ビジネスを加速させるワークスタイル(第15回)
似ているようで違う、法人向け光回線の選び方
公開日:2016.04.04
多くの経営者は企業経営の目的は利益を出すことと考えてしまう。しかし、ドラッカーは「事業の目的は顧客の創造である」と断言する。今回は、その考えに共鳴して経営スタイルを大きく変えた経営者のケースを紹介する。
●ドラッカーの言葉
「利益は、個々の企業にとっても、社会にとっても必要である。しかしそれは、企業や企業活動にとって、目的ではなく条件である」
(『マネジメント(上)』)
〈解説〉人生においてお金が目的ではないのと同様に、企業経営において利益は目的でない。「事業の目的は顧客の創造である」と、ドラッカーは断言した。顧客の創造を継続するのに、利益は必要不可欠な条件であり、手段であり、燃料である。何事も目的と手段を混同するとうまくいかない。目的を正しく理解すれば、視線が向かう方向が変わる。利益から顧客に目を転じれば、今まで見えなかったものが見えてくる。利益の唯一の源泉である顧客の姿がよく見えるようになる。
北海道健誠社(北海道旭川市)の瀧野雅一専務はかつて、高圧的なトップダウンのマネジメントを行っていた。一方的に指示命令し、意見する社員には「辞めて結構。代わりはいる」という態度を見せた。幹部社員とたびたび衝突し、何人もが会社を去った。父の瀧野喜市社長に「あなたの息子は独裁者だ」という手紙を送った元幹部もいた。「ただ利益を出すのに必死だっただけ」と、瀧野専務は振り返る。
1992年、20歳のときに父母と起業し、ホテルや病院向けのリネンクリーニングを主力に会社を伸ばしてきた。事業拡大に伴い、借入金が膨らんだが、クリーニング業の利幅は薄い。何とか利益を出さなければ、会社が立ち行かなくなる。焦燥感から、社員に厳しく当たる場面が増えていたのだ。
そんな状況が10年ほど続いた2005年ころから、原因不明の内臓疾患や突発性難聴を患い、年に2~3回の入退院を繰り返すようになった。このまま働けなくなるのではないかと思った。そんな窮地の中で自分を振り返り、「社員に嫌われてまで、何のために頑張ってきたのだろう」と疑問に感じた。
このころに参加したドラッカーのセミナーで大きな衝撃を受けた。「利益とは条件」──これが、ドラッカーのマネジメントの根幹にある考え方だという。
長年、利益を出すために奔走してきた瀧野専務は納得できなかった。「会社は営利組織だ。利益を出さなければ倒産してしまう。利益こそ目的ではないのか」。ドラッカーの思想が気になり、翌日、代表作の一つ『経営者の条件』を購入。読み進めるうち、すとんと心に落ちた。「企業の存在意義は、顧客の幸せにある。そして利益は顧客満足の尺度。利益が上がるのは、自分たちの仕事ぶりを顧客に評価してもらえたことの証拠に過ぎない」。そう納得したとき、創業時のことを思い出した。
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佐藤 等(佐藤等公認会計士事務所)
佐藤等公認会計士事務所所長、公認会計士・税理士、ドラッカー学会理事。1961年函館生まれ。主催するナレッジプラザの研究会としてドラッカーの「読書会」を北海道と東京で開催中。著作に『実践するドラッカー[事業編]』(ダイヤモンド社)をはじめとする実践するドラッカーシリーズがある。
【T】
実例で学ぶ!ドラッカーで苦境を跳ね返せ