オフィスで利用しているIT機器や通信機器を交換するのはどんな時だろうか。例えばパソコン。故障していなくても、新規導入するアプリケーションやOS(基本ソフト)に対してスペック、性能が満たしていない場合、買い替えを検討、決断するケースは多いだろう。パフォーマンス不足のパソコンでは動作が遅くなるなど、従業員から不満が出るだけでなく、処理に時間がかかり業務に支障を来すこともあるからだ。
働き方の変化や技術的な進化に応じてリプレース
では、ビジネスフォンはどうだろうか。ビジネスフォンなど電話設備の減価償却資産の耐用年数は6年だが、耐用年数が過ぎたからといって故障でもしない限り、買い替えることはしない企業も多いのではないか。電話を利用する従業員もパソコンのように性能を意識することはあまりない。特に問題がないなら老朽化や故障するまで使い続けようと考える経営者もいるだろう。
しかし、耐用年数を超えて長く使い続けると不具合が出てくる可能性もある。万一、急に使えなくなったら、会社の代表電話などにかかってくる電話を受けられずビジネスに大きな影響を与えかねないリスクがある。これらとは別に、電話にかかわる業務のあり方や、IP通信、クラウドなどの技術的な進化を背景に電話サービスも大きく変わっている。
ビジネスフォンも働き方の変化や技術・サービスの進化に応じて、より使いやすく、業務の生産性を高めるタイプへとリプレースすることが求められているのだ。働き方の多様化を象徴するのが、テレワークやハイブリッドワークの浸透だ。コロナ禍は落ち着いたとはいえ、仕事と家庭を両立するワークライフバランスの観点からもテレワークを含め、従業員の事情に合わせて柔軟に働ける職場環境づくりは経営者の責務となるだろう。
例えば、取引先から会社の電話にテレワーク中の従業員に対して着信があった場合、どう対応するか。電話を受けた従業員は、本人はテレワーク中で不在であることと、取引先へ折り返し電話することを伝えて電話を切る。そして、テレワーク中の従業員の固定電話またはスマートフォンに電話をかけ、取引先から電話があり、折り返し電話をするように用件を伝える。この電話取り次ぎに手間と時間がかかるだけでなく、取次者の業務に支障を来すことになる。急を要する電話だった場合、取り次ぎに手間取ると取引先の信用を失うリスクもある。
ビジネスフォンにアダプターを付けて電話取り次ぎの課題を解消…
テレワークが広がったコロナ禍の時には、電話取り次ぎ業務のために出社を余儀なくされる従業員の話があったが、それも笑い話になる時代を迎えている。ビジネスフォンをリプレースすることで、電話取り次ぎにかかわる問題を解消し、従業員の柔軟な働き方が可能になる。具体的には、スマートフォンへの内線電話が可能なアダプターと、アダプターに対応するビジネスフォンを導入。これにより、スマートフォンを内線端末として利用できる。
また、オフィスで受けた顧客・取引先などからの着信を、テレワーク中の従業員のスマートフォンの内線電番号を操作するだけで転送でき、電話の取り次ぎがスムーズに行える。取引先からの重要な電話を逃すリスクがなくなるなど、ビジネスに大きな効果が期待できる。業務に役立つ機能を備えたビジネスフォンに代えることで、電話取り次ぎ以外にもさまざまな効果が見込める。
例えば、業務時間外に顧客・取引先から電話があり、留守番電話に要件を録音することもあるだろう。これまでは翌日に出社して録音内容を確認するのが一般的だが、急ぎの要件だった場合、対応が遅くなることもある。留守番電話に録音がある場合、担当者のスマートフォンに通知する機能があればスムーズな対応が行え、ビジネスチャンスを失わなくてもすむ可能性がある。
さらに、本社、支社、営業所など複数の拠点を構える企業に便利な拠点間連携機能を備えるビジネスフォンもある。VPN回線を利用し、離れた拠点のビジネスフォン同士を連携。拠点番号と内線番号を操作するだけで、他拠点の電話機を呼び出したり、従業員の内線電話機を直接呼び出したりでき、取引先からの電話をスムーズに拠点の従業員に取り次ぐことができる。加えて、本社・拠点間をVPNでつなぐことにより、通信コストの削減も可能だ。
新しいビジネスフォンは標準機能やオプション機能を含め、多彩な機能を備える。また、多機能電話機も据え置き型やコードレス型などのタイプがある。配線が不要なコードレス型であればデスク回りもすっきりし、従業員も電話機が変わり、新たな気持ちで仕事に取り組めるかもしれない。いずれにせよ、必要な機能は何か、収容する外線数、内線数はどれだけ必要かといった要件を勘案しながら自社に合った主装置と電話機を選択したい。
IP電話やクラウド電話の活用も検討
電話サービスでは、インターネット回線を利用したIP電話サービスがある。高品質な音声通信が可能で、通信費のコストダウンが期待できる特徴がある。さらに、かかってきた電話を、あらかじめ指定した電話番号に転送する転送機能などを活用し、テレワーク中の自宅に転送することも可能だ。
オンライン会議やチャットなどでMicrosoft社の「Microsoft Teams」を利用している企業も多いだろう。このTeamsをインストールしたパソコンやタブレット端末、スマートフォンを使い、固定電話番号での発着信が可能なクラウド電話サービスもある。インターネット環境があれば、勤務場所に制約されることなく電話を受けることができ、他の従業員の電話取り次ぎの負担軽減が可能だ。利用する端末にアプリケーションをインストールすればよく、工事不要で利用できる利点もある。ビジネスフォンや各種電話サービスの利用を含め、従業員の柔軟な働き方に対応しつつ、社内・取引先との円滑なコミュニケーションを実現する電話のあり方はどうあるべきか。従業員や通信の専門家の意見を聞きながら、最適な電話システムを選びたい。
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