災害時にも通信手段を確保し、いかに事業を継続するかは重大な経営課題だ。会社の電話番号しか知らない顧客・取引先からの連絡は、普段ビジネスで利用している固定電話にかかってくる。そこへの対応は、事業継続のポイントともいえる。
従来のビジネスフォンを、光ファイバー網とIP(インターネットプロトコル)ネットワークを利用するIP電話に変更するメリットは何か。一番に挙げられるのはコスト削減だ。しかし、それだけではない。実は災害時対応にも、IP電話サービスの導入にはメリットがある。
IP網上で音声通信するIP電話
IP電話は、インターネット技術を利用した音声通信だ。メールやインターネットと同じように、音声をデータ化して送受信する。従来の固定電話(加入電話・INSネット 以下、固定電話と表記)の回線交換方式比べ、IP電話のパケット交換方式は、効率よく音声通信が行えるといわれる。
IP電話は、IPネットワーク上で音声を送受信するのでVoIP(ボイス・オーバー・アイピー)とも呼ばれる。個別に構築・運用してきたデータ通信と音声通信をIPネットワークに統合でき、企業間を結ぶプライベートネットワークなどで導入が始まった。
データ系と音声系のネットワークを1つに集約できるので、オフィスに敷設しているLANにIP電話機を接続して電話の発着信が可能になる。電話に関わる運用管理の手間とコスト削減に効果があり、そこに着目する企業は少なくない。
IP電話が一般の人にも知られるようになったのは、インターネット事業者などが提供するIP電話サービスの開始だ。050の番号で始まるIP電話サービスは、固定電話サービスに比べて割安な通話料金を設定。同一事業者のユーザー同士の通話料は無料、固定電話へは全国一律の割安な料金体系とした。長距離電話をかけることが多い企業や個人から注目された。
IP電話について、VoIP技術による企業の自営網時代を第1段階、050IP電話サービスの開始を第2段階とすると、現在は第3段階を迎えている。サービス提供の主体が、インターネット事業者から通信事業者にシフト。自社の高速・大容量の光ファイバー網を利用し、安定した音声品質はもちろん、従来の固定電話では提供が難しい付加価値のある電話サービスを提供している。
例えば、従来の固定電話の通話料が通話先の距離と通話時間によって決まるのに対し、光ファイバー網で構築されたIPネットワークを利用するIP電話サービスは、距離に依存せずに全国一律料金を採用するものもある。企業向けIP電話サービスでは、企業の事業所間の音声通話が無料のものもある。電話コストの削減に大きく寄与するのは明白だろう。
ひかり電話サービスで通話コストを削減…
通信事業者が提供するIP電話サービスの1つに、NTT西日本の法人向けひかり電話サービス「ひかり電話オフィスタイプ」と「ひかり電話オフィスA(エース)」がある。いずれも、事業所とNTT西日本を結ぶアクセス回線に、フレッツ 光ネクストなどの光ファイバー網を利用する。
例えば、ひかり電話オフィスA(エース)を導入した場合、通話コストの削減効果は明確だ。同一企業(契約者)の複数の事業所で利用しているひかり電話オフィスA(エース)をグループ登録(グループ通話定額)することにより、登録した契約者間の音声通話が無料になる(NTT西日本エリア内に限る)。
また、ひかり電話オフィスA(エース)を音声利用する場合、外線への通信料金を2つのプランから選択できる。プラン1は、県内6円/3分、県間10円/3分。プラン2は全国一律8円/3分となる(料金はいずれも税別、携帯電話などへの通話料金は異なる)。
ひかり電話オフィスA(エース)の基本サービス(1チャネル1電話番号)の月額料金は、1契約ごとに1100円(税別)。事業所ごとにフレッツ 光ネクストなどのアクセス回線を導入する必要があるが、インターネット接続などデータ通信用にフレッツ 光ネクストを利用している場合、そのアクセス回線をひかり電話オフィスA(エース)にも利用できる。
拠点同士の電話連絡が多い企業や外線電話の多い企業は、これまでの固定電話からひかり電話オフィスA(エース)に切り替えれば、通話コストの削減になる可能性がある。まずは試算するとよいだろう。
IP電話サービスに変更すると、これまでの固定電話の電話番号が変わるのを心配する人もいるかもしれない。ひかり電話オフィスA(エース)は、現在使用している電話番号をそのまま利用できる(一部、現在利用中の電話番号が引き続き利用できない場合もある)。封筒や名刺などの電話番号を変えたり、顧客・取引先に連絡したりする必要はほぼない。
被災地の拠点から電話を転送し事業を継続
こうしたコスト削減を既にご存じの方にお知らせしたいのは、災害時などの事業継続に関する効果だ。
ひかり電話オフィスA(エース)は、「グループ通話定額」をはじめ、8つのサービスを利用できる。その1つ「ボイスワープ」は、会社にかかってきた電話をあらかじめ指定した電話番号へ転送するサービスだ。ある拠点が集中豪雨や地震などで業務遂行が困難になった場合、あらかじめ指定した他の拠点に電話を転送すれば、顧客・取引先からの電話に対応でき、業務の継続が可能になる。ボイスワープの転送設定は遠隔から行える。例えば集中豪雨の被害が大きかった中国地方にある事業所の電話を、大阪の事業所から設定、転送するといったことがリアルタイムに行えるわけだ。
事業所など、ボイスワープ契約者までの通話料は電話をかけたほうの負担になる。しかし、ボイスワープ契約者から転送先までの通話料は、ボイスワープ契約者持ちだ。ただし、ひかり電話オフィスA(エース)のグループ通話定額を利用すれば、ボイスワープ契約者から転送先までも無料にできる。
ボイスワープは電話番号ごとに転送設定する必要があるが、ひかり電話オフィスA(エース)の有料のオプションサービス「一括転送機能」を利用すれば、一括で登録済みの転送先に着信させられる。事業所が停電して電話が通じなくなっても、登録先に一括転送できるのだ。
災害時対応でもメリットがあるIP電話。一方で電源が必要なので、停電時には通話ができなくなる恐れはある。この点は、オフィスにあるサーバーやパソコンと同様だ。そのため、停電でも一定時間、電源を確保できるよう無停電電源装置(UPS)と組み合わせて運用するとよい。例えばNTT西日本では、無停電電源装置「BizBox UPS」や、アドレス帳などのデータバックアップ機能を備えたビジネスフォン「SmartNetcommunity αA1」シリーズを用意している。
コスト削減という平常時に体感できるメリットに加え、万一の災害時対応にも効果が期待できるIP電話。基本的には電話番号も変わらず、使い勝手も変わらない。もし、切り替えが済んでいないなら、すぐにでも検討してはいかがだろうか。
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