システム構築のための調整力向上講座(第3回)プロジェクト成功の基準を再確認する

コミュニケーション

公開日:2015.12.24

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 第1回第2回で、システム構築リーダーに大切なジレンマの許容度を解説しました。今回からいよいよプロジェクトを成功に導く、リーダーとして具体的な調整力の発揮法やアプローチを紹介します。そのスタートは何をもってプロジェクト成功とするのか、その基準についての考え方です。

プロジェクト成功の基準は何か、価値の方程式で考える

 多くの企業のシステム部では、システムの運用管理やシステム構築の一部を担当するレベルから、システム構築を統括するリーダー、そして、予算管理や経営レベルの意思決定にも参画するマネジャーへといった具合にキャリアが進みます。リーダーから、マネジャーへのステップアップには視点の大きな変換を迫られます。ここでは、リーダーやエンジニアが、このキャリアの移行を乗り越えるために必要な考え方と視点について解説します。

 現在、リーダーとして目前のプロジェクトの成功を使命としている方も多いと思います。さて、ここでいうプロジェクトの成功とは何でしょうか?

 私がコンサルティング先でこのように問いかけると、多くの人は「QCD(品質、費用、納期)を満たすこと」と答えます。実際、この3つを満たせるかどうかで、プロジェクトの成否が判断される場合が多いのは事実です。さらにいえば、プロジェクトの現場では「プロジェクトを終わらせる」ことにばかり注力してしまう現実があります。

 しかし、この当たり前だと思っている「プロジェクトの成功の基準」を今一度、考えてみてほしいのです。そして、この成功の基準こそが、エンジニアやリーダーとしてプロジェクトに携わるみなさんのキャリア構築に必要な視点となります。

顧客は何を買っているのか?

 プロジェクトには必ず“顧客”が存在します。社内のプロジェクトであれば、それに予算を投じることを決めた経営層、及びそのシステムを使う営業部門、経理部門といった社内顧客です。プロジェクトは、そうした“顧客”が必要性を感じてお金を払ってくれる(予算を投じてくれる)から存在するわけです。社内であっても、プロジェクトにお金を払ってくれる人は“顧客”であるという意識が必要です。

 では、プロジェクトの“顧客”は何に対してお金を払っているのでしょうか。言い換えれば、“顧客”は何を買っているのでしょうか。

 例えば、システム開発のプロジェクトを考えてみましょう。プロジェクト開始時には、プロジェクトのスコープ(範囲)を決定します。「どんなものを作るのか」「どんな作業を行うのか」を決めるわけです。要件定義書や設計書、プログラムソースコード、そしてソフトウエアなどの成果物。プロジェクト期間中の定例ミーティングや、ユーザー向けに行う研修などの役務。これらがプロジェクトのスコープになります。これらの成果物が納品され、すべての役務が提供されてプロジェクトは完了します。…

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執筆=芝本 秀徳/プロセスデザインエージェント代表取締役

プロセスコンサルタント、戦略実行ファシリテーター。品質と納期が絶対の世界に身を置き、ソフトウエアベンダーにおいて大手自動車部品メーカー、大手エレクトロニクスメーカーのソフトウエア開発に携わる。現在は「人と組織の実行品質を高める」 ことを主眼に、PMO構築支援、ベンダーマネジメント支援、戦略構築からプロジェクトのモニタリング、実行までを一貫して支援するファシリテーション型コンサルティングを行う。

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