ビジネスを加速させるワークスタイル(第15回)
似ているようで違う、法人向け光回線の選び方
公開日:2017.06.05
“起業大国”の米国でニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授を務め、「ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学」などの著書もある入山章栄氏。早稲田大学ビジネススクールで経営学を教える准教授でもある。日本の起業シーンを活性化させるための手法を経営学の視点から評価し、米国との比較を盛り込みながら解説する。(聞き手は、トーマツ ベンチャーサポート事業統括本部長、斎藤祐馬氏)
斎藤:前回は、地方で起業する際のハンディキャップを解消する取り組みについてお話しました。でも実は、地方ベンチャーにとっての重荷は、商圏を広げることができて、東京のベンチャーキャピタル(VC)から出資を受けて、ネットワークさえ確保してしまえば、ないも同然なんです。その他のことは、地方にいて時々、東京へ出張して対応すればいいわけですから。
入山:ハーバード大学ビジネススクールのポール・ゴンパース教授とジョー・ラーナー教授らの共著「ベンチャーキャピタル・サイクル」によれば、米国でVCと投資先との物理的な距離はだいたい60マイル、約100㎞ということでした。広大な土地を持つ米国では近いイメージかもしれないけれど、日本で100㎞といったら結構な距離です。
でも、現代は交通インフラが発達しているから、行こうと思えば週1~2回のペースで上京できる。フィジカルの壁というか、物理的な距離は米国よりも日本のほうが低いのかもしれません。地方に拠点を置いて、その優位性を生かすビジネスを考えられますよね。
斎藤:地方の有利な面は2つあると思います。1つはストーリーを組み立てやすいことです。「この街に1000人の雇用をつくる」とか、「故郷で、10年で100個の事業を立ち上げる」などというと共感を得やすい。特に、東日本大震災以降、「共感できるストーリー」が求められるようになっています。みんなが応援したくなる仕組みをつくり、周りを巻き込む力が重視されているんです。
入山:起業には明確なビジョンや強いモチベーションが必要ですよね。地方の人たちは、「ここが好き」という単純な理由でやれる。それが一番、強いわけです。低価格メガネチェーン「JINS」を経営するジェイアイエヌの田中仁社長も、出身地の群馬県で起業家を育てるイノベーションスクールを立ち上げました。「日本のアパレルを救うブランドをつくる」(第1~4回)で登場したライフスタイルアクセント(熊本市、山田敏夫社長)も、「熊本を盛り上げたい」という気持ちが強い。みんな、やっぱり故郷への思いってすごくあります。
斎藤:むしろ、東京のベンチャー企業のほうが、その場所で事業をする蓋然性が少ないので、アピールしにくいんです。
入山:東京のベンチャー企業はある意味、甘やかされているかもしれないですね。資金の調達先や手段がたくさんあって、営業先もたくさんある。人口が多い分、商圏も広い。“東北の雄”とよばれるアイリスオーヤマの大山健太郎社長は「東京は(餌が豊富にある)いけすだ」などと言うそうですが、確かに都心の起業家は恵まれ過ぎているという面があるかもしれません。
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斎藤 祐馬
トーマツ ベンチャーサポート事業統括本部長 1983年愛媛県生まれ。慶應義塾大学を卒業後、2006年にトーマツに入社。2010年にトーマツ ベンチャーサポートを事実上立ち上げた。公認会計士でもある。
※トーマツ ベンチャーサポートは、2017年9月1日より「デロイト トーマツ ベンチャーサポート」に社名変更しました。
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