商品やサービスの値上げが止まらない。そうした中で長く安定していた郵便料金の値上げの発表に驚いた人も少なくないだろう。それもそのはず、消費税率の改定への対応を除いては、1994年以来、約30年ぶりの値上げになるからだ。それも平均して3割という大幅値上げであり、今までの郵送のコストに対する常識が大きく変わることになる。
2024年10月の郵便料金の改定で3割ほど値上げに。定型外なども影響
通常はがきは63円から85円へ、定形郵便物は重量による区分がなくなり、84円/94円から一律110円へと変わる。定形外郵便物も同様で、50gまでが120円から140円へ、100gまでが140円から180円へと値上げされる。
そして、ビジネスで使うことの多いレターパックライトは370円から430円に、速達料金も260円から300円(250g以内)になる。一部、書留など据え置きの料金もあるが、多くのサービスが値上げの対象になっている。
ビジネスシーンでは、原料や燃料、人件費、運送費用などさまざまなコスト増に苦しんでいるはずだ。その上、通信費の一部である郵便料金が値上げとなる。見積書や請求書、契約書などの各種書類を郵送する企業は少なくない。こうした書類を送付する費用が、郵便料金の値上げによって約3割もコストアップする可能性がある。多くの郵便物を送付する企業にとって、見逃せないコスト増の要因になる。
郵送コストの増加をきっかけに業務効率の見直しを…
郵送以外に手段がない場合は仕方ないものの、昨今のビジネスシーンではペーパーレス化が求められている。例えば、紙に印刷せずに済むならデジタルデータのままでやり取りすることが推奨されるケースも多い。そして書類のペーパーレス化が進めば、場所を問わずにビジネスが動かせる。
ペーパーレス化というと、社内書類のやり取りに目が向きがちだが、取引先などの社外との書類のやり取りを手軽に安全にペーパーレス化する方法もある。その1つの手段がクラウドストレージの活用である。クラウドストレージでは、認証機能や権限管理などの活用で、安全にファイルの保管や閲覧が可能だ。また、見積書や請求書、契約書など、郵送していた書類をPDFなどのデジタルデータにして、クラウドストレージの相互やり取り用のフォルダーに格納すれば、手軽に情報共有ができる。
さらに、最新のクラウドストレージは驚くような機能も備えるようになった。その1つがAIを活用した仕分け機能だ。クラウドストレージで見積書、請求書、契約書などの書類をやり取りするようになると、各社からの数多くの書類が集まってくる。
これを適切なフォルダーに仕分けるだけでもひと手間かかる。この作業をAIが代わりに行ってくれる機能である。AIが書類を解析して、フォルダーの仕分け、タグ付けなどを自動的にすることで、データ整理の手間を省く。情報にタグ付けされていれば、後々の検索にも役立つ。
郵便料金値上げを契機にさらなるDX推進を
郵便料金の値上げへの対応として、ペーパーレス化とクラウドストレージの利用による情報の共有が有効な手段になることを見てきた。
ただし、ここで郵便料金の値上げ分のコストを抑えることだけを考えると、新たにクラウドストレージを導入して取引先にペーパーレスでの書類送付を依頼する手間に対するメリットはあまり大きくは感じられないだろう。一方で、ペーパーレス化やクラウドストレージの活用を業務の改善につなげていけば、より大きなメリットを得られる。
例えば、見積書などを対外的にやり取りするだけでなく、クラウドストレージには多様な用途がある。社内情報を蓄積するストレージとして活用すれば、安心してオフィス内外からデータへのアクセスが可能になる。クラウドストレージだから操作性が異なるのではとの心配もあるだろうが、オンプレミスのファイルサーバーなどと同様のフォルダー構成で違和感なく使えるサービスも多い。他のサービスとの連携が可能なものや、承認などの業務フローをクラウドストレージの機能として提供するサービスもある。こうした機能を活用すれば、業務のさらなる効率化やDX推進につながる。災害時にデータがクラウドストレージに保管されていることで事なきを得たという事例も少なくない。
きっかけは郵便料金の値上げであっても、各種のITサービスを有効に活用することができれば、コストの削減と業務効率化は同時に実現するケースも多い。その第一歩として外部の専門家の視点を使って、自社の課題やDXの可能性について冷静な判断を仰ぐことで、より上手な活用法が見えてくる可能性がある。ぜひ検討してほしいところだ。
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