GOCCO. 木村亮介社長
――ユニークなビジネスソリューションを生み出している注目の地方ベンチャー、GOCCO.。第2回は代表取締役の木村亮介氏にユニークな技術を導き出す発想の源について聞いた。(聞き手はトーマツベンチャーサポート事業統括本部長、斎藤祐馬氏)
斎藤:ユニークな発想ってどこから湧いてくるんですか?
ゾクっとする何かがあるものが信頼できる
木村:私が社会人経験を経て入学したイアマス(IAMAS=岐阜県大垣市にある情報科学芸術大学院大学/岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー)って発想の宝庫みたいなところで、先生の話一つ、学生同士の雑談、それらすべてが起点になりました。そして、考えることを習慣づけるような教育もされました。重要なのは、可能性を見つけ出して実際にモノを作れるかどうか。実際に作るとなると、ものすごくモチベーションがいるじゃないですか。資金も必要になる。
もちろん論理的にきちんと説明できるものでなければいけないんですが、個人的には、感覚的にこれは面白いぞと、ゾクっとする何かがあることが実は一番信頼できるんじゃないかと思っているんです。
斎藤:そういう発想法とかトレーニング法は何か特別なものがあるんですか?
木村:例えばある会社の案件に対してソリューションを提案するために、いろいろな方向から情報を仕入れておくわけです。すぐには役に立たない一見無駄に思えるようなこともです。
1つの製品でも、例えば食品と掛け合わせてとか、全然違う方向から考えてみる。そのためには1人で考えこむよりも話し合うことが大切なんですね。2人より3人がいい。互いにいろいろな突っ込みがあったり批判があったり賛成できる部分が出てきて、今度はそれをビジュアル化するのが重要になってくる。…
斎藤:ビジュアル化というのは?
木村:まず自分のアイデアとか思いつきをざっと絵に描いて、壁に張り出して議論するんです。そうすると、自分が想像していたのとはまったく違う方向から賛成されたり、自分では気づかなかったことが見えたりします。
斎藤:絵でブレストするんですか? それは新しいなあ。
木村:実はこれイアマスの授業でやっていたことでもあるんですけど、フェルトペンで絵を描いて、それに簡単なタイトルと説明文をつけるわけです。このタイトルが重要なんです。ただ絵を見ただけでは何だか分からない「ドラえもん」の道具みたいな感じで。
だからドラえもんって本当にすごいなと思いますね。“どこでもドア”とか“暗記パン”とか絵だけでは何だかよく分からないんだけど、それが登場する必然性のあるストーリーがあって、道具の名前を聞くと機能がすぐに分かる。
斎藤:なるほど、発想法のお手本はドラえもんだと。
木村:そう。だからタイトルなども含めてトータルでデザインすることが大事なんです。自分自身の中である程度アイデアが固まっていないとまずビジュアル化できない。それに名前をつけることでより分かりやすくなり、自分のアイデアを周囲と共有することができる。
斎藤:ということは、まずこういうものがあったらいいなというアイデアを出して、それを実現するために技術をつくっていったということですか。
木村:そういう場合もありますね。例えば「LITシステム」という可視光を使った技術があるんですけど、これもそもそもは光をスマートフォンに読ませて動作させられないかという思いつきが発端です。
PITシステムは紙をスマートフォンなどの画面に当てなきゃいけない。だったら、それとは別にイベント会場などに光っているものがあって、そこにスマホをかざすとアプリが認識して情報が得られたら面白いと思ったわけです。それを技術的に実現するには、可視光の明滅パターンのことを考えればいいらしいと。そこから専門分野の技術者と討議が始まりました。
斎藤:ということは、光が点滅するパターンとかで情報を送っていると。1秒間に何回点滅するんですか?
木村:もう目に見えないぐらいの速さです。LEDを使って、いろんなカタチにもできますから、2700パターンぐらいある。今これを使った面白い企画をどんどん考えています。
斎藤:なるほど。やりたいことがあって、技術ができてモノを作って、そこから先にフェスやイベント、さらにはソリューションまでも考えていくんですね。
木村:それこそが面白かったりするんです。技術だけをやっていくよりは、その技術が最終的に使ってくれる人たちにどう評価されるのかが大事なんです。やはり楽しい、面白い、かっこいいと思ってもらえる、そういうユーザー視点を絶対に忘れないようにしています。
先ほども話しましたけど、何かをやろうと思ったときの初めのゾクっとしたり、わくわくしたりする感覚が一番大事で、それは必ずユーザーにも伝わるんです。
日経トップリーダー/藤野太一
※掲載している情報は、記事執筆時点(2015年6月)のものです