュリティーレベルを上げてきた。つまり、新しいバージョンほど、安心して使えるということだ。
もちろん、旧バージョンでも、定期的にセキュリティー更新プログラム(パッチ)を提供して、セキュリティー上の脆弱(ぜいじゃく)性に対応している。しかし、旧バージョンのサポートには期限がある。期限が切れると、ウイルス感染のリスク、フィッシングやなりすまし被害、情報漏えいなどの危険性が一気に高まる。例えば、マイクロソフトの調査によると、旧バージョン(Office 2007~2013)では、何らかの影響を受けて脆弱性を悪用される可能性が96%もあるという。
すでにOffice 2003は2014年でサポート期限が切れた。セキュリティーを考慮すると、利用を避けなければならないほど危険なレベルにある。Office 2007も、2017年10月10日で延長サポートが終了する。早急にバージョンアップを検討する必要がある。Office2010もメーンのサポート期間はすでに終了し、Office 2013も2018年早々に延長サポート期間に入る。セキュリティーリスクはどんどん高まっていく。
パッケージ版 VS クラウド、どちらを選ぶ?
セキュリティーリスク対策を重視するならば、企業や自治体で使うOfficeは、なるべく早く最新版にバージョンアップしたほうがよいのは明らかだ。
現在、Officeを最新版にバージョンアップする際の選択肢は2つ用意されている。1つは、従来同様のパッケージ版(オンプレミス)Office 2016をインストールする方法。もう1つは、クラウド版のOffice 365に移行する方法だ。その違いについては、以下の比較表を参考にしてほしい。
【従来型OfficeとOffice 365の違い】
比較表を見れば分かる通り、管理の負荷、セキュリティーリスク、使い勝手など多くの面でOffice 365にメリットがある。今後は、パッケージ版ではなくOffice 365が有力な選択肢になるだろう。
多くのビジネスパーソンにとって毎日の仕事に欠かせないOffice。それを少しでも使いやすく、安全な状態に保つことは組織の生産性に直結する。もちろん、管理の手間も最小化できるのが好ましい。こうした点を考慮して、一刻も早くOfficeの効率的運用の実現が求められている。