生活を便利にする「3種の神器」といえば、昭和生まれの人なら「3C(カラーテレビ、クーラー、自動車)」を聞いたことがあるかもしれない。平成生まれの人なら「SIW(スマートフォン、インターネット、ワイヤレス)」になるだろうか。ワイヤレスは無線通信のこと。モバイル通信やWi-Fiをさす。スマートフォンなどの端末から無線通信を使ってインターネットにアクセスする。この3つがなければ世の中の動きも分からないし、生活やビジネスに必要な情報も集められない。
自宅での設置が容易なWi-Fiルーター
Wi-Fi環境が整備されているマンションやオフィスもあるが、一般的にはWi-Fiルーターを設置する。Wi-Fiルーターは、Wi-Fiのアクセスポイント(親機)とルーターの機能を一体化したネットワーク機器だ。アクセスポイントは、ノートパソコンやタブレット端末、スマートフォンといった無線端末(子機)を無線通信(電波)で結び、ルーターを経由してインターネットなど外部のネットワークに接続する。そして、ルーターはインターネット接続のための光回線につないだり、パソコンにインターネット接続のためのIPアドレスを割り当てたりする役割がある。家庭向けのルーター(ホームゲートウェイ)にはWi-Fi機能を内蔵しているタイプや、無線LANカードを装着してWi-Fiが使えるタイプもある。通信事業者などがレンタルで貸与する他、ネットワーク機器メーカーが最新の無線通信規格に対応するWi-Fiルーターを提供しており、家電量販店などで購入できる。
Wi-Fiルーターの利点は簡単に設置できることだ。通信事業者が光回線工事の際に設置するONU(光終端装置)とWi-Fiルーター(ホームゲートウェイ)をLANケーブルでつなぐだけだ。マンションなどで既に光回線が配線されている場合、部屋の光コンセントとWi-Fiルーターをケーブルでつなぐ。
そして、無線端末のWi-Fi設定画面のネットワーク一覧に表示されるSSID(ネットワーク識別名)を選び、指定されたパスワード(暗号キー)を入力すればWi-Fi通信が行える仕組みだ。また、家庭にWi-Fiルーターを設置することでスマートフォンやノートパソコンのモバイル通信のデータ通信量を節約できるメリットもある。データ通信量を無制限で利用できる通信プランもあるが、毎月のデータ通信量が「××ギガバイトまで」といった制限のある割安なプランを選ぶ人もいる。自宅ではWi-Fiルーター、外出時にはカフェなどのWi-Fiを利用することでデータ通信量を節約しつつ、Wi-Fi環境のない場所は通常のモバイル通信でインターネットにアクセスするといった使い方だ。
Wi-Fi選びのポイントは通信速度と同時接続端末台数…
現在主流のWi-Fi6では規格上の通信速度は9.6Gbps、最新規格のWi-Fi7の通信速度は46Gbpsとなっている。通信速度はあくまで理論値であり、Wi-Fiの設置環境や同時接続端末台数などによって実効通信速度は低下する。また、無線端末も各通信規格に対応する必要がある。最新規格のWi-Fi7の導入を検討する場合、利用しているスマートフォンやタブレット端末、ノートパソコンといった無線端末がWi-Fi7に対応しているかどうか確かめる必要がある。
ちなみに、Wi-Fiの名称は、Wi-Fi製品の相互接続性を確認する業界団体Wi-Fiアライアンスに由来する。かつて無線LANと呼ぶことが多かったが、Wi-Fi6などの名称とともに、通信機器メーカーや通信事業者の製品・サービス名にWi-Fiを冠することが一般的だ。
Wi-Fiルーターを選ぶ場合、通信速度とともに同時接続端末台数がポイントになる。家庭の場合、ノートパソコン、スマートフォン、タブレット端末の他にも、プリンター、ゲーム機、テレビのネット接続、掃除ロボットなどの家電でWi-Fiを使うこともある。一般にWi-Fiルーターの同時接続端末台数は通信機器メーカー、製品によって異なるが、十数台まで同時接続が可能なタイプもある。ただし、同時接続の端末台数が多くなると端末1台当たりの通信速度が低下するので注意が必要だ。
利用者の多いオフィスに適したビジネス向けWi-Fi
利用者や同時接続端末台数が比較的少ない家庭や小規模事業所(SOHO)、店舗などではWi-Fiルーターが適しているが、大人数のオフィスなどではビジネス向けWi-Fiの導入が望ましい。ビジネス向けWi-Fiの場合、オフィスの天井や壁に取り付けるアクセスポイントをスイッチに接続して社内ネットワークにつないだり、ルーターを経由してインターネットなど外部ネットワークに接続したりする。
現在はWi-Fi6が主流になっており、Wi-Fi5からリプレースすることで多数の端末の同時接続が可能だ。製品によって異なるが、1台のアクセスポイントで100台程度の同時接続が可能なタイプもある。また、Wi-Fi6の通信速度(理論値)は9.6Gbpsとなっており、規格上はWi-Fi5の6.9Gbpsの1.4倍の高速通信が可能だ。オンライン会議の映像が途切れるので会議中はOFFにしているという人もいるかもしれない。Wi-Fi6であれば、通信環境にもよるが、快適なオンライン会議が期待できる。アクセスポイントと無線端末の通信距離は25m以内が望ましいとされる。同じフロアに複数台のアクセスポイントを設置する場合、電波干渉によって無線通信に問題が生じる可能性もあり、専門家による設置場所の事前調査が必要なこともある。
オフィスのWi-Fiを快適・安定的に利用するには、ルーターの性能もポイントになる。アクセスポイントの通信トラフィックが増えた際、ルーターがボトルネックとなり、インターネット接続が遅くなることもあるからだ。また、ルーターの故障でインターネットにつながらない、インターネットの速度が遅くなり、業務に支障が出ているといったルーターに起因するトラブルもある。IT、特にネットワークに熟知した専門家が自社にいない場合、ルーターのトラブルの原因究明や復旧は至難の業だ。Wi-Fiルーターやアクセスポイントの導入とともに、Wi-Fi環境の安定運用を支援するサービスの活用を検討したい。
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