五郎丸に影響与えた指導者の部下育成術(第7回)上司は万能じゃない――自律を促し一緒に考える

人材活用

公開日:2016.06.15

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ラグビーワールドカップの大活躍で話題となった五郎丸歩選手。選手として基礎を固めた早稲田大学ラグビー蹴球部時代の監督が中竹竜二氏だ。五郎丸選手は、今でも影響を受けた指導者として中竹氏の名前を挙げる。中竹氏に結果を出す部下への指導法を学ぼう。

  マネジメント経験の浅い管理職は部下の期待に応えようとハッスルしがちで、正解を出そうともがくもの。しかし、1人で考える正解よりもっと良い方法がある。今回の「部下に気づきを与える」言葉は、上司が自分の能力を飾らずに伝えるものだ。それによって、部下やチームの自律性を高めることができる。

 「俺に期待するな」。2006年、早稲田の監督になって以来、私は選手たちにこう言い続けた。それは、監督が万能であり、常に正しい答えを与えてくれる存在だと選手が期待することに窮屈さを感じたからだけでなく、私に頼ることは選手たちの自律性を低下させると考えたからである。

 もちろん、万能、あるいは万能に近い監督や上司もいる。私の前任者だった清宮克幸さん(現トップリーグ・ヤマハ発動機ジュビロ監督)がそうだった。鋭い戦略、それを現場に落とし込む力、大事な局面での決断力。何を取っても優れたカリスマだった。私が監督に就任した当時、選手たちは清宮さんのやり方に慣れ切っていた。明確な戦略と、適切な練習メニューが常に提示され、それに従うのが当たり前になっていた。その理由は、従っていれば勝てたからである。だから清宮さんと同じ「監督」という立場である私からも、同じように優れた戦略、練習メニューが繰り出されることを選手たちは期待した。

 しかし、私は大学卒業後、3年半はイギリスに留学、その後は普通にビジネスパーソンをしており、ラグビーから離れること約10年。しかも指導経験は皆無だった。そんな私が監督になったからといって、急に優れた戦略や練習メニューを提示できるわけがなかった。

 最初は選手の期待に応えようと努力したが、空回りするばかり。彼らから返ってきたのは、不満の声と半ばさげすむような「舌打ち」だった。

「万能なふり」を止める勇気を持つ…

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中竹 竜二

1973年福岡生まれ。93年早稲田大学入学、4年時にラグビー蹴球部主将を務め、全国大学選手権準優勝。卒業後、渡英しレスター大学大学院社会学部修了。2001年三菱総合研究所入社。2006年早稲田大学ラグビー蹴球部監督就任。2007年度から2年連続で全国大学選手権を制覇。2010年退任後、(公財)日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクターに就任。近著に『部下を育てるリーダーのレトリック』(http://www.amazon.co.jp/dp/4822249719)がある。

【T】

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