企業や団体のさまざまな部門で、業務効率化は喫緊の課題になっている。コロナ禍からの経済回復により多くの業界で働き手の不足は深刻さを極め、従業員の高齢化やベテラン社員の転職などで人材不足がさらに加速する――。こうした中で、人事・総務や経理などの間接部門では人材が固定化し、業務効率化の足かせになることが少なくない。
また、経理業務には高い専門知識も必要になる。それだけに、誰でも“配属されれば仕事をこなせる”というわけにはいかない。担当者は、知識を蓄積しながら自分なりの効率的な仕事の進め方を編み出し、ある意味で「個別最適化」しているケースもある。こうした状況になると、経営者から従業員まで「経理のことはAさんに聞けば大丈夫」という空気感が生まれ、業務の「属人化」がさらに進むことになる。
そして、属人化した業務は他者の視点が入りにくい。第三者からのフィードバックが得られないために硬直化を起こし、より一層、属人化に拍車をかける結果にもなる。そうなると、ミスや不正があっても放置されてしまう危険性も高まる。こうした状況を社内に残していては、後継者育成や異動による配属が難しくなるなど、業務改革を阻害する要因にもなるだろう。その防止には、知識の共有や標準化が1つの対処策となる。
属人化によって業務がブラックボックス化し、品質・効率低下につながる。休暇・退職などで業務がストップしてしまう危険も
属人化の解消には「標準化」と「可視化」が不可欠…
とはいえ経理業務のような専門性が高い職種では、どうしても一部の従業員に業務が集中しがちになる。担当者が複数いても、それぞれが特定の業務しかこなしていなければ属人化している状況には変わりない。こうした状況を脱するにはどうしたらいいのだろうか。
まず、知識やノウハウの共有化が不可欠だ。より具体的には、業務を洗い出してマニュアル化する。つまり、業務の標準化を図るのだ。マニュアルや判断材料として基本となるものがあれば、担当する社員が入れ替わっても同じように業務を進められる。また、標準化の過程では長年の単なる慣習となっていた「しきたり」や、時代にそぐわないやり方なども洗い出される。こうした無駄を見つけて改善することが、業務効率化へのステップになる。
そして、マニュアル作成後は、業務全体のワークフローを可視化して実際の業務に適用していく。この過程を通じて、より鮮明に業務上のボトルネックが浮かび上がる。後はそれをどのように解消するかという具体策を検討して実行に移す。作成したマニュアルや改善の過程で得られた学び、気付きなどを集約しておけば、情報共有や引き継ぎの際にも役立つ。
バックオフィス業務をアシストするサービスの活用も視野に
しかし、社内のメンバーだけで業務を可視化・効率化することには限界もある。そこで業務を外部に委託する方法も検討したい。専門家の視点を上手に組み込むことで、従業員はコア業務に集中できるため、生産性向上につながる。そのうえより洗練された形でワークフローを可視化していくことができるだろう。
また、業務の標準化には、クラウド会計システムの導入も有効な選択肢だ。例えば、それまで手入力で対応していた伝票作成や勤怠管理、経理業務などをシステム化する。こうすることで仕訳や入金消込、振込などが容易に実行できる。システムを選ぶ際には、経理に不慣れな社員でも視覚的に操作可能な画面である点やアカウントさえ持っていればどのパソコンからでもアクセスできる点、不慣れな者でも安心して利用できるようサポートが充実しているかなどをポイントにするとよい。
この「業務の属人化」という課題と解決方法は、実は経理を含むバックオフィス業務全般で共通点が多い。標準化と可視化を進めつつシステム化することで、さまざまな業務を効率化することができるだろう。ぜひ検討してみてはいかがだろうか。
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