クラウドの活用は、働き方改革を推進するエンジンの1つだ。その中でもクラウドストレージの活用はテレワークだけでなく、オフィスでの働き方も変えていく。その鍵となるのがビジネスWi-Fiとの合わせ技だ。いつでもどこでも働ける環境がオフィスでも実現できるからだ。そのためのビジネスWi-Fiにはどのような条件があり、選択に際してどこに留意したらよいのだろうか。
業務の生産性を向上させるビジネスWi-Fi導入
どこからでもファイルにアクセスできるクラウドストレージは、従業員の働き方を大きく変える可能性を持つ。テレワークでもオフィスと同じように働くことができるだけでなく、オフィスでも場所を選ばずに働けるようになることで、業務の生産性は大きく向上するだろう。
例えば、社内会議の場で事前に用意していない書類が必要になった場合に、今までであれば誰かがデスクに戻って、書類を見つけてプリントアウトして会議室に持ち込まなければならなかった。しかし、クラウドストレージにファイルがアップされていれば、その場でファイルを取り出して、全員に瞬時に共有できる。こうした業務効率化を図るには、オフィスに確かな品質のビジネスWi-Fiが導入されていることも重要な視点になる。
しかし、どんなビジネスWi-Fiでも良いわけではない。まず快適にクラウドストレージが利用可能な高速な通信ができなければならない。必要なファイルにアクセスして利用するのに、時間がかかっていては余計なストレスが生じる。セキュアであることも大切だ。取り扱うファイルには機密情報が含まれていることもある。クラウドストレージ側でファイルが暗号化されていても、それをビジネスWi-Fiでやり取りする時に、盗み見られてしまえばセキュリティは担保できない。
高速かつセキュアな通信を実現するWi-Fi環境の構築と併せてクラウド活用を推進する必要がある
こうした快適でセキュアな利用が可能なビジネスWi-Fiの条件を満たすのが、「Wi-Fi6」という規格に準拠したビジネスWi-Fiである。これまでのWi-Fiとはさまざまな点で大きな違いがある。以下でそのポイントなどをいくつか紹介していきたい。
Wi-Fi6で実現するセキュアで高速な通信環境…
ここで改めてWi-Fiについて整理しておこう。「Wi-Fi」というのは無線LANの1つであり、ブランド名である。通信規格としての正式な名称は「IEEE802.11xx」だが、親しみやすさを狙って“Wi-Fi”という言葉が使われてきた。
Wi-Fiの最初の規格である「IEEE 802.11」が策定されたのは1997年6月だが、当初はなかなか普及しなかった。しかし、1999年に業界団体などが設立されて相互接続性が確立され、伝送速度が向上するとともに、各デバイスでの採用が広がり、モバイル時代の主役の座に躍り出た。
2009年には伝送速度が従来の10倍以上という大幅な進化を遂げた「IEEE 802.11n」が登場し、その5年後の2014年には「IEEE 802.11ac」が登場し、一気に“ギガ”の世界に突入する。こうした多くの規格をわかりやすく分類するために生まれたのが「ナンバリング規格」である。「IEEE 802.11n」は「Wi-Fi4」、「IEEE 802.11ac」は「Wi-Fi5」とされた。そして2019年に策定されたのが「IEEE 802.11ax」。つまり「Wi-Fi6」である。なお、2022年には「Wi-Fi 6E」が解禁され、新たに6GHz帯が利用できるようになった。しかし、既存の通信端末の多くが6GHz非対応であることから、今回は説明を割愛する。
Wi-Fi6にはこれまでにない大きな特徴がある。その1つが高速で安定した通信環境だ。Wi-Fiに使われる通信規格には5GHz帯と2.4GHz帯の2つの周波数があり、それぞれに強み弱みがある。前者はWi-Fi専用で他の機器の電波干渉は受けにくいが、壁などの障害物があると電波が届きにくい。後者は壁や障害物に強く、遠くまで電波が届くものの電波干渉を受けやすい。Wi-Fi6はこの2つの周波数の両方に対応することで、安定した高速通信を実現している。さらに複数のデバイスが接続されていても速度低下を抑えるため、周波数を効率よく使って複数の同時通信を実現する技術や、接続先のバッテリー消費電力を抑制し、省エネを実現する技術も採用されている。
セキュリティ面についても強化された。Wi-Fi6では2018年に登場した「WPA3」という暗号化規格が採用されている。暗号化に利用する鍵を生成し、パスワードが破られても暗号化が解除されない仕組みで、高いセキュリティレベルを実現している。
クラウドストレージの利活用と合わせ、セキュアかつ安定した通信環境を利用できるWi-Fi6に対応したビジネスWi-Fiを導入することで柔軟な働き方が実現できる。変化し続けるビジネス環境に迅速に対応し、社員一人ひとりの生産性を向上させ、働き方改革を推進するためにも、最適な組み合わせと言えるだろう。
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