企業の知的財産や機密情報を狙った犯罪。映画やドラマの世界であればスリリングだが、リアルの世界の話となると事態は深刻だ。警察庁が公表している「令和5年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」によれば、同年中におけるサイバー事案の検挙件数は3003件、不正アクセス禁止法違反の検挙数は521件、コンピューター・電磁的記録対象犯罪の検挙件数は1000件に上る。
犯罪をなくすことは難しいが、犯罪者(攻撃者)に狙われにくい、抑止効果のある体制をつくることは可能だ。つまり、犯罪者が嫌がることをやる。
当たり前だが、犯罪者は自身の姿や犯行を見られたくない。そこで、クラウドカメラを防犯/監視カメラとして設置するという視点を考えてみたい。会社の出入り口や重要書類などを保管したキャビネットがあるオフィスや倉庫、サーバーが置いてあるコンピューター室など、リスクのある場所に防犯カメラを設置する。万一、犯罪の被害に遭った場合にも保存された映像データを見ながら、何が起こったのか把握、検証が可能だ。また、音も効果的だ。夜道などで犯罪行為の発生時にひもを引き抜いて大音響を発する防犯ブザーはおなじみだ。同様に、警告音を発する人感センサーや、防犯カメラが異常を検知すると警告音を発する製品もある。人感センサーで点灯する照明器具と組み合わせ、夜間・休日に無人となるオフィスや店舗に設置すれば防犯効果が期待できるだろう。
防犯だけでなく業務効率化にも役立つクラウドカメラ
テレワークやリモートワークといった多様な働き方が広がり、内部の不正行為を抑止する社内・社員の目が行き届かなくなる懸念もある。営業所や店舗などを複数展開する中堅・中小企業の場合、IT担当者を各拠点に配置できず、トラブル対応も現場まかせになりがちだ。
こうした多拠点の見守り体制の構築にもクラウドカメラは力を発揮する。主要拠点だけでなく、各営業所や店舗にも設置していれば、万一の盗難や事故が発生した際、その映像で何が起こったのか把握できる。内部犯行が疑われる情報漏えいについても、映像で様子を確認することが可能だ。システムのログと同様に、クラウドカメラで現場の様子を撮影している旨を社内にアナウンスすることで犯行の抑止効果も期待できる。
クラウドカメラというと犯罪防止などセキュリティでの活用を思い浮かべる人は多いだろう。確かにオフィスや店内にカメラを設置して犯罪行為を記録するといった役割があるが、それだけではない。店舗など現場の様子を撮影して業務効率化に役立てている事例は多い。例えば、ある店舗ではショーケースに並べた商品の映像をクラウドカメラで撮影し、本社ではその映像を確認して売れ行きを把握。品切れになる前に工場から店舗に商品を配送することでビジネス機会の逸失を防いでいる。
従来は店舗のスタッフが本社に電話をかけて商品を追加していたが、顧客対応で忙しいと電話連絡が遅れることもあった。クラウドカメラの導入後は、リアルタイムに店舗の状況を把握できるようになり、売り上げもアップしている。クラウドカメラとパソコンなどの端末がインターネットに接続されていれば、外出先など遠隔からパソコンやスマートフォン、タブレット端末などを使って映像を確認できる。
パソコン操作の見える化で働き方をサポート
視覚的に業務を把握・確認できるクラウドカメラと、パソコンの操作ログをAIで分析して業務内容を「見える化」するクラウドサービスを組み合わせ、社員の働き方、業務の改善をサポートすることも可能だ。専用のソフトウエアをパソコンにインストールすることで、多拠点のどこでパソコンを使っていても操作内容を把握できる。
例えば、パソコンログを収集して社員別の業務時間を把握し、テレワーク、リモートワークなどの勤務実態を見える化する。こうすることで長時間勤務を抑制したり、多拠点でのパソコン業務の実態を把握したりすることで業務改革や生産性の向上に役立てられる。セキュリティリスクの見える化も可能だ。USBメモリーや外部ストレージなどへのデータ持ち出し行為の見える化や、あらかじめ各種デバイスの利用を管理者が一括制御したりすることでセキュリティ対策が行える。クラウドカメラの選択方法や、クラウドカメラとパソコンの操作ログをどう組み合わせれば効果的なのかなど、そのアイデアについてまずは専門家に相談するといいだろう。
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