低金利が続く中で多くの企業や個人が、資金運用難に直面しています。金融商品で運用しようにも、投資すべき金融商品はほとんど見当たりません。日銀がこれまでから金融緩和政策を取り続けてきたことに加え、今年1月にはとうとうマイナス金利政策を発表。MMFなど取り扱いを中止する金融商品も相次いでいます。
こうした状況の中で誰もが、少しでも有利な運用を探し回っています。そこで今回、紹介するのは中小企業オーナーだからこそできる有利な運用手段です。運用難が深刻化する中で、今後はその注目度が高まる可能性があります。
このところ、大手旅行会社の積み立てサービス「旅行積み立て」や、デパートや百貨店の積み立てサービス(いわゆる「友の会」)の人気が高まっているといいます。資産運用に敏感な人たちは、金融機関や不動産といった枠に拘らずに、少しでも有利な運用方法を探しているのです。
従来の運用手段に魅力がないのであれば、少し違った視点から考えてみることが必要です。そこで、今回紹介するのが「小規模企業共済」です。
これは、独立行政法人中小企業基盤整備機構が、小規模企業共済法に基づき運用している制度です。個人事業をやめたときや、会社などの役員を退職したとき、個人事業の廃業などにより経営者を退任したときなどの生活資金などのお金を、あらかじめ積み立てておける共済制度です。
誰もが加入できるというわけではなく、中小企業の経営者が対象となっています。この場合、常時使用する従業員が20人(宿泊業、娯楽業を除くサービス業、商業では5人)以下の個人事業主やその経営に携わる共同経営者、会社などの役員、一定規模以下の企業組合、協業組合、農事組合法人の役員であることが加入要件となっています。
掛け金月額は、1,000円から7万円までの範囲(500円刻み)で自由に選べ、掛け金は税法上、全額が「小規模企業共済等掛金控除」として課税対象となる所得から控除されます。
圧倒的に有利な運用の内容とは?
小規模企業共済は法律に基づいて定められた制度ですから、民間の銀行よりも破綻する可能性は低く安全性は高いといえるでしょう。しかも、将来の共済金は掛け金元本を下回ることなく、利息相当部分は預金の数倍あり、長く加入するほど共済金は多くなります。
単に利回りが良いということだけではありません。税制上も大きなメリットがあります。前述の通り掛け金は税法上、全額を小規模企業共済等掛金控除として、課税対象となる所得から控除できます。例えば月額7万円の掛け金を支払うと、年額で84万円になりますが、課税所得が2,000万円なら、実質84万円の貯金をしつつ、その部分の所得税および住民税が軽減されることになるのです。
積み立てを受け取るときの税金対策に対しても有利です。共済事由や受取方法により課税関係は異なりますが、退職所得の扱いのため、退職所得控除(例えば、勤続年数が10年の場合は400万円、25年の場合は1,150万円となります)が適用されることに加え、課税の対象もその2分の1に課税されるだけで(だけの重複)済みます。
相続対策としても有効です。生前、共済金を受け取ることなく亡くなり、相続人が共済金を受け取った場合は、「退職手当金等」として相続財産となります。この退職手当金等には、親族間の生活協同関係に配慮して非課税規定が設けられています。例えば、相続人が配偶者と子2人の合計3人の場合、「500万円に法定相続人の数を乗じた金額」の1,500万円までが非課税となります。
低リスクで効率的な運用ができる
冒頭で「取り扱いを中止する金融商品が相次ぎ」と述べましたが、マイナス金利だからといって、金融商品が全て姿を消したわけではありません。例えば為替のリスクを取ることができるのであれば、ある程度利回りの高い外国債券投資などもあります。為替リスクが発生しますが、国内で発行される債券と比較すれば、比較的高いリターンが期待できます。
しかし、世界経済が不安定な状況では為替リスクを無視することは難しいでしょう。リスクをできるだけ避けて少しでも高いリターンを求めるために手段を選んではいられません。最大年間84万円という積み立ては額が少ないようにも感じますが、コツコツと最善を尽くすことが、資産運用では大切です。中小企業オーナーだから利用できるこの制度を、改めて見直してみる価値があるのではないでしょうか。